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この資料に関するコメント

 新約聖書から抜粋(1)


1 ルカによる文書(一)
  (Lucas・ルカによる福音書・聖霊の福音書の上巻) 全



第一章


【冒頭の言葉】

01 私たちの間で、起こった出来事にについて。
02 初めからの目撃者や信仰の奉仕者であった者たちが、正しく書き残そうとして、すでに多くの人たちが着手をしています。
03 私も一連の出来事を調査したので、尊敬するテオフィロ閣下、ここに順序正しく書いて差し上げましょう。
04 それは、閣下が聞き及んでいる事柄が、事実だっということを知っていただくためなんです。

【洗礼者ヨハネの誕生予告】

05 ユダヤ王ヘロデの時代に、アビヤ組の祭司にザカリアという人がいた。彼の妻は、アロンの子孫でエリザベツ。
06 二人とも神の前に正しく、主のすべての掟(おきて)と法令を厳格に守っていた。
07 彼らには、子供がなかった。エリザベツが不妊症で、二人とも高齢だったからです。
08 ザカリアが自分の組の順番で、神の前で祭司職を務めていたときのこと。
09 祭司職の習慣にで、聖所に入って香を焚いた。
10 群衆はみな香の時刻には、外で祈っていました。

11 天使が現われて、香の祭壇の右側に立った。
12 ザカリアはそれを見てうろたえ、恐れた。
13 天使は「恐れるな。ザカリア。あなたの願いは聞き入れられた。妻エリザベツは、男の子を産むだろう。その子の名をヨハネと付けなさい。
14 あなたには喜びと楽しみがあり、多くの人がその誕生を喜ぶだろう。
15 その子は主の前で、大いなる者となる。ぶどう酒や酔っぱらう飲み物を飲まず、母の胎にいるときから、聖霊に満たされている。
16 そして、多くのイスラエルの民を主に立ち返らせるだろう。
17 エリヤの霊と力をもって、主に先立つだろう。父の心を子供に立ち返らせ、不従順な者たちを義人の知恵に立ち返らせる。心の準備ができた民を、主のために備えるために」と言った。

18 ザカリアは聞いた「なぜそんなことが信用できるのでしょうか? 私も妻も、すでに老人なんです」
19 天使は答えた「私はガブリエル。神の前に立つ者。私は、この良い知らせを伝えるために遣わされた。
20 あなたは、私の言葉を信じなかったから、事が起きるその日まで声が出ず、ものが言えなくなる」

21 群衆は、外でザカリアを待っていた。でも、中で何を手間取っているのかが、わからなかった。
22 ザカリアは、出て来た。彼は唖(おし)になっていた。皆は、ザカリアが聖所で幻を見たのだと思った。彼は手まねをするだけで、口がきけないままだったからだ。

23 その奉仕の日々が過ぎ、彼は自分の家に帰った。
24 やがて、妻のエリザベツは身ごもり、五か月の間身を隠していた。
25 そして言った「主は、子が産めないという恥を取り去るために、私にも目をかけてくださいました」

【マリアへのお告げ】

26 その6か月後に、ガブリエルはガリラヤのナザレに来た。
27 ダビデ家のヨセフと婚約をしていた処女マリアのもとに遣わされたのである。
28 天使は言った「お喜び。大いに恵まれた者よ。主があなたと共にいる。あなたは幸いな人だ!」

29 彼女はひどく動転し、いったいこれは何を意味するのだろうと考えた。
30 天使は続けた「恐れてはいけない。マリア。あなたは神からの恵みを得たのだ。
31 あなたは身ごもって、男の子を産むだろう。その名を『イエス』と付けなさい。
32 その子は偉大になり、いと高き方の子と呼ばれるだろう。主は彼に、父ダビデの王座を与えます。
33 そして、彼はヤコブ家を永久に支配する。彼の王国には、終わりがないだろう」

34 マリアは言った「どうしてそんなことが起こるのでしょうか? 私は処女ですのに!」
35 天使は答えた「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたを影で覆う。それゆえに、あなたから生まれる聖なる者は、神の子と呼ばれる。
36 あなたの親族エリザベツも、老齢で男の子を宿している。不妊と呼ばれていた彼女も、6か月目になった。
37 神に、できないことはない」
38 マリアは言った「私は主の女召使いです。あなたのお言葉どおりになりますように!」
 天使ガブリエルは、彼女から去って行った。

【マリアはエリザベツを訪問する】

39 マリアは用意をして、急いで山岳地帯ユダの町に行った。
40 ザカリアの家に入って、エリザベツに挨拶をした。
41 エリザベツがマリアの声を聞くと、胎内で赤子が飛び跳ねた。そして、エリザベツは聖霊に満たされた。

42 エリザベツは、大声で叫んだ「女の中で、あなたは幸いな人。あなたの胎の実も幸いなもの!
43 私は、なぜこれほど恵まれているのでしょう? 主の母が、私のもとに来てくださるとは。
44 ご覧なさい。あなたの声が私の耳に入ったときに、私の胎内の赤ちゃんは喜んで飛び跳ねました。
45 おお幸せだ。主が語った事柄は、実現するのですから!」

46 マリアは、言った「私も、主を讃えます。
47 私の霊は、救い主なる神を喜びます。
48 卑しい身分の女召使いに目をとめてくださったからです。ご覧ください。これからは、人々が私を幸せ者と呼ぶでしょう。

