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 創作のヒントと執筆プラン


 企画の立て方と作業の進め方

○「現代お伽草紙」シリーズ

(上)

 「カメレオンを飼う女」 「パンダのぬいぐるみ」 「ムンクのマドンナ」 「嬰ハ短調の曲」
 「セレナーデ」 「電気機関車」 「カンムリバト」 「食用がえる」
 「すっぽん」 「水棲人」 「黒い革袋」 「小石」

(中)

 「枕」 「猪首の男」 「蚊柱」 「春のあらし」
 「なんじゃもんじゃ」 「痰(たん)」 「母の賛美歌」 「実叔父さんの皮鞄」
 「落花生」 「赤い痣(あざ)」 「クレーン」 「山の蝉」

(下)

 「花ふぶき」 「竜舌蘭の花」 「緑色のボールペン」 「影」
 「ひとりよがり」 「黄昏(たそがれ)」 「夢のつづき」 「西洋乞食」
 「押しつぶされる夢」 「茱萸(ぐみ)の実」 「浚渫船(しゅんせつせん)」 「眩暈(めまい)」

○「テクノレディ物語」シリーズ

(一)

 「美しい指の秘密」 「名刺」 「落ち穂拾い」 「仕込まれたウイルス」
 「ゴムの木」 「カゲロウのような女」 「エジソンバンドの男」 「奇妙な無言電話」
 「勾玉模様のネクタイ」 「不思議な三面鏡」 「金曜日の老夫婦」 「陝右(せんゆう)の人たち」

(二)

 「パンチミス」 「マスクをした女」 「胸さわぎ」 「ユダの言い分」
 「貸金庫の謎」 「暗唱番号」 「赤い手袋」 「埋没林」
 「不定愁訴」 「双眼鏡で見る女」 「蜘蛛」 「不思議な夢」

(三)

 「恋のフーガ」 「高層マンション」 「人間ぎらい」 「ユーモレスク」
 「ブラックボックス」 「足音」 「エンジェル係数」 「冬の風鈴」
 「悪魔のすみか」 「不吉な色」 「顔」 「美しい指の最期」

○「現代楢山節考」(ホスピス悲哀物語)シリーズ

 主人公は裕福な家庭ではあったが、ある日突然に脳血栓で倒れてからの家族の豹変。現代家庭のひずみを鋭く描き出す。
 実際には意識が明確であるが、記憶を失ったと診断をされた主人公の悲劇。

(一)

 「箱庭」 「被害妄想」 「度忘れ」 「徘徊する人」
 「魔法使いの弟子」 「ホメオスタシス」 「臨界点」 「天知る地知る」
 「鈍い人」 「茶番人生」 「しいたけのほだ木」 「麒麟(きりん)」

(二)

 「人間アラベスク」 「瘤(こぶ)と疣(いぼ)」 「視覚人間」 「愚鈍反復」
 「寄生虫」 「過密競争時代」 「落下」 「傷と痣(あざ)」
 「実業家の思い出」 「念仏と題目」 「無能の証明」 「無意味な存在」

(三)

 「春雷」 「冬の嵐」 「追風(ついふう)」 「李さんの黒い箱」
 「冬の旅」 「鮫肌の男」 「乳」 「サキソプラズマ」
 「父としての日記帳」 「側溝」 「シリソとアイタイダ」 「死ぬ前」

○「白バラ学苑歳時記」(御津先生行状記)シリーズ

 一時は小説家を目指した御津先生ではあったが……
 やがて、それは諦めて○○○○女学院の講師になったのである。そして、そこで引き起こす珍喜劇を綴る。
 全体に明るい雰囲気の短編集。

(一)

 「御津先生の備忘録」 「緩衝曲線」 「培養器」 「風のこころ」
 「リボンの殺人」 「片翼の天使」 「価値観」 「読心術」
 「争いの原因」 「櫛」 「欠伸(あくび)」 「水琴窟(すいきんくつ)」

(二)

 「御津先生の憂鬱」 「呆辞苑(ほうじえん)」 「檻の中の檻」 「目の位置」
 「なだらかな坂」 「御津先生の誤算」 「時代閉塞」 「蜃気楼」
 「濾過器」 「御津先生のおいたち」 「教育無意味論」 「予知能力」

(三)

 「不条理の神話」 「耳鳴り」 「詭弁学」 「素人集団」
 「水晶の中」 「豊饒地獄」 「緊那羅(きんなら)」 「スプリングソナタ」
 「苔(こけ)」 「患者創造」 「薄皮の袋」 「御津先生の発狂」

○「AL13の悲劇」シリーズ

 論理思考ができるように設計をされた高度なロボット<アルゴリ13号>の悲しみを描いたSF。限りなく人間に近い思考で、人間を冷静に観察する。

(一)

 「閉塞回路」 「けものの王様」 「宇宙からの音」 「蜘蛛の子」
 「人間機械」 「展覧会の絵」 「うなじ」 「空転」
 「秋の日のロンド」 「道化師」 「力行(りきこう)」 「敬礼」

(二)

 「存在の理由」 「シュークリーム」 「刀杖の難」 「宇宙牧場」
 「生け簀の中」 「脂ぎった人」 「合理主義者」 「乞食入門」
 「管(くだ)の先」 「叫び」 「遅すぎた再会」 「秋と冬の間」

(三)

 「的(まと)」 「四手のためのソナタ」 「冬の逆光」 「迷走アルゴリズム」
 「追憶の傷」 「人間の範疇」 「時間を食べる人」 「閉所恐怖症」
 「決別」 「一回かぎり」 「心のレクイエム」 「疲れはてた男」 

○「如月次郎一代記」シリーズ

 あまりにも合理的にものごとを考えるため武士社会からはみ出してしまった浪人の身におこった事件と異変を描いた時代劇。孤独な流浪の旅の一生を描く。

(上)

 「出奔」 「影の男」 「竹の花」 「風のささやき」
 「風媒花」 「果たし合い」 「渡し船」 「磯の香り」
 「父と子」 「山道」 「刃の曇り」 「むささび」

(中)

 「野の仏」 「百舌(もず)のいけにえ」 「鷹と鷲」 「光と影」
 「乞食の小屋」 「百日紅(さるすべり)」 「蟷螂(とうろう)の斧」 「夏草の露」
 「河童(かっぱ)」 「六盗三掠(りくとうさんりゃく)」 「時鳥(ほととぎす)の夢」 「山百合」

(下)

 「歯吹尊(はふきそん)」 「阿闍梨(あじゃり)との邂逅」 「不思議な老人」 「菊と刀の意味」
 「雪見地蔵」 「白鷺」 「からす」 「絵日傘」
 「天衣無縫」 「茶釜」 「蒲公英(たんぽぽ)」 「流浪の果て」

