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○ドン・キホーテ=ラ・マランチャの男


 先日、『ラ・マランチャの男』という映画をテレビで見た。むろん原作は、セルバンテスの『ドン・キホーテ』である。初めから終わりまで見たわけではなかったものの、とても面白くて感激をした。そこで、ここに印象を記録しておこう。
 内容は、1965年ブロードウェイで初演をして大ヒットを続けた舞台劇を映画化したもの。アーサ=ピーター=オトゥールが監督をして、百姓女であるドルネシア姫にソフィア=ローレンが扮(ふん)して、素晴らしい演技をしていた。
 「劇中劇」があったりして、なかなか興味深い。原作には、さらに「話中話(わちゅうわ?)」があったことを覚えている。そして、この映画でも最後には、セルバンテスまでが宗教裁判に出てくる有様。

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 この『ドン・キホーテ』は「笑いの宝庫」であろう。

 次から次へとバカバカしいことではあるが、際限なく来る刺激は脳の活性化に好ましい。
 それが、軽い諧謔を含んでいる場合には、とくに。テレビを見ていても、『Xファイル』などのように意味深長な内容があると、つい引き込まれて考え込んでしまう。そこで、私にはこの『ドン・キホーテ』くらいがちょうどよいのではないかと考えている。

 まったく、私も「人生は喜劇」だと思う。そして、それが一連の茶番劇でもいいじゃないか?
 主人公が、さながらキ印の御大(おんたい)だから、とびとびの脈絡のないストーリを展開していく。

 「笑いの宝庫」を繙(ひもと)くために、学生時代に読んだ永田寛定訳の正編三冊と続編三冊を読み直してみよう。そして改めて、その中から印象に残った部分を以下に書き抜いておく。つまり、「おかしみ」のある部分と「学ぶべき」部分である。

・ 正編(一)
題寄 バベル公
緒言
 いわゆる作者の書き出しの部分は、次のように始まっている。
 <つれづれな読者諸君、わしが脳みそをしぼって生まれさせたこの本は、美しさもけだかさも賢さも、このうえなしにおもわれたかったこと、誓わないでも信じてもらえよう。しかし、わしとても、大自然の法則には逆らえなかった。天地の間では、物がそれぞれおのれに似たものを産む、ということがあるのだ。……>

 この「緒言」にあるいくつかの文章を拾ってみよう。

 <親によっては、なんの取柄(とりえ)もないみにくい子をもっても、愛に目かくしをされて、子の欠点を見ないばかりか、欠点を美点だ、深い知恵だと思いこみ、知人や朋友に、鋭才機知のごとく吹聴する者がある。>

 <神と人との混同は、キリスト教の本旨を心得た者なら身につけるはずもない、綿入りのまやかし物でさ。>

 最後には、
 <Vale(さらば、諸君。)>
で終わり、次のような十編の詩が続く。

ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャのふみに−−顔知られずのウルガンダ
 <よい樹の下に/入れば、よい蔭すずしく降りて/包んでくれるはだれでも承知。>
 <ラ・マンチャ県のけだかい郷士/暇にまかせて読んだる物で/脳がくるった大々冒険。>
 <鋭いふりは怪我のもとだし、/哲学めいた論議は野暮よ。>
 <いらぬ口だしいっさいやめて、/ひとのすること見まい聞くまい。/われにかかわりない事ならば/よけて通るがりっぱな分別。>

アマディース・デ・ガウラよりドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャへ

ドン・ベリアニス・デ・グレーシアよりドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャへ

オリアーナ姫よりドゥルシネーア・デル・トボーソへ

アマディース・デ・ガウラの従士ガンダリンよりドン・キホーテの従士サンチョ・パンサへ

半煮え詩人のおどけ者からサンチョ・パンサとロシナンテとへ
 <それがしはいつでもにげ腰で/世の中をまんまと渡り申した。>

狂へるオルランドよりドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャへ

大日輪の騎士よりドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャへ

ソリズダンよりドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャへ

バビエーカとロシナンテとの問答

(一の巻)
第一 名もとどろく郷士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャの人となり身のわざを説きしめす章
 いよいよ物語の始まりである。それは、
 <ラ・マンチャ県のさる村、名は思いだしたくない村に、さほど前のことでもなく、槍かけに槍、古びた楯(たて)、ひょろひょろ馬にはしっこい狩犬をそろえた、型のごとき郷士が住んでいた。>
のように書き出されている。
 そして、すぐに
 <……、それだけに収入の四分の三が消えた。>
と続く。

第二 奇想天外のドン・キホーテ初めて里門を乗りだす章
第三 ドン・キホーテが挙げた帯甲式のおかしみを物語る章
第四 街道宿をたちいでてから、われわれの騎士に降ってわいたことの章
第五 われわれの騎士の御難ばなしがつづく章
第六 和尚と床屋がわれわれの奇想驚くべき郷士の書斎でおこなった、物々しくおかしみの多い詮議の章
第七 われわれの善良な騎士ドン・キホーテ・デ・ラ・マンチャが再度の門出におよぶ章
第八 豪勇なドン・キホーテが風車とたたかう、想像もできない、おそろしい冒険のあざやかな結末、ならびに、思い出楽しかるべきことさまざまの章

(二の巻)
第九 気負ったビスカイヤ人と勇壮なラ・マンチャ人がおこなった怖(おじ)るべきたたかいに結末がつく章
第十 ドン・キホーテとその従士サンチョ・パンサとの間にあった、おかしみたっぷりな問答の章
第十一 山羊飼たちに取りまかれて、ドン・キホーテに起きたことの章
第十二 ドン・キホーテと一しょにいた者たちに、ひとりの山羊飼が話したことの章
第十三 娘羊飼メルセーラの話が、ほかの出来事のあいだに、終る章
第十四 世になき羊飼の絶望の詩、ならびに、思いがけなかった出来事をしるす章

・ 正編(二)
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

・ 正編(三)
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

・ 続編(一)
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

・ 続編(二)
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)

・ 続編(三)
(1)(2)(3)(4)(5)(6)(7)(8)(9)


Kuroda Kouta (2007.02.14/2007.11.14)