49 全能な方が、私のために偉大なことをなさったからです。
50 その哀れみは世々にわたり、その方を恐れる人々の上にあるでしょう。
51 主は力を示しました。心の想いの高慢な者たちを散らします。
52 君主たちを、その座から引き降ろしました。そして、身分の低い者たちを高くしました。
53 飢えた者を、満たしました。富んだ者たちには、何も持たせないで帰らせました。
54 哀れみを忘れないために、自分の召使いイスラエルに助けを与えました。
55 私たちの先祖、アブラハムとその子孫に語ったとおりに!」

56 マリアはエリザベツのもとに三か月ほど滞在し、それから自分の家に帰った。

【洗礼者ヨハネの誕生】

57 エリザベツの出産する時がきて、男の子を産んだ。
58 隣人や親族は、主が彼女のために哀れみをくださったと聞いて、彼女とともに喜んだ。
:59 八日目のこと、人々が幼子に割礼を施すためにやって来た。そして、彼を父の名に因(ちな)んで「ザカリア」と名付けようとした。

60 母エリザベツは「それはいけません『ヨハネ』と名付けます」と言う。
61 回りの人々は、彼女に「あなたの親族の中で、その名の者は誰もいません」と言った。
62 人々は、父ザカリアに向かって子を何と名付けるかと、手まねでもって尋ねた。
63 彼は、書き板に「ヨハネ」と書いた。それで、人々は驚いてしまった。

64 その瞬間にザカリアの口は開き、舌は解かれた。そして、話すことができるようになった。彼は、神を賛美した。
65 近くに住む人々には、恐れが生じた。この話は、ユダヤの山岳地帯のあらゆる所に広まった。
66 聞いた者たちは、それを自分の心に留めて「この子は、いったい何になるのだろうか?」と言った。主の手が、その子と共にあった。

【ザカリアの預言】

67 父ザカリアは、聖霊に満たされて、預言をした。
68 「イスラエルの主が、賛美をされるように。その民に目を向けて、解放をしたからだ。
69 召使いダビデの家に、私たちのための救いを起こした。
70 古くから、聖なる預言者たちの口によって、語られているとおりに。
71 私たちの敵から、また私たちを憎むすべての者の手から、救い出すように。

72 私たちの父祖たちに哀れみを示し、その聖なる契約を忘れないために。

73 私たちの父祖アブラハムに立てた誓いを忘れずに、
74 私たちを敵の手から解き放ち、恐れることなくその方に仕え、
75 私たちの命の日々の限り、神聖さと義のうちに、その前で仕えることができる。

76 そして子供よ、お前はいと高き方の預言者と呼ばれるだろう。お前は主に先だって行き、その道を整える。
77 その民に、罪の許しによる救いの知識を与えることになるからだ。

78 それは、私たちの神の優しい哀れみによる。その哀れみによって、夜明けが上から私たちに訪れる。
79 闇と死の陰に座る者たちを照らし、私たちの足を平和の道に導くだろう」

80 幼子は成長し、精神も強くなっていった。そして、イスラエルに出現する日まで、荒野で暮らした。


第二章


【イエスの誕生】

01 すべての人は住民登録をしなさいという布告が、カエサル=アウグストゥスから出た。
02 これは、クィリニウスがシリアの総督だったときに行なわれた最初の登録である。
03 人々は登録をするために、それぞれ自分の町に向かった。
04 ヨセフもナザレの町を出て、ガリラヤからユダヤに行き、ベツレヘムというダビデの町に入った。彼はダビデ家に属し、その一族だったからである。
05 すでに妊娠をしていたマリアと一緒に登録をするためであった。

06 彼らがそこにいる間に、出産日が来てしまった。
07 彼女は初子を産み、布の帯でくるんで、馬小屋の飼い葉おけの中に横たえた。宿屋が、いっぱいだったからである。

【天使が羊飼いたちに現れる】

08 その地方では、羊飼いたちが野宿をしながら、夜は羊の群れの番をしていた。
09 天使が彼らのそばに立ち、主の栄光が彼らの周りで輝いた。彼らは、恐れた。
10 天使は、彼らに言う「恐れるな。私はあなたたちに、あらゆる民にとって大きな喜びとなる良い便りを告げる。
11 今日、ダビデの町で、あなたたちの救い主、主なるキリストが生まれた。
12 これが、あなたたちに対する徴(しるし)。布の帯にくるまり、飼い葉おけに横たえられている赤子を見るだろう」
13 突然、天の大軍勢が、その天使と共に神を賛美して言う。
14 「いと高き所は栄光が神に、地上には善意の人に平和が」

15 天使たちが帰ったとき、羊飼いたちは互いに言った「さあ、ベツレヘムに行って、いま知らされた出来事を見よう」
16 急いでやって来て、マリアとヨセフ、そして飼い葉おけに横たわる赤子を見た。
17 これを見た羊飼いたちは、この子供について天使が話した言葉を広めた。
18 それを聞いた者たちは、羊飼いたちによって自分たちに語られたことを不思議に思った。
19 マリアは、これらのことをよく考えながら、すべての言葉を自分の心にとどめた。
20 羊飼いたちは、自分たちが見聞きしたことが天使の話どおりだったので、神に栄光をささげ、賛美しながら戻って行った。