○「愛と死と永遠の章」

 この長編は、ちょっと意表を突いたロマンであり、近代社会における矛盾と愚鈍を鋭く描き出している。
 記述には、恋愛があったり、ポルノ的な要素があったりするものの、結局はわれわれの未来に対する<警告の書>ともいえる内容にまとめあげられている。
 つまり、夏目漱石の「こころ」のスタイルを借りた「ガリバー旅行記」のような感じである。

 一章では、主人公の女性がはつらつとした口調で語りかける。
 その女性は、父親がフランスに留学をしたときに結婚をしたフランス女性とのハイブリッド(ハーフ)である。妻とともに帰国し、郷里(長野県)で中規模の病院を経営していた父親は、主人公が幼いときに亡くなっている。
 この章の時点では、主人公はまだ看護学校の生徒である。(もっとも卒業間近であるが)
 一章は女性の語り口であるが、太宰治「斜陽」や芹沢光次良「愛と死の書」などより、もっと現代感覚(ナウいハイカラ)な表現である。だが、女子大や女学校の中で話されるような口調であっても、知的で文学的な範囲からは外れない。
 導入部では、読者を引き込むための工夫をする。できたら若い女性読者に、感情移入をさせるような書き方を心がける。

 二章は、主人公である女性の口調ではなく、冷静で客観的な見方をいした第三者が語る感情を含まない記述に変わる。つまり、<何がどうした>というような記述である。そのように、章全体を観察的な書き方で終始する。(感情のない観察者を設定する)
 それは、ときには冷酷に感じることもあり、そのようにして効果を高める。
 主人公の周辺には多くの不幸が、「これでもかこれでもか」というように、次々と情け容赦もなく見舞ってくる。子が死に、母が死ぬ。そして、夫は行方不明であるが、おそらく生きてはいないだろうという予感を客観的に描き出す。
 そして最後に、自殺することを決めて覚悟をした先生が尋ねてきて、永久の別れをほのめかすのである。そのようにして、主人公は本当の意味で天涯孤独になってしまう。
 一章で燃え上がった情熱は、いったいどこへいってしまったのか。
 そのようなことを行間から、ひしひしと感じるように工夫する。

 三章は、先生の遺書。
 一節は、暖かい心のこもった先生の語り口。(主人公に対する遺書ではあるが、むしろ手紙のような形式である。漱石の「こころ」の先生の遺書よりも、もっと揺れ動く感情を出してみたい)
 二節は、情熱がほとぼしる(男から女への)ラブレターのような感じに仕上げる。
 三節は、非常に冷静な報告書として体裁を整える。(この報告書を出すことを躊躇して、先生は自己の使命を放棄する決心をしたのである。つまり、死を選んだのである)
 この三章の中には、話中劇のような感じで二節の助手の手紙を入れて気分展開の効果をはかる。そして、三節の報告書の内容に記述される冷酷批判、断罪へとストーリの流れを進めていく。
 先生は、人間社会を調査にきた一種のエイリアンとする。(エイリアンといっても宇宙から来た生物ではなく、実際には過去に進化途中で、人類と分岐した次元の異なる外国人といった種族として、無理のない設定をする。例えば、地下人間などはどうか)
 先生はまず最初に、助手と主人公との関係について、学問的な立場から冷静に観察していたことを告げて詫びる。(つまり、遺伝子を外部から注入して、人類を支配するときのサンプルとしていたのである)
 遺書の口調は、あくまで主人公に対して暖かく同情的である。つまり、主人公の観察をしているうちに、互いに心が通っていったことが原因だ。
 しかし、結局は破棄することになった「太陽系第三惑星に関する報告書」には驚くべき内容が、冷静な口調で書かれていた。この報告書を提出することをためらって、先生は自らの生命を絶って、無に帰したのである。

 全体の構成は、読みやすいように三分割法で組み立てる。時間の推移は、なるべく逆にならないようにして、ひととおり全体をさっと読めるような構造にする。
 また、あまり難解な用語や特殊な専門用語は原則として用いない。
 構成の概要は、次のとおり。

一 愛の章(先生と助手と私)

 先生たちとの出会い
  動物公園の温室(昆虫園)で出会って親しくなる
  帰りに郊外レストランに寄って楽しい食事をする
  別れたあとで不思議な(なつかしい)気持ちがする
 先生たちを訪問
  一回目の訪問をする(助手が不在で先生だけに会う)
  二回目の訪問をする(先生と助手がいて楽しい話し合いをする)
  三回目の訪問をする(助手だけがいて気持ちが惹かれていく)
 助手との恋
  助手との恋が進展をして逢引きをする
  助手の出張先と手紙を何回か交換する
  妊娠をして女子を出産する

二 死の章(私の家族)

 生まれたばかりの子どもの死
  つかの間の子どもの成長に後のことを知らず一喜一憂する
  子どもは原因不明の病気になってあっけなく死んでしまう
  簡単な葬式をする
 ママンの不思議な死
  ママンが倒れたので帰郷して看病をし、不思議な病状を見る
  ママンが若いときのヨーロッパでの思い出をいくつか話す
  ママンの臨終でフランスでの罪の告白を聞きママンの死を看取る
 夫の行方不明と先生の死
  ママンの死後の後片づけをしながら思い出にふける
  夫の日記帳が出てきていとおしい気持ちで読み生きて帰らないことを知る
  余命いくばくもなくなった先生が来訪して謎のようなことをいう

三 永遠の章(先生の遺書)

 先生の遺書
  私を観察対象にした詫びが述べられている
  先生の過去と本性について秘密が明かされる
  私に対して人間としての生き方に関するアドバイスが書かれている
 夫からの手紙
  楽しかった日々と感情がめんめんと綴られている
  無理と知ってはいたが子どもを残したかったことを無念に思うとある
  細胞に分解してしまって元に戻れないことが簡単に説明してある
 太陽系第三惑星に関する報告書
  ヒトの実体と習性について克明に論述している
  ヒトの芸術と文化について鋭く批判をしている
  ヒトの未来についての厳しい予測を述べている

 具体的な章・節で示せば次のとおり。

 一 愛の章(先生と助手と私)
    1 温室での出会い
    2 楽しい食事
    3 不思議な気持ち
    4 最初の訪問
    5 二回目の訪問
    6 三回目の訪問
    7 恋しいこころ
    8 ラブレターの交換
    9 恋の成行き

 二 死の章(私の家族)
   10 赤ちゃんの笑顔
   11 あっけない死
   12 簡単な葬式
   13 ママンの病状
   14 ママンの思い出
   15 ママンの告白
   16 ママンの死
   17 夫の日記帳
   18 先生の来訪

 三 永遠の章(先生の遺書)
   19 観察対象としての私
   20 先生の過去
   21 生き方のアドバイス
   22 夫からの最後の手紙
   23 子どもへの夢
   24 細胞分解の事実
   25 太陽系第三惑星に関する報告書
   26 ヒトの文化について
   27 ヒトの未来の予測