【割礼と儀式】

21 子供の割礼のための八日になると、名をイエスとした。胎内に宿る前に、天使によって与えられた名である。
22 モーセの律法による清めの日々が終わると、父母は子をエルサレムに連れていく。主に、捧げるため。
23 律法に「初めて生まれる男子は、主にとって聖なる者と呼ばれなければならない」と書かれているからである。
24 また「一つがいのコキジバトか二羽のハト」を犠牲として捧げるためであった。

【シメオンの賛美】

25 エルサレムに、シメオンという名の人がいた。この人は正しく敬虔な人で、イスラエルの慰めを待ち望んでいた。シメオンの上には、聖霊があった。
26 彼は「主のキリストを見るまでは、死を見ることはない」と、聖霊に言われていた。
27 霊に導かれて神殿に入ると、両親が幼子イエスを律法の慣習どおりに行なうために連れて来ていた。
28 シメオンは、幼子を両腕に抱き取り、神を賛美して言った。

29 「今こそ、ご自分の召使いを死なせてくださいます。主よ、あなたのお言葉どおり、平安のうちに。
30 私の両目は、主の救いを見たからです。
31 主が、すべての民の面前に備えられた救いを。
32 異邦人たちを照らす啓示の光、またご自分の民イスラエルの栄光を」

【シメオンの予言とアンナの預言】

33 ヨセフ夫妻は、シメオンが語る内容を不思議に思った。
34 シメオンは彼らを祝福し、マリアに言った「この子はイスラエルの多くの人を倒したり、起き上がらせるために、また敵対を受けるように定められています。
35 剣が、あなたの魂を刺し通すでしょう。多くの者の心の思いが、明らかにされるためです」

36 アシェル族のファヌエルの娘で、アンナという女預言者がいた。今は高齢だが、処女のときから七年間夫と共に暮らした。
37 八十四歳の今になるまで、寡婦(やもめ)であり、神殿を離れずに、夜も昼も断食と祈願をしていた。
38 ちょうどその時刻に、彼女は主に感謝をささげ、エルサレムの救いを待ち望んでいる人々に、その子について語り始めた。

【イエスは教師と問答する】

39 主の律法に基づいたすべての事柄を成し遂げると、彼らはガリラヤの自分たち町ナザレへ戻って行った。
40 幼子は成長し、霊において強くなってゆき、知恵に満たされた。神の恵みが、その上にあった。
41 両親は、過ぎ越しの祭りのときには、毎年エルサレムに行った。

42 イエスが十二歳のとき、祭りの習慣に従って、エルサレムに行った。
43 祭りの日々が終わって、帰るときのことである。イエスは、エルサレムに残っていた。しかし、ヨセフとその妻は、それを知らなかった。
44 イエスが一緒にいるとばかり思い、一日分の道のりを行ってから、親族や知人たちの中を探した。

45 しかし、イエスは見つからなかった。そこで、探しながら再びエルサレムに戻った。
46 三日後に、神殿の中で彼を見つけた。イエスは教師たちの真ん中に座り、彼らの話すことを聞いたり、彼らに質問をしたりしていた。
47 彼の話すことを聞いた人々は皆、その理解力と答えとに驚いていた。

48 両親は、彼を見て驚いた。母は、言った「息子よ、なぜ私たちにこんなことをしたのですか。あなたのお父さんと私は、心配しながらあなたを探していたのです」
49 イエスは、両親に言った「なぜ私を探したのですか。私が、自分の父の家にいるということをご存じなかったのですか?」
50 父母は、イエスが自分たちに語った言葉の意味を理解できなかった。

51 それから皆は共に下って行き、ナザレに来た。イエスは父母に従ったが、母はこれらすべての言葉を自分の心にとどめた。
52 イエスは、知恵と背丈においても、また神と人からの好意においても、増していった。


第三章


【洗礼者ヨハネの説教】

01 ティベリウス=カエサルの治世の第十五年、ポンティウス=ピラトがユダヤの総督、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟フィリポがイトゥリアとトラコニティスの領主、リュサニアスがアビレネの領主。
02 アンナスとカイアファスが大祭司であったころ、神の言葉が荒野で、ザカリアの子ヨハネに臨んだ。
03 彼は、ヨルダン周辺の全地方に行って、罪の許しのための悔い改めの洗礼を告げていた。

04 預言者イザヤの言葉の書の中に書かれているとおりである。「荒野で叫ぶ者の声がする『主の道を整えよ。その道筋をまっすぐにせよ。
05 すべての谷間は、埋められる。すべての山と丘とは、低くされる。曲がったところはまっすぐにされ、でこぼこの道は平らにされる。
06 すべての肉なる者は、神の救いを見るだろう』」

07 ヨハネは、洗礼を受けようとして来た群衆に言った「マムシの子孫よ、来ようとしている憤りから逃れようと、誰があなたたちに告げたのか。
08 悔い改めにふさわしい実を結ぶがよい。『我々の父にアブラハムがいる』などと、自分の内で言い始めてはいけない。あなたたちに告げるが、神はこれらの石からでもアブラハムに子孫を起こすことができるのだ。
09 斧は、すでに木々の根もとに置かれている。良い実を生み出さない木は切り倒されて、火の中に投げ込まれるのだ」

【群衆・徴税人・兵士たちの質問】

10 群衆は、彼に尋ねた「私たちは何をすればよいのですか?」
11 ヨハネは、答えた「二枚の上着を持っている者は、持っていない者に与えなさい。食物を持っている者も、同じようにしなさい」

12 徴税人たちも洗礼を受けに来て、彼に言った「先生、私たちは何をすればよいのですか?」
13 彼は、言った「自分に定められたよりも多くを取り立ててはいけない」

14 兵士たちも、彼に尋ねて言った「私たちについてはどうですか。私たちは何をすればよいのですか?」
 彼は、言った「人から乱暴にゆすり取ったり、不当に非難したりしてはいけない。自分の給料で満足しなさい」

【ヨハネの言葉とイエスの洗礼】

15 民は待ち望んでいたので、すべての者がヨハネについて、彼がキリストなのではないかと考えていた。
16 しかし、ヨハネは皆に答えた「私は確かに、あなたたちに水で洗礼を施している。しかし、私より強力な方が来る。私は、その方の履き物の紐(ひも)をほどくにも値しない。その方は、あなたたちに聖霊と火で洗礼を施すだろう。
17 箕(み)がその手にあり、その脱穀場をすっかりきれいにし、小麦を倉に集め、籾殻(もみがら)は消すことのできない火で焼き尽くすだろう」

18 こうして、ヨハネは他にも多くのことを勧めながら、民に良い便りを告げた。

19 領主ヘロデは、自分の兄弟の妻ヘロディアに関して、またヘロデが行なったすべての悪いことに関して、彼に戒められていた。
20 それらのすべての悪事に加えて、ヘロデはさらにヨハネを牢屋に閉じ込めたのである。

21 民が洗礼を受けていたときに、イエスも洗礼を受けた。そのときに祈っていると、天が開けた。
22 聖霊がハトのような姿で彼の上に下った。そして、天から声が聞こえた「あなたは私の愛する子、私の心にかなう者である」

【イエスの系図】

23 イエス自身は、教え始めたときおよそ三十歳。人々は、イエスをヨセフの子と思った。そして、ヨセフはヘリの子。
24 さかのぼって、マタトの子、レビの子、メルキの子、ヤナイの子、ヨセフの子。
25 マタティアの子、アモスの子、ナウムの子、エスリの子、ナガイの子。
26 マアトの子、マタティアの子、セメインの子、ヨセフの子、ユダの子。
27 ヨハナンの子、レサの子、ゼルバベルの子、シャルティエルの子、ネリの子。
28 メルキの子、アディの子、コサムの子、エルモダムの子、エルの子。
29 ヨサの子、エリエゼルの子、ヨリムの子、マタトの子、レビの子。
30 シメオンの子、ユダの子、ヨセフの子、ヨナンの子、エリアキムの子。
31 メレアの子、メナンの子、マタタの子、ナタンの子、ダビデの子。
32 エッサイの子、オベドの子、ボアズの子、サルモンの子、ナフションの子。
33 アミナダブの子、アラムの子、ヨラムの子、ヘツロンの子、ペレツの子、ユダの子。
34 ヤコブの子、イサクの子、アブラハムの子、テラの子、ナホルの子。
35 セルグの子、レウの子、ペレグの子、エベルの子、シェラの子。
36 カイナンの子、アルパクシャドの子、セムの子、ノアの子、レメクの子。
37 メトセラの子、エノクの子、ヤレドの子、マハラルエルの子、カイナンの子。
38 エノスの子、セツの子、アダムの子、そして神の子であった。


第四章


【イエスの試練=悪魔の誘惑】

01 イエスは、聖霊に満ちてヨルダンから戻った。それから、霊によって荒野の中を連れて行かれた。
02 そこで、四十日にわたって悪魔の誘惑を受けた。それらの日々の間、何も食べなかった。その期間が終わると、空腹を感じた。
03 悪魔は、言った「もしも、あなたが神の子なら、この石がパンになるように命じなさい」

04 イエスは、答えて言った「『人はパンだけで生きるのではない。神のすべての言葉による』と書いてある」

05 悪魔は、イエスを高い山の上に連れて行き、またたく間に世のすべての王国を見せた。
06 悪魔は、言った「このすべての権力と栄光をあなたに与えよう。それは私のものであり、私は望む者にそれを与えることができる。
07 もしも、あなたが私を拝むなら、すべてはあなたのものになるだろう」
08 イエスは、答えた「サタンよ、去れ! 『あなたの神を崇拝しなければならず、その方だけに仕えなければならない』と書いてあるからだ」

09 悪魔は、彼をエルサレムに連れて来て、神殿の高い所に立たせた。そして、言った「もしあなたが神の子なら、ここから飛び降りろ。
10 こう書いてあるからだ。『神は、ご自分の天使たちに指示をお与えになり、あなたを守るだろう』
11 『彼らはその手であなたを支え、あなたが石に足を打ちつけることのないようにする』」
12 イエスは、答えて言った「『あなたは、あなたの神を試みてはならない』とも書いてある」

13 悪魔はすべての誘惑を終え、別のときが来るまで彼から離れた。

【イザヤの書を読む】

14 イエスは、霊の力のうちにガリラヤに戻った。彼についての知らせは、周囲のすべての地方に広がった。
15 多くの人から栄光を与えられ、彼らの会堂で教えた。

16 自分が育ったナザレに来た。安息日に習慣どおりに会堂に入り、朗読のために立ち上がった。
17 預言者イザヤの書が彼に手渡された。彼はその書を開き、こう書かれている箇所を見つけた。
18 「主の霊が私の上にある。貧しい者たちに良い便りを告げるために、私に油を注いでくださったからだ。主は私を遣わされた。
 心の打ち砕かれた者たちを癒すため。捕らわれた者たちに解放を告げるため。目の見えない者たちに視力の回復を告げるため。圧迫されている者たちを解放するため。
19 そして、主の受け入れる年を告げるために」