○「海の嵐」

 この書名候補の「海の嵐」とは、ヴィヴァルディの合奏協奏曲の一つに付けられている名前である。(むろん、書名としてはまだ仮題であり、他の曲名を利用するか、ただ単にファゴット協奏曲となるかなどは未定)
 ヴィヴァルディは、非常に多くの合奏協奏曲を残している。
 そして、その中でいちばん多いのは、やはりバイオリン協奏曲である。有名な「四季」も一連のバイオリン協奏曲の中の一つである。独奏バイオリンの効果をねらって、高度な技巧が駆使されている。
 それでは、バイオリンの次に合奏協奏曲の独奏楽器に多く採用したのは何であろうか。
 ふつう、誰でもフルートだと考える。しかし、違うのである。ヴィヴァルディが二番目に多く作った合奏協奏曲はファゴット協奏曲なのである。当時そして今日でさえ、あまり親しみのないファゴットを独奏に用いたのはなぜか。
 このファゴット協奏曲のいわれについて、仮説を交えて解きあかしていく。

 モーツァルトよりもさらに古い時代に生きたヴィヴァルディの音楽が、現代音楽と比較しても遜色ない斬新な輝きが音にあること。そして、当時は二鍵のために扱いにくかったし、めったに用いられなかったファゴットを多く用いていること。
 この二つが、今までヴィヴァルディの大きな謎であった。
 この作品(これから作ろうとしている小説)では、この二つを一つの問題として考えることによって、物語の効果的な発展が可能になる。つまり、ヴィヴァルディの感情や心理を創作として描いていくのだ。

 オスペナーレ(ヴィヴァルディが面倒を見ていた女子養育院)には、とてもファゴットが上手な女の子が一人いたのだ。しかし、その女の子はファゴットが最初からうまかったわけではない。
 彼女は、そこへ入れられるまでは、ファゴットなど触れたこともなかったのである。
 その女の子のファゴットに対する繊細な心中の成長と、ヴィヴァルディの気持ちの葛藤を鋭く描き出すということで物語を展開をしていく。
 つまり、小説そのものが何となく「アマディウス」(江守徹監訳の脚本)の感じと似ている構成になる。
 倒叙方式で展開する梗概は、次のとおり。

一 現在の状況記述

 定期演奏会
 オスペナーレ
 ファゴットの上手な女の子

二 次々と遡って思い出していく記述

 赤毛の司祭
 ヴィヴァルディが音楽を生き甲斐にする
 ヴィヴァルディの子どものころ

○「超整理学入門」

 あまりにも無駄の多い現代社会で賢く生きるには。コンピュータを利用して知的生産をするには?
  コンピュータを利用して生活や仕事を合理化するには?
  コンピュータを知的生産の道具にするには?
などというテーマで、少しずつ整理をしていく。
 最後には、死に関する整理について考察をする。
 内容のレジメは、次のとおり。

一 整理とは
   整理をしないとどうなるか
   何のための整理か
   効果的な整理方法は

二 コンピュータは何をするものか
   コンピュータを知的生産に使う
   コンピュータを整理の道具にする
   整理のための整理とは

三 人生の目的は?
   人はなぜ生きているのか……キケロのことば
   死を考えた生き方について……メメント・モリ
   どこまでが自分なのか

     呼び出した場所に戻る

ハニワくん

 長年の眠りから覚めたハニワ君の見た現代社会。
(一) 発掘
(二) 現代社会
(三) 近未来の予測

○お金という概念
○何のために働き、何のために収入を得るか?
登場人物  W氏 U先生 私 私の妻
ハニワ君のカット


モチーフの育て方

 ほんの思いつきのような断片でも、工夫をすると作品になります。
 そして、そのような作業には老化予防の効果があるでしょう。
 次にいくつかの例をあげて、考えていきましょう。

story_motif.txt

○赤い痣(あざ)
 その痣は、私がものごごろがつくころには、すでに私の顔の中央にあった。
 その痣のために、私の人生は大きく曲がってしまった。
○赤い紐
 玉竜雪山(ぎょくりゅううんざん)
 中国ナシ族の民話。
 そのころ、結婚は自由でなく族長によって相手を決められた。なかには好きでない相手とむりやりに一緒にさせられるものがあった。好きあった若い男女が、一緒になれないので山へ入って心中をした。そのときに赤い紐を首に巻いたものもいた。
○赤い風船
 太っている独身の女性に痩せさせてあげるといって近づき、最後に大事件になる。
 痩せるために食生活、夜の生活、同居
 痩せたい一心で、その女は何でもいうことを聞くようになった。
 その男は、ちょっと目付きが鋭く人相が悪いがなかなかスマートでユーモアを解する人物であった。そして、笑うときにまだ少年の面影を残していた。茶色のスーツがよく似合った。

 服を着ているのではなく、服の中に入っているように感じることがある。そのようなときは、自己を失っているか病気のときが多い。

 鼻と唇の間の長い女性は、むしろ口紅を塗らないほうがよい。なぜならば、そのことが目立ってしまうからである。
 そのような男性は、そこに口髭をたくわえるとよいかもしれない。
○脚のない蟹
 手足のない蟹
 三菱製紙の用水池で見た気味のわるい真昼の幻覚。考えることだけしかできず、やがて死んでゆく。敗戦後、しばしば樽に入れた手足のない傷痍軍人が募金をしているのを街頭に見かけたものだ。
○猪首の男
 私の同級生 高校時代
 小学生のときに友達をいじめた子の家へ、いわばなぐり込みをかけた。
 大学 学費値上げ反対の抗議運動
 四十歳のとき 大使館への抗議 割腹自殺
 正義感の強い男
 猪突猛進という言葉がある。まったくそのとおりである。
 情熱にかられると、勇気が出て決行をするのである。
 いのしし料理
 精力的 精力絶倫

 精力的で猪突猛進な男の最後は……
○エンジェル係数
 すべてを子孫のためにつぎ込んだ時代が久しく続いた。そして、退廃が進む中でそれが無駄なこととわかったときの感情は哀れでもあった。