20 その書を閉じ、それを係の者に返して、腰を下ろした。会堂にいる皆の目が、彼に注がれた。
21 イエスは、彼らに告げた「この聖句は、あなたたちが耳にしたこの日に果たされた」

【故郷におけるイエス】

22 皆は彼について良い証言をし、彼の口から出てくる数々の恵み深い言葉に驚いた。そして、言った「これは、ヨセフの子ではないか?」
23 イエスは、言った「あなたたちは、きっとこの喩えを私に告げるだろう『医者よ、自分自身を治せ! カペナウムでなされたと聞いたことすべてを、ここ、あなたの故郷でもやってくれ』」

24 彼は、言った「本当に、はっきりとあなたたちに告げる。自分の故郷で受け入れられた預言者はいない。
25 あなたたちに告げるが、エリヤの日々、天が三年と六か月間、閉じられて大飢饉(ききん)が全地を襲ったとき、イスラエルには多くの寡婦(やもめ)がいた。
26 エリヤは、そのうちの誰のもとにも遣わされず、ただシドンのザレファツに、寡婦である一人の女の所にだけ遣わされた。
27 預言者エリシャのときに、イスラエルには多くのらい病人がいたが、彼らのうち一人も清められず、ただシリア人ナアマンだけが清められた」

28 これらの事柄を聞いて、会堂にいた連中は皆、憤りを感じた。
29 立ち上がって、彼を町の外に投げ出し、彼らの町の建っている丘の崖まで連れて行き、彼を絶壁から投げ落とそうとした。
30 しかしイエスは、彼らの真ん中を通り抜けて、去って行った。

【悪霊憑きを治す】

31 ガリラヤの町カペナウムに行った。そして、安息日に彼らを教えた。
32 人々は、彼の教えに驚いた。その言葉には、権威があったからである。
33 会堂には、汚れた悪霊(あくりょう)に憑(つ)かれた男がいて、大声で叫んだ。
34 「ああ! ナザレ人イエスよ、私たちとは何のかかわりがあるのか? 私たちを滅ぼしに来たのか? 私はあなたが誰だか知っている。神の聖なる方だ!」

35 イエスは、悪霊を叱りつけた「黙れ。この人から出て行け!」 すると悪霊は、その人を投げ倒して傷を負わせずに彼から出て行った。
36 すべての者が驚いて、互いに語り合った「この言葉は、いったい何だ。汚れた霊に、権威と力をもって命じる。すると、彼らはこの人から出て行くのだ!」

37 彼についての知らせは、周囲の地方すべてに伝わった。

【シモンの姑の治療】

38 イエスは会堂から立ち上がり、シモンの家に入った。シモンの姑(しゅうとめ)が、高い熱で苦しんでいた。人々は、彼女のことでイエスに懇願をした。
39 彼は、彼女のそばに立って、熱を叱りつけた。すると、熱は引いた。すぐに、彼女は起き上がって、彼らに仕えた。

【病人たちの治療】

40 日が沈むと、さまざまな疾患を持つ病人を抱えている者たちが皆、彼らをイエスのもとに連れて来た。彼は、その一人一人の上に両手を置いて癒した。
41 悪霊たちも「あなたは、神の子キリストだ!」と叫びながら、多くの人々から出て来た。イエスは彼らを叱りつけ、悪霊が語ることを許さなかった。彼らは、イエスがキリストだと知っていたからである。

42 朝になるとイエスは出発し、人の住んでいない場所に行った。しかし、群衆が彼を探し回り、彼のもとにやって来た。そして、自分たちのところから去って行かないように、彼を引き留めた。
43 イエスは、言った「私は、他の町々にも神の王国の良い便りを告げなければならない。私は、そのために遣わされている」
44 そして、ガリラヤの諸会堂を回って、告げていた。


第五章


【大漁の奇跡】

01 群衆がイエスに押し迫って、神の言葉を聞いていた。彼は、ゲネサレ湖の畔(ほとり)に立っていた。
02 そこで、湖畔(こはん)に二艘(二そう)の舟があるのを目にした。漁師たちは舟から下りて、網を洗っていた。
03 その一艘のシモンの舟に乗り込み、陸から少し漕(こ)ぎ出すように言った。そして、舟に腰を下ろして、群衆を教えた。

04 語り終えると、シモンに言った「深いところに漕ぎ出して、あなたたちの網を下ろしなさい」
05 シモンは、言った「先生、私たちは夜通し働いても、何も取れませんでした。でも、あなたのお言葉ですから、網を下ろしてみます」
06 実際に行なうと、魚の大群が入っていて、網が裂け始めた。
07 彼らは他の舟にいる仲間たちに、自分たちの手助けをするように合図を送った。仲間らが来て、両方の舟をいっぱいにしたので、舟が沈み始めた。

【最初の三人の弟子】

08 シモン=ペトロはこれを見て、イエスにひれ伏して言った「主よ、私から離れてください。私は罪深い男です」
09 自分たちが捕った魚の多さに、彼も、彼と共にいた者も、びっくりしたからである。
10 また、シモンの仲間であったゼベダイの息子たち、すなわちヤコブとヨハネも同じであった。イエスは、シモンに言った「恐れてはいけない。今からのち、あなたは人々を捕るだろう」

11 彼らは、自分たちの舟を陸に着けると、すべてを残して彼に従った。

【らい病人を治す】

12 彼が、ある町にいくと、全身らい病の男がいた。イエスを見ると、顔を地に伏せて、彼に懇願して言った「主よ、あなたがお望みになれば、私を清くすることがおできになります」
13 イエスは、手を伸ばして彼に触り、こう言った「私はそう望む。清くなりなさい」 すぐに、らい病は彼から去った。
14 イエスは彼に、誰にも言わないように命じた「ただ行って、自分の体を祭司に見せ、あなたの清めのためにモーセの命じたとおりに捧げ物をしなさい。人々への証明のためだ」

15 しかし、彼についての知らせは広まっていった。話を聞くために、また自分たちの病弱さを彼に癒してもらうために、大群衆がやって来た。
16 彼は、寂しい所に引きこもり、祈っていた。

【中風の治療】

17 ある日、彼が教えていると、パリサイ人と律法学者たちとが座っていた。ガリラヤとユダヤとの村々およびエルサレムから出て来た者たちもいた。人々を癒すために、主の力がイエスと共にあったからである。
18 男たちが彼のもとに、体の麻痺した人を寝床に載せたまま運んで来た。そして、その人を運び込んでイエスの前に横たえようとした。
19 だが、群衆がいたので運び入れることができない。そこで、屋上に上って瓦をはがし、そこから寝床をイエスの真ん前に下ろした。
20 イエスは彼らの信仰を見て、体の麻痺した人に言った「人よ、あなたの罪は許された」

【律法学者とパリサイ人たちのいちゃもん】

21 すると、律法学者とパリサイ人たちは、論じ始めた「冒涜(ぼうとく)を語るこの人は、誰なのか。神の他、誰が罪を許せるだろうか?」

22 イエスは、彼らの考えに気づいて答えた「なぜ、あなたたちは心の中でそのように論じているのか。
23 『あなたの罪は許されている』と告げるのと、『起き上がって歩きなさい』と言うのでは、どちらが簡単か?

24 人の子が、地上で罪を許す権威を持っていることをあなたたちが知るために」 体の麻痺した人に言った「あなたに告げる。起き上がって、寝床を取り上げ、自分の家に帰りなさい」
25 男は、すぐに人々の前で起き上がり、自分が横たわっていた床を取り上げた。そして、神に栄光を捧げながら、自分の家に帰って行った。
26 すべての者が驚いて、神に栄光を捧げた。彼らは、恐れに満たされて言った「今日は、不思議なことを見た」

【レビ=マタイの召し出し】

27 イエスは出て行き、収税所に座っているレビ(=マタイ)という名の徴税人に「私に従いなさい!」と言った。
28 すると、彼はすべてを残し、立ち上がってイエスに従った。

29 レビは、イエスのために自分の家で大きな祝宴を催した。徴税人たちやほかの者たちの大群衆が、彼らと共に横になっていた。
30 律法学者とパリサイ人たちは、イエスの弟子たちに対して不平を言った「なぜあなたたちは、徴税人たちや罪人たちと共に、食べたり飲んだりするのか?」
31 イエスは、答えた「健康な人たちに医者は必要なく、病気の人たちに必要なのだ。
32 私は義人たちではなく、罪人たちを悔い改めへ呼ぶために来た」

【断食について】

33 律法学者とパリサイ人たちは、イエスに言った「ヨハネの弟子たちは、しばしば断食と祈りをし、パリサイ人の弟子たちも同じようにしている。しかし、あなたの弟子たちは食べたり、飲んだりばかりしているのはなぜか?」

34 イエスは、言った「あなたたちは、花婿(はなむこ)の友人たちに、花婿が共にいるのに断食をさせられるだろうか?
35 だが、花婿が彼らから取り去られる日々が来る。その日々には、彼らも断食をするだろう」

【布とブドウ酒の喩え】

36 イエスは、喩(たと)えをもって彼らに語った「新しい衣から割(さ)いた布を、古い衣に当てる人はいない。そんなことをすれば、新しい衣が破けてしまう。新しい衣から取った布は、古い衣には合わないだろう。

37 新しいブドウ酒を、古い皮袋に入れる人はいない。そんなことをすれば、新しいブドウ酒は皮袋を破裂させ、ブドウ酒は流れ出てしまって皮はだめになるだろう。
38 新しいブドウ酒は、新しい皮袋に入れるべきだ。そうすれば、どちらも長持ちする。

39 古いブドウ酒を飲んで、すぐに新しいブドウ酒を欲しがる者はいない。その者は『古いのが良い』と言うからだ」


第六章


【安息日における麦の穂】

01 ある安息日に、イエスたちは穀物畑の中を通り抜けていた。弟子らは麦の穂を摘み、両手でこすり合わせて食べ始めた。
02 パリサイ人たちが、言った「なぜあなたたちは、安息日に許されていないことをするのか?」

03 イエスは、答えて言った「ダビデが、自分や家来たちが空腹だったときに、何をしたか。あなたたちは一度も読んだことがないのか?
04 彼が、どのようにして神の家に入り、祭司たちのほかは食べることが許されていない供えのパンを取って食べ、家来たちにも与えたかを」
05 そして、イエスは言った「人の子は、安息日の主なのだ」