 いつまでも子供のままのものが多くなった。つまり、大人になれないのである。
○落 ち 葉
[1:公園のベンチで]
{1-1:一人でもの思いにふける}
 落ち葉
 秋は落ち葉の季節である。
 私は枯れ葉が散っていくのを眺めるのが好きだ。
{1-2:彼が現れる}
{1-3:彼と親しくなる}
[2:彼とのデイト]
{2-1:一回目のデート}
{2-2:二回目のデート}
{2-3:三回目のデート}
[3:彼の正体を知る]
{3-1:落ち葉がなくなって彼が来なくなる}
{3-2:彼の会社を尋ねるが、すでに死んでいた}
{3-3:むすび}
○亀の甲羅
[1:海岸で亀の甲羅を拾う]
{1-1:恋人と海岸を散歩していると亀の甲羅があった}
{1-2:恋人は気味が悪いから捨てろという}
{1-3:逗子マリーナに帰ると、見知らぬ男が見て、譲ってほしいという}
[2:甲羅の魔力を発見する]
{2-1:部屋を荒らされていて、盗みに入った後がある}
{2-2:逗子マリーナに持って帰り、眠りにつく}
{2-3:使い方を告げる夢を見る}
[3:実際に魔力を使ってみたら……]
{3-1:海岸にいる人たちを見る}
{3-2:彼女を覗いて見てみる}
{3-3:最後に自分自身を覗く}
(一九九四・〇八・一九)

 海岸にあった。なかに藻屑のようなものがつまって気味が悪かった。
 今思えば、それは後で自動車の中で焼け死んだ彼の悲惨な未来を暗示していたのであったろうか。

 その亀の甲羅には、不思議な魔力があった。
 首のところの穴から尾の穴をとおして覗くと未来がわかる
 逆にすると過去がわかる

 前の右足の穴から後ろの左足の穴を覗くとよい性質がわかる
 前の左足の穴から後ろの右足の穴を覗くと悪い性質がわかる
○仮面の目
[1:本当の顔でない男と会う]
{1-1:その男から仮面を譲り受ける}
{1-2:その仮面で見ると、人の本性が見える}
{1-3:仮面を壁にかけておくと、表情が変わる}
[2:ない目の部分でもって見ているという]
{2-1:}
{2-2:}
{2-3:}
[3:その男が発狂をする]
{3-1:}
{3-2:}
{3-3:}
(一九九四・○八・一六)

 私は、その男がどんな過去をもっているのかは知らない。また、それを知りたいとも思わない。しかし、今でも彼のことを思い出すたびに、心に戦慄を覚えるとともに、何となくなつかしくもなるのである。
 その男と知り合ったのは、吉祥寺のガード下のバーであった。
 その男は、ちょっと変わっていた。

 その仮面を古道具屋で見つけたときの興奮はたいへんなものであった。
 仮面を壁に掛けて、一晩中眺めていた。
 しかし、日が経つにつれて不思議なことを発見したのだ。

 その男が、いま何をしているかも知らない。
 仮面を蒐集しているのだ。
 そして、ある日おそろしくかわった仮面を手に入れたから見て欲しいと言った。
 その仮面をかぶると人の本質が見えるという。
 恋人の顔を見た瞬間、発狂をしたのである。その顔が崩れて見えたのだ。それ以来、人間ぎらいになってしまった。
 そのような人の本質が見える仮面を二つ所有しているという。
 その一つをかぶって眠ってしまったら、翌朝になって仮面がない。おそらく、顔の皮膚にくっついてしまったのだろう。その男は、仮面をかぶっているという。
 そういえば、その男の目はうつろである。
 しかし、その男の顔は仮面には見えない。顔が仮面にかわるのではなく、仮面が顔に変わってしまったのだという。

 そこには何もなく、ただくり抜いてあるだけである。しかし、壁にかけると、その目は意地悪そうに私を見ているのだ。

 いったい彼が仮面をかぶっていたのか、逆に仮面のほうが彼をかぶったのかは、誰にもわからなかった。
○嗅  覚
(覚え:現代お伽草子に入れるか)
 嗅覚の鋭い男(女)がいた。
(一九九四・〇八・一三)

 自分の嗅覚が鋭くなったのは、いったいいつのころだっただろうか。
 ふと、そのことに気付いたのは初恋のときであった。その恋人に逢って親しくなるにつれ、妙なことが進行をしているのに気付いたのである。
 初め甘い香りの恋人は、次第にすえたような臭いに変化をしていった。そして、次第に腐ったような臭いになった。おそらく、最後は腐敗した汚物の臭いに変わっていくであろう。恐ろしいことだ。
 衰えたために抵抗力がなくなり、体内にあるばい菌を繁殖させてしまったためである。
 実際の人間の一生よりも速く進んでしまう臭い。

 なぜか、悪い人ほどいいにおいがするのです。そして、いい人や親切な人は悪臭を放っていやなにおいがするのです。

 いつごろからか、嗅覚が鋭くなってきた。先祖帰りであろうか。
 だれかが訪ねてくるときも、その人がまだ路地にいるときに彼は誰かわかるのである。むろん、彼女が来るときもわかったのである。
 ある日、突然に彼女が戸口に立った。
 その日は、彼女の臭いに別な臭いが混じっていたのである。彼には、その臭いが誰の臭いであるかがわかった。………

 「臭い」
 そのいやな臭いはいったいどこからくるのでしょうと、初めは不思議に思ったのです。そして、そのいやな臭いが自分から発していたことに気がついたときには、慄然としたのです。そのことが初めてわかったときの心の動揺は、驚くほどのものでした。
○くぐつ師
 そのピノキオ人形は操られながら、意志があるように動いていた。くぐつ(傀儡)師によって動かされる人形であるが、実際に生きているものの自然さのほかに、なんともいえない諧謔などもある。
 ポーの描いたチェスをするメルチェルの人形よりもよほど精巧であった。
 しかし、一方では意志がありながら傀儡のような動作をする人間がいるのはどうも不思議なことである。
 いつか、人形は知識を増やしていって、くぐつ師を支配するようになった。ちょうど、二人が入れ替わったのと同じであった。そこには、機械に支配された哀れな人間が見られたのであった。

 人間が考えることをやめるようになってから、もはや二千年になる。

 複雑な仕事はすべて機械がする。

 人間は、ただ楽しめばよいだけである。そして、機能が退化した人間には、もはや楽しむことさえも苦痛であった。

 その知識のかたまりのようになったロボットは、深いため息をもらしながら、考えていた。そして、とうとう傀儡師に尋ねた。
 「人間はどこから来たのか」
 「人間は何をするものか」
 「そして、人間はどこへいくのか」
 しかし、もはや考えることをしなくなった傀儡師には答えられなかった。
 そのロボット人形は、悲しそうにいった。
 「もはや、人間の時代は終わったのかもしれない」
○けものの王様
 ここに古びた一枚のはがき(写真)がある。
 私は、それを取り出して見るたびに、彼のことをなつかしく思うのである。

 狂という字はけものの王様という意味です。
 誑かすは「たぶらかす」と読む。言葉が狂ったという意味であろう。
 詐 いつわる?
 匡(きょう)
○螻 蛄 才
[1:螻蛄才という言葉について]
{1-1:螻蛄について}
{1-2:螻蛄才について}
{1-3:彼について}
[2:彼の前半生]
{2-1:編集長になる}
{2-2:教祖になる}
{2-3:先生になる}
[3:彼の晩年]
{3-1:小説を書くようになる}
{3-2:汗をかくようになる}
{3-3:恥をかく}
(一九九四・○八・一九)

 螻蛄才(けらさい)という言葉がある。読んで字のごとく、おけらの才能という意味である。
 それでは、おけらという昆虫をご存じだろうか。都会の回りには、だんだんと畑が少なくなるにつれて、そのような虫を見ることも少なくなってしまった。したがって、ここに説明をしておこう。
 <おけら>と言わずに、単に<けら>ということもある。「お」は敬語ではなく、愛称としてつけたのであろう。漢字で書くと「螻蛄」も「お螻蛄」も読み方はまったく同じで「おけら」でよい。
 「お螻蛄」でも「おおけら」とは読まないのである。
 最近は、畑が少なくなったことと、農薬が進歩したことなどが理由であまり見かけなくなってしまった。私が小さいころはよく畑でつかまえて、遊んだものである。親指と人差し指で挟んで、
  おけらのきんたま、どーのくらい
というと、土掻きのついた大きな手をさかんに広げたものである。
 その様子が、とてもおかしかったことを今でもよく覚えている。

 横井也有の「鶉衣(うすらぎぬ)」に、
  螻蛄という虫はよく飛べども家を過ぐる事能わず、
  よくのぼれども木を窮むる事能わず、
  よく泳げども谷を渡る事能わず、
  よく穴掘れどもおおう事能わず、
  よく走れども人を免る事能わず、
  五能ありて一つもなぜず。
とある。
 なお、「おおう」という言葉の「おお」の部分には、手偏(てへん)に「俺」という字の旁(つくり)が書いてあった。
 また、ここでいう題名の鶉(うずら)とは住所不定の流浪者の意味である。

 私は大学を出ると一流商社に入社した。
 学生時代には、ひととおり科目を履修したわけであるが、とくに得意なことはなかったのである。
 しかし、どの能力も中途半端であった。
 つまり、彼は螻蛄才であった。
 そのような理由で、ホームレスになってしまったのである。



 食うために生きるのではなく、生きるために食うのである。
 キケロの言葉にそんな内容があったように思われた。


 現在は、もはや心の葛藤などはなく、愚かな人たちが企業という奇怪な組織に向かって道をあくせくと急いでいるのを寝転がって眺めている。



 お前の未来を見せてやろう。

 やがて、おのれの才能のなさを知り、将来の可能性までもわかったときには愕然とした。そして、おののいたのです。
○幻 想 曲
 あれほど多くのファンタジックなピアノ曲を作ったショパンが幻想曲と正式に名付けたのは、その曲だけであったようだ。
 その<雪の降る街は……>と冒頭の導入部をもつ曲は、ヘ短調の作品四十九である。
 ちょっと、バラードにも感じが何となく似ている。
 ワルツ
 マズルカ
 前奏曲
 バラード
などは、まったく数え切れないぐらいあるのに。
 マズルカなどは、レコードが二枚になっていて聞いていても区別がつかなくなってしまうほどである。

 この幻想曲はショパンがジョルジュ・サンドとした喧嘩と仲直りを描いたという。そのことは、リストがショパンから直接に聞いたという記録が残っているということだ。

 かなり自由なソナタ形式でできているので、聞きごたえがある。
○献体(リサイクル)
 いったい何なのだろうか。
 人間の一人一人は、ちょうど工場で作られた製品の、例えば自動車のようである。年がくれば廃車になる。もっとも、使い始めてすぐに、大事故を起こしてスクラップになる場合もある。
 むろん、解体されたあとに来世などはない。
 しかし、部分的にリサイクルされることはある。
 また、いつまでも機能を損なわないために、クラシックカーになるものもある。

 宗教など人間社会に不要ではないかという意見もある。
 しかし、私はそう思わない。
 西田幾多郎も「善の研究」に、
  ……不真面目な証拠である。
のように書かれている。
○恋の暴走
 「あなたは、もっと美しくなるはずです」
 これが、xx社のキャッチコールでもあり、スローガンでもあった。
 女らしさの再発見、再発掘、若い女性にとっても、中年の女性にとっても、なんともいえない魅力であった。
○苔(こけ)
 山間の谷で見つけた小さな苔をめでて家に連れてくる。
 枯れてしまうかと心配したが……
 やがて、生き生きとしてきた。
 夢で女が出てきた。
 最後に自分の体に寄生させる。
 最初はいやであった。やがて、動けなくなった。
 何と気持ちが和やかなことであろうか。
○下着の市場調査
[1:ある日、変な電話がかかってくる]
{1-1:その電話の内容というのは}
{1-2:電話の逆探知について}
{1-3:電話番号を変えてしまう}
[2:その男の身元を調べるために工夫をする]
{2-1:ある程度、身近にいるものと判断する}
 会社のロッカー
 双眼鏡で直接に見られた
{2-2:間接的に知っている人を絞っていく}
{2-3:あやしい人に、逆に打診をしてみた}
[3:何とその男は、同僚の夫であった]
{3-1:どうもライバルのKの夫らしい}
{3-2:いやらしいことをする理由は?}
{3-3:逢ってみることにする}
(一九九四・○二・二○)

 あなたは、不愉快な電話を経験したことがないでしょうか。

 その後、わたくしのところにも奇妙な電話がかかる。
 しかし、それは無言ではなかった。わたくしが出ると卑猥なことをいうのである。声が少し枯れているので、おそらく中年の男であろう。すぐに私は切ってしまうのであるか、するとまたかけてくる。
 はじめ、その男は婦人下着の会社員で市場調査をしているといった。
 そして、「あなたは、どんな柄のパンティをはいているか」とか「ブラジャーを夏の暑い日にも必ずつけますか」などということから始まり、最後にはとても恥ずかしくて言えないようなことさえ、平気で尋ねるのであった。
 哀願をするような調子で、五分でやめるから切らないでほしいなどと言う。まったく、いやになってしまう。
 しかたなく、黙って聞いていると約束どおり五分少し前に
 「ありがとうございました」
とていねいに言って回線が切られるのであった。
 しかし、ていねいではあるが、電話の先の息づかいが非常に荒くなっているので不気味な感じがする。その男は、私が美しくない顔をしていて、仕事には熱心であるが、すぐに身体をまかせてしまうふしだらな女であることをよく知っているようでもある。
 自分のしていることが、何だか恐ろしくなってきた。

○人 面 石
[1:川原で人面石を見つける]
{1-1:川原の美しい情景と彼の気持ち}
{1-2:その石を見つけたときの感情}
{1-3:無理にはがしてもって帰る=頭の部分であった}
[2:その石を持ち帰って机の上に置く]
{2-1:磨いてニスを塗り、机の上に飾る}
{2-2:石と話をする夢を見る}
{2-3:彼の希望がなんでもかなうようになる}
[3:顔の表情が少しずつ変わって事件が起きる]
{3-1:石の表情が次第に変わっていく}
{3-2:夢で石がこれ以上無理な望みを聞けないという}
{3-3:石が割れて、彼も死ぬ}
(一九九四・〇八・一九)