【手萎(てな)えを治す】

06 別の安息日に、会堂に入って教えていたときのこと。一人の人がそこにいたが、その右手は萎(な)えていた。
07 律法学者とパリサイ人たちは、イエスが安息日に癒すかどうか、その様子を窺(うかが)っていた。不利な罪状を見つけるためである。
08 イエスは彼らの考えを知って、片手の萎えた人に「起き上がって、真ん中に立ちなさい」と言った。彼は、起き上がって立った。
09 イエスは、言った「あなたたちに尋ねよう。安息日に許されているのは、善を行なうことか、害を加えることか。命を救うことか、殺すことか?」

10 イエスは、彼らすべてを見回してから、手の萎えた人に「あなたの手を伸ばしなさい」と言った。そうにすると、その手はもう一方の手と同じように治った。
11 しかし、律法学者とパリサイ人たちは激怒して、イエスに対して何をしようかと相談をした。

【使徒を選出する】

12 イエスは、祈るために山に行き、夜通し神に祈り続けた。

13 朝になると、弟子たちを呼び寄せた。そして、その中から十二人を選び出した。彼らを、使徒と名付けた。
14 ペトロともいうシモン・その兄弟アンデレ・ヤコブ・ヨハネ・フィリポ・バルトロマイ
15 マタイ・トマス・アルファイオスの子ヤコブ・熱心党と呼ばれたシモン
16 ヤコブの子ユダ・それにユダ=イスカリオト。このユダは、後に裏切り者になった。

17 イエスは、彼らと共に山から下りて、平らな所に立った。弟子たちからなる群衆、全ユダヤとエルサレム、テュロスとシドンの海岸から来た多数の人々が共にいた。彼らがやって来るのは、彼の話を聞くためと自分たちの疾患を癒してもらうためである。
18 汚れた悪霊に悩まされている者もいたが、彼らはすべて癒された。

【地上の説教=山上の説教】

19 群衆は、イエスに触(さわ)ろうとした。イエスから力が出て来て、彼らを癒したからである。

20 彼は弟子たちに向かって、目を上げて言った「貧しいあなたたちは幸いだ。神の王国は、あなたたちのものだから。

21 飢えているあなたたちは幸いだ。あなたたちは満たされるから。今泣いているあなたたちは幸いだ。あなたたちは笑うようになるから。

22 人々があなたたちを憎むとき、人の子のゆえにあなたたちを締め出し、嘲(あざけ)り、あなたたちの名を悪いものと退けるとき、あなたたちは幸いだ。
23 その日には喜んで、飛び跳ねなさい。天において、あなたたちの報いは大きいから。彼らの父祖たちは、預言者たちにも同じようにした。

24 富んでいるあなたたちは災いだ! あなたたちは自分の慰めをすでに受けているから。

25 今満たされているあなたたちは災いだ! あなたたちは飢えるようになるから。今笑っているあなたたちは災いだ! あなたたちは泣き悲しむようになるから。

26 人々があなたたちのことを誉めるときは災い。彼らの先祖は、偽預言者にも同じことをした。

【愛と徳について】

27 ここで、聞いているあなたたちに告げる。敵を愛し、憎む者たちに良いことをする。
28 呪う者たちを祝福し、虐待する者たちのために祈りなさい。
29 あなたの一方の頬(ほお)を打つ者には、反対側の頬も差し出しなさい。外衣を取り去る者には、上着を拒んではいけない。
30 求めるすべての者に与えなさい。そして、持ち物を取り去る者からは、返してもらおうとするな。

31 人からして欲しいと思うことを、人にその通り同じにしなさい。
32 自分を愛してくれる者たちを愛しても、それが何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ、自分を愛してくれる者たちを愛する。
33 自分に良いことをしてくれる者たちに良いことをしても、それが何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ、同じことをしている。

34 返してもらうことを期待して貸しても、それが何の名誉になるだろうか。罪人たちでさえ、取り戻そうとして貸しているのだ。
35 そうではなく、あなたたちの敵を愛し、良いことをし、返してもらうことを期待せずに貸しなさい。そうすれば報いは大きく、あなたたちは、いと高き方の子らになるだろう。その方は、感謝しない悪い者たちにも親切であられるからだ。

【哀れみ深く、裁かずに、与える】

36 だから、あなたたちの父が哀れみ深いように、あなたたちも哀れみ深くなりなさい。

:37 裁いてはいけない、そうすれば裁かれないだろう。罪に定めてはいけない、そうすれば罪に定められることはないだろう。許しなさい、そうすれば許されるだろう。

38 与えなさい、そうすれば与えられるだろう。外套の押しポケット、揺すりポケットに入りきれないほどに、良い秤(はかり)で与えられるだろう。あなたたちが量るその同じ秤で、あなたたちに量り返されるだろう」

【盲人や弟子の喩え】

39 イエスは、彼らに喩えを語った「盲人が盲人を案内できるだろうか。両方とも穴に落ちてしまわないだろうか?
40 弟子はその先生より上ではないが、十分に訓練された弟子はその先生のようになる」

【目の中の塵と丸太】

41 「なぜあなたは、兄弟の目の中にある塵(ちり)は見るのに、自分の目の中にある丸太のことを見ないのか?
42 あなた自身は、自分の目の中にある丸太を見ないのに、どうして『兄弟、あなたの目から塵を取ってやる』などと言えるのか。偽善者よ! まず、自分の目から丸太を取り出しなさい。そうすれば、はっきりと見えるようになって、兄弟の目から塵を取り出すことができるだろう」