 人面石というのをご存じですか?
 石の表面に顔が描かれているのだ。
 不思議な自然の造作である。
 その石を河原で見つけたときに、彼は喜んだ。
 その石を河原で見つけ、喜んで持ち帰ったときには、あのような悲劇の始まりとは夢にも思いませんでした。

 石が表情をもっているのである。

 あるときは喜び、あるときは怒り、あるときは不愉快になっている。

 人面石
 その石を川原で見つけたのは、まったくの偶然であった。
 しかし、不思議なことに私はそのときに誰かに呼ばれたような気がして、きょろきょろとあたりを見回したことは事実である。
 その石は、笑っているようでもあり、見方によっては泣いているようでもあった。

 その石は、割れたのである。
 彼も鉄骨の下敷きになって、頭が割れて死んだのだ。
○スーベニール
 スーベニール(Souvenir) 思い出という意味だったか?

○スプリングソナタ
 そのヘ長調の曲は、流れるように進んでいった。
 彼は音楽学校の生徒 私も同級生
 彼の伴奏をすることになった。
 彼の恋人は、親たちの決めたいいなずけ 音楽へだめ

 バイオリンの形は、女性の身体に似ているように思う。

 彼のバイオリンの弦が切れた。
 恋人は私のところにピアノを習いに来る。

 彼は、演奏会のときに切れた弦で失明をする。
 バシッと大きな音がした。
 ガット弦でなくスチール弦を付けていた。

○請 求 書
(覚え:テクノレディ物語)
[1:]
{1-1:請求書が送られてくる}
 その事件は、ある日次のような請求書が送られてきたことで始まった。
 私は覚えがない。
 上司に相談をした。
{1-2:慌てて課長に相談をする}
{1-3:心当たりの犯人を探し出す}
 ……

○西洋乞食
 その男にはじめて会ったのは、父の葬式のときであった。
 靴下の底に大きな穴が開いていたのを覚えている。
 エスペラントの権威であった。
 学校の国語のテキストにも引用されていた。
 お嬢さんがいた。

 優秀でも貧乏
 金持ちになりたいとも考えない人

○セム皮の手袋
[1:セム皮の手袋を公園で拾う]
{1-1:その手袋をしてみると気持ちがよい}
 それは、「殺意の手袋」であった。
 捨ててあったセム皮の手袋を拾ってはめると不思議な気持ちになった。そのぴったりとした感触に恍惚として、次に女性の首が絞めてみたくなったのです。
{1-2:手袋をしてしたことは、絶対に発覚をしないという手袋の秘密を知る}
{1-3:実際に試してみたくなって、万引きをしてみたが安全であった}
[2:女の首を絞めてみたくなる]
{2-1:金持ちの太った女を絞め殺す}
{2-2:美しい痩せた未亡人を絞め殺す}
{2-3:あわれな女孤児を絞め殺す}
[3:手袋の魔力が手に移ってしまった]
{3-1:手袋を焼き捨てるが、手に魔法の力が移ってしまう}
{3-2:手で恋人を絞め殺してしまう}
{3-3:手で自分自身の首を絞めて殺す}

○双眼鏡で見る女
(覚え:テクノレディ物語)
[1:久しぶりの休日である]
{1-1:寝坊をした}
{1-2:お掃除をして、朝と昼の兼用食を外でした}
{1-3:帰りにデパートで双眼鏡を買った}
[2:]
{2-1:バードウオッチをした}
{2-2:アパートから周囲を眺めた}
{2-3:}
[3:]
{3-1:}
{3-2:}
{3-3:何とそれは、自分自身であった}
(一九九四・○八・一九)

 今日は会社がお休みなの。
 恋人はいないし、退屈だわ。
 何気なく外を見ていると、キラリと光ったものがあった。
 何と、相手も双眼鏡で見ていたのであった。

 何気なく双眼鏡で見ていた。
 すると何と向こうも見ているのである。

○太鼓の中
 あまりうるさいので、私は太鼓を破いた。すると太鼓の中に、何と、別な世界があったのだ。

○大仏の目
 悲願 人は何のために生きるのか 

 海通(かいつう)が大仏を作った話。
 役人が賄賂を要求した。海通は言った。
 「これは大仏を作る尊い資金であるから差し上げるわけにはいかない。代わりに私の目でよかったら納めることができます」
 役人は怒って、それでは目を差し出せと言った。海通は、しばし念仏を唱えてから自ら手で両眼をえぐり、盆に入れて差しだした。
 その後、賄賂を要求されることもなく、海通の信望はますます高くなった。
 一二〇〇年前の中国でのことであった。
 海通は若いころに峨眉山の山頂にある寺==臥雲庵(がうんあん)にこもって大仏の製作を祈願したのであろうか。海通の一生は大仏の製作で費やされたが、ついにその完成を見ないで死んだ。

○啖  呵(たんか)
 プログラムを作るときに、よく
 「動けばいいんだろ!」
という人がいる。
 しかし、プログラムは動きさえすればよいというものではない。

 やがて、彼は
 「働けばいいんだろ!」
と啖呵をきるようになったということだ。
 何のことはない、にんべんが付いただけではないか?

○土器保存館
 東京都の土器保存館の秘密
 そこには、大変なものが密かに保存されていたのであった。

 呪術に使った埴輪(はにわ)
 その呪いは、現在でも効くということだ。
 職員が呪いをかけた。
 その鈍いとは?

○読 心 術
 「人生には二つの悲劇がある。一つは欲望をえられないことであり、他の一つはそれを獲得することである」とバーナード・ショウは「人と超人」に書いたが、彼の場合は後者であった。

 すべて私の思っていることが、彼にはわかってしまうのだった。
 そればかりではない。
 ……

○溶 け る(宇宙から来た微生物)
 Kがいちばん恐れたのは、溶かされることであった。
 世の中には信じられないようなことが、しばしばあるものだ。彼が、その秘密を知ったのは、ある偶然からであった。その得体の知れない生物を、ここでは仮にLと呼んでおこう。Lのもつ情報網は恐ろしく広範で、なお高速な通信ができる。したがって、地球に分散して生息しているLたちの仲間は一つの巨大な組織ともいえるのである。むろん、このような文章もLたちの神経を鋭くする対象ではあるが、好運にもこれが世の中に警戒を目的として出回ったとしても、そのころにはすでに私は存在をしないと思う。
 誰の身体にも多かれ少なかれLは住み着いていた。ただ、われわれが家畜を飼育するときと同じように目的の日が来るまでは、生かしておくのであった。しかし、家畜でも人間に向かって来たり、病気になったものは処分をしてしまう。それと同じようなことは、しばしば見受けられた。
 やがて、Kの身体は溶け始めた。

○人間機械
 彼を理解しようとすると、まず機械を考え、それから彼なりの人間を見るほうが早いであろう。行動はあらかたその入力と出力の関係でとらえられたし、また時刻に対しては非常に正確で、ある種の装置を思い出させた。

○人間培養器
 何と地球は人間培養器であったのだ。

○馬鹿の太一
 むかし、馬鹿の太一という男がいました。
 なぜ馬鹿の太一などというあまり体裁のよくない名前が付いたのかは、彼自身は一向に知りませんでした。
 しかし、その村で馬鹿といえば、太一の代名詞でもありました。
 ある日、太一は山の池へ釣りに行きました。その日はあいにく餌を忘れてきたので、しかたなく針には何も付けずに糸をたらしておりまいした。さすが、馬鹿の太一もこれには不安になってきました。
 餌の付いていない針に魚がかかるだろうかという心配をしたからです。
 しかし、いやいや魚の中にもやはり馬鹿なのが一匹くらいいて、そいつがきっと食らいつくにちがいない、などと自分に言い聞かせて、ふところから煙草を取り出し、ゆうゆうと一服を始めたのです。
 馬鹿のおことですから、やはり気が長いのです。
 七時間くらい糸をたらし、とうとう太陽が西の山に赤くかかり始めました。しかたなく、どれ、ぼつぼつ帰ろうかなと思って、帰り支度を始め、竿を上げると、これはどうしたことでしょう。
 大きな黒い魚が糸に引かれてづるづると上がってくるではありませんか。
 しかし、太一は驚きませんでした。
 ……

○箱  庭
 自分のしていることを箱庭の中に見たのであった。
 そこは、非常に狭いところであった。
 よく考えてみると、それらはすべて作られた型にはまった人生であった。それが、今までは自分を中心に考えていたからわからなかったのである。

 下手な芸をしたり、失敗をすると(舞台で)思わず見ていられなくなり、目をおおいたくなります。(目をそむけたくなります) ちょうど、あれですよ。誰もが自分の生きざまを、恥ずかしく思うようになったのです。(自己基準があがったために)

 ホスピス
 彼はここへ来るまえは、箱庭が好きであった。それは、ままごとのようではあったが何事も忘れて熱中できるただ一つの彼の道楽であった。
 ホスピスでも箱庭を作りたいと思った。
 そこで、見舞いにもらったケーキのブリキ箱で密かに作ったのだ。
 ある日、彼は行方不明になった。しかし、どうしても見つけることはできなかった。捜索隊も出て、付近の林を探した。何と彼もその中に入っていた。

○パスワード
(覚え:テクノレディ物語)
[1:イントロダクションとパスワードとは何か]
{1-1:イントロダクション}
 その一連の出来事が、あまりにも速く自然のうちに流れていったので、人為をまったく感じなかった。しかし、それはあらかじめ仕組まれていたのであった。もっとも、本人も意識をしていなかったのであるが……
{1-2:パスワードとは}
{1-3:私はパスワードを忘れる}
[2:彼がパスワードを考えてくれる]
{2-1:}
{2-2:}
{2-3:}
[3:彼が私のパスワードで利用していた]
{3-1:}
{3-2:}
{3-3:その男は別の詐欺事件で逮捕される}

○判  決(裁判、審判)
 取調室、犯罪者、容疑者、そして冤罪。
 そのようなことは、小心な自分には関係がなく、小説やテレビドラマの中だけのことと思っていた。
 しかし、違うのである。
 いま、実際に私は取調室で刑事を前に追求をせられているのだ。

 私は頭がぐらんぐらんとするばかりでなく、もともと体力もなかったので、その丸っこい逞しい刑事の前で、あまりにも眠くなって、ついぐぐっと深い眠りに落ちた。そのことは、以後あまりにも心象を悪くしたのだった。
 刑事は黙って部屋を出ていった。

 判決は次のようだった。
 生きる目的も明確でなく、今日までだらだらとしてきたのは罪に値する。よって死刑。

 そこで、本当には、逆に目がさめたのである。
 窓から冬の陽が斜めに差し込んでいた。

○パンチミス
(覚え:テクノレディ物語)
[1:秘書兼キーパンチャとして貿易商社に派遣させられる]
{1-1:}
{1-2:}
{1-3:}
[2:業務用の注文書をタイプする]
{2-1:}
{2-2:}
{2-3:}
[3:社長の個人的な手紙をタイプする]
{3-1:}
{3-2:}
{3-3:}
(一九九四・○五・一三)
  パンチミス
 大変な変換ミスをしてしまったのだ。
 書物を注文する伝票である。
 リルケ詩集 刺繍
 聖書 清書
 宛先の間違い
 ○○精機 ○○精気
 さいわい大事にいたらなかったので、ほっとしたのである。
 ……
 いつも細心の注意をしているのだが、つい失敗をしてしまう。
 こんなこともあった。
 「様」のないはがき。ワープロで「様」を付け忘れた話。住所、氏名をデータベースから自動的に読み込んだ。
 「さまにならない話」である。
 プロではあるが、まだまだだと思う。
 データをキーインプットするとき、プログラムを作るとき、業務文や上司の書簡などをタイプインするなどさまざまである。私は、キータッチが速いので結構依頼が多い。私は作業が楽しいので喜んで引き受ける。だから、他の女の子よりも頼みやすいのかもしれない。
 原稿のB 13
 31 引

○土星ビー玉の思い出
 その小さい事件は、戦後まだ間もない物資の不自由なころのことであった。
 そのころの踏切の標識は、まだ鉄道が完全に復旧をしていないために応急的なものであった。それは、クロッシング形といいアメリカの踏切に見られるような、板をX字に組み立てて白く塗った大型な標識であった。そして、主要幹線にあるものは梅干し大のガラス玉がはめてあった。
 いったいどういう基準かわからないけれど、おそらく暫定的に進駐軍がもたらしたものであろう。
 その記憶は、戦後まだ物資の不足していた時代の悲しい気持ちを、今でも生々しく思い出させる。鈍い光を放つクロッシングのガラスの玉は、当時の子供たちの宝物であった。それを外そうとして、夢中になって警官に捕まってしまい父兄が始末書を書かされたことがある。その小さな事件は、子供に何も買い与えてやれない親のやるせない悲しさでもあった。

○冬の風鈴
(覚え:テクノレディ物語、現代お伽草子でもよいか)
[1:アパートに若いカップルが住んでいた]
{1-1:若いカップルが住んでいた}
 私の住んでいるアパートの角の部屋には、……
 なぜ「ふうれい」と読まずに「ふうりん」と読むか? 日本人の風流心。
 リンレイの悲しい一生。
{1-2:よく夫婦喧嘩をしている}
{1-3:次の日は、まったく睦まじくなるのである}
[2:喧嘩と仲直り]
{2-1:そんな喧嘩と溺愛が反復された}
{2-2:その夜、大きな夫婦喧嘩があった}
{2-3:私は仲裁に入った}
 妻のほうな言った。
 彼は彼女のほかに愛する人が勤務先にいて、その人と関係をしているというのである。そして、彼は彼でやはり同じようなことを言うのである。つまり、彼女にも愛人がいて、彼の留守中に不倫をしているというのだ。
[3:愛憎の果ては?]
{3-1:心中をしたのである}
{3-2:その遺書の内容}
 遺書には次のようなことが書かれていた。
 夫の愛人と妻の愛人が、互いに知り合いになって愛するようになったから、自分たちは、もはやいらなくなった
{3-3:つるされたままの風鈴が木枯らしに吹かれて烈しくなっていた}
 やがて、糸が切れたのであろう。風鈴の音はしなくなった。
 そして、ふたたび夜の静寂が、私に戻ってきたのである。

○文鳥の死
 男は女のところに三日間泊まった。そして、帰ったら死んでいた。その文鳥の目は、なかば閉じてはいたが、それでも男に抗議をしているようであった。あれほど孤独を慰めたのであったが、やはり女の魅力には勝てなかったのである。
 その半ば閉じた目は、それでも何か言いたいようであった。
 いや、その目は抗議をしている目であった。

○並行した邂逅
 そのときに何の気なしに顔を上げたら、同じ方向に進んでいる支線の電車の中の女が、互いの窓を通してちらりとこちらを見たのが印象的であった。

 今から二十年はど前のことである。
 心配そうにこちらを見ていた女の眼差しを今でも忘れられない。

 今から四十年ほど前のことである。
 小田原か三島のあたりだろうか。並行して走っていた軽便鉄道の無蓋貨車のような車両に乗っていた女が、こちらを見て明るく笑い手を振ってくれたのを、今でもあざやかに思い出す。もんぺをはいて粗末な服装をしていたが、それでも上品に見えた。

○閉所恐怖症
 いつごろか、便所のなかで倒れるということが心配になった。
 私は、狭いところが嫌いだ。
 ……

○閉塞回路
 そのクローズドサーキットに入り込んでしまったのは、あるまったくの偶然であった。
 出られないのである。
 樹海のようである。
 また、無限ループでもあった。

○呆  子(ほうじ)
[1:呆子という薄っぺらな本が出てきた]
{1-1:代々蔵書があったこと}
 書物を整理していたら、「呆子」という薄っぺらい本が出てきた。
 何となく、その書物は私に読んで欲しいという気配が感じられた。
 手に持つと、へらりと微かに動いたようだ。

{1-2:祖先は知識で食っていた}
 私の祖先は、いわゆる家老職であった。
 つまり、スタッフなのである。
 したがって、あらゆる分野の知識をもっていなければならない。
{1-3:落ちぶれて書籍を処分しようと思って整理をする}
[2:その本の内容の紹介]
{2-1:大きなものは小さなものの気持ちを知らない}
 朝三暮四
 あるとない
 胡蝶の夢
 わが生には限りがあるが欲には限りがない。限りある生において限りない欲を追う。行き詰まるに決まっている。
 支離疏p37
 自分の馬鹿をしっているものは、まだ、大馬鹿ではない。p90
 西施は、胸を病んで眉をしかめた。村のしこめは美しいと思って真似をした。p104
 髑髏の話p126
 うまくいけば生き、しくじれば死ぬ。逆に、うまくいっても死に、しくじっても生きることがある。くすりといったって、実はドリカブトである。p185
 力が足りないとつくりごとをし、知が足りないと欺き、財が足りないと盗む。
 小人は財のあとを追いかけ、君子は名のあとを追いかける。p222
 人には八つの傷と四つの煩いがある。p231
 聖人は
{2-2:蝶々の話}
{2-3:髑髏の話}
 いちばん最後に、好きなものになって生きるのがよいと書いてある。
 私は本が好きだ。
と思ったら、本になっていた。
 瞬間に 次第に変化した。
[3:本に対する批判と本になってしまうこと]
{3-1:内容に対する批判}
{3-2:本になってしまう}
{3-3:本になって誰かに読んでもらいたいと待つ}

○ボスの絵
 スペイン王フェリペ2世はボスの絵を多く蒐集した。晩年はボスの「快楽の園」の前で長い時を過ごしたという。おそらく死後の裁きを考えていたのであろう。

 王はベッドに伏したままボスの絵を見ていた。
 子どもが書かれていないことに気がついた。
 天国への通路もあった。

 プラド美術館(1992年5月7日午後10時、NHK第一テレビ)
 フェリーペ二世はボスの絵を集めた。彼は、反乱を起こしたネーデルランドを厳しく攻めた。
 スペインのマドリードにあるプラド美術館。
 ボスとティッアーノの作品が多い。
 以下はボスの作品
 「乾燥車」 この世はすべて干し草の山。集めてもむなしい。
 「7つの大罪」 怒り、好色、怠惰、大食、虚栄、嫉妬、貪欲
 「三賢王の礼拝」
 「聖アントニウスの誘惑」
 「快楽の園」
 フェリーペ二世は寝室にこの絵を置いて、これを見ながら死んだ。(ネーデルランドに対して行った虐殺を常に心に思っていたのだろう)
 この絵には、子供が書かれていない。
 (左面)過去を示す。アダムとイブ
 (中央)現在の世相を示す。現世の様(泉に立つ女)魚、果物などは肉欲を示す。人間の心に秘められた欲望。
 (右面)終末を示す。地獄の光景。
 この絵の解説のところで、バッハのシャコンヌのような音楽が流れて、非常にマッチしていた。

○枕 の 怪
 その枕をして眠ると、きまって奇妙な夢を見るのです。
 瀬戸物の枕
 みずまくら 水まくら 水枕

 おそらく前に使っていた人の夢が枕に封じ込められたのでしょうか。
 フロイトの「夢判断」
 夏目漱石の「夢十夜」

 枕の中のそばがらの中に住み着いた虫は毎夜おかしな夢を見させるのであった。

 買った(プレゼントされた)枕のそばがらの中に虫がいて、その人に暗示をする。

○耳 鳴 り
 はじめカリカリ、キリキリというような感じであったが、やがてキーンという音になった。そして、音が自分を支配するようになったのである。
……
○落  下
 苦労をして、空中歩行することができるようになる。
 飛行術を修得した久米仙人が、川で選択をしていた女のすね(もも)に見とれた瞬間に術が破れて落下をしたという話。

○消された記憶
 この書名で話題になった小説があったようだ。
 近未来のテーマとしては、非常によいタイトルだろう。

Kuroda Kouta (2004.03.07/2013.10.13)