【よい木と腐った木】

43 「良い木が、腐った実を生み出すことはない。腐った木が、良い実を生み出すこともない。
44 それぞれの木は、その実によって知られる。人々は、イバラからイチジクを集めることはない。ノバラの茂みから、ブドウを集めることもない。

45 善い者は、自分の心の良い宝の中から良いものを取り出す。悪い者は、自分の心の悪い宝の中から悪いものを取り出す。心に満ちているものの中から、人の口が語るからだ」

【家の土台についての譬喩】

46 「なぜあなたたちは『主よ、主よ』と私を呼びながら、私の言う事柄を行なわないのか?
47 私のもとに来て、私の数々の言葉を聞き、それらを行なうすべての者たちが、何に似ているかを示そう。
48 彼らは、深く掘り下げて岩の上に土台を据えてから、家を建てる人に似ている。洪水が起こり、激流が家に打ち当たったが、それは揺り動かなかった。岩の上に土台を据えていたからだ。
49 しかし、聞いても行なわない者は、土台なしで地面の上に家を建てた人に似ている。激流が打ち当たると、それはすぐに倒れてしまい、損壊はひどいものだった」


第七章


【百人隊長の召し使い】

01 イエスは話を終わると、カペナウムに入って行った。
02 一人の百人隊長に、お気に入りの召使いがいた。その召し使いが、病気で死にかかっていた。
03 百人隊長はイエスについて知ると、そのもとにユダヤ人の長老たちを遣わして、自分の召使いを救ってくれるように頼んだ。

04 イエスのもとに来ると、彼らは真剣に懇願して言った「あの方は、このことをしていただくのにふさわしい人です。
05 私たちの民族を愛し、私たちのために会堂を建ててくれました」

06 イエスは、彼らと共に出かけた。その家からあまり遠くない所まで来たとき、その百人隊長は、友人たちを遣わして言わせた「主よ、お手数をかけるには及びません。私は、自分の屋根の下にあなたをお迎えするほどの者ではないからです。
07 そのために、あなたのもとに伺うことさえ、ふさわしくないと思いました。ただ、お言葉を下さい。そうすれば、私の召使いは癒されるでしょう。
08 私も、権威の下に置かれた者ですが、私の下に兵士たちがいます。私がある者に『行け!』と言えば行きますし、別の者に『来い!』と言えば来ます。また私の召使いに『これをしろ』と言えばそれをします」

09 イエスは、これらの言葉を聞いて驚嘆した。そして、自分に従っている者たちに言った「あなたたちに告げるが、イスラエルにおいて私はこれほどの信仰を見たことがない」
10 遣わされた者たちがその家に戻ると、病気の召使いはよくなっていた。

【ナインの寡婦】

11 イエスは、ナインと呼ばれる町に行った。大勢の弟子たちと大群衆とが、彼に伴っていた。

12 町の門に近づくと、死んだ者が運び出されるところであった。それは、寡婦(やもめ)である母親の一人息子であった。大勢の町の人々が、彼女と共にいた。
13 イエスは彼女を見ると、哀れみを抱いた。そして、彼女に言った「泣いてはいけない」
14 近づいて柩(ひつぎ)に触れると、運んでいる者たちは立ち止まった。イエスは、言った「若者よ、あなたに告げる、起きなさい!」
15 死んでいた者は起き直り、ものを言い始めた。イエスは、彼をその母に渡した。

16 皆は恐れを抱き、神に栄光を捧げて言った「偉大な預言者が、私たちの間に出た!」「神は、この民に目を向けてくださった!」
17 彼に関するこの知らせは、ユダヤ全土および周囲の地域に広がった。

【洗礼者ヨハネの使い】

18 ヨハネの弟子たちは、これらことについて、すべてをヨハネに告げた。
19 ヨハネは、自分の弟子のうちの二人を呼び寄せ、彼らをイエスのもとに遣わして「あなたが来たるべき方なのですか。それとも、私たちは他の方を待つべきでしょうか?」と言わせた。
20 その弟子たちは、イエスのもとに来て言った「洗礼者ヨハネが、私たちを遣わして『あなたが来たるべき方なのですか。それとも、私たちは他の方を待つべきでしょうか?』と申しました」

21 そのときに、イエスは疾患や伝染病や悪い霊から多くの人を癒し、目の見えない多くの人に視力を与えていた。
22 イエスは、答えた「行って、あなたたちが見聞きしたことをヨハネに告げなさい。目の見えない人たちは見えるようになり、足の不自由な人たちは歩き、らい病の人たちは清められ、耳の聞こえない人たちは聞き、死んだ人たちは生き返り、貧しい人たちには良い便りが告げられている。
23 私に背かない者は幸いだ」

【洗礼者ヨハネを誉める】

24 ヨハネの使いの者たちが去って行くと、彼は群衆にヨハネについて告げた「あなたたちは何を見るために、荒野へ出て行ったのか。風に揺れる葦(あし)か?
25 そうでなければ、何を見るために出て行ったのか? 柔らかな衣を着た人か? 豪華に装って、優美に暮らしている者たちなら、王たちの家にいる。

26 なぜ出て行ったのか? 預言者か? そうだ、あなたたちに言うが、預言者よりはるかに優れた者だ。
27 この者こそ、このように書かれている者だ『見よ、私はあなたの面前に私の使者を遣わす。その者はあなたの前に道を整えるだろう』

28 「本当にはっきりとあなたたちに告げる。女から生まれた者の中で、洗礼者ヨハネより偉大な者はいない。だが、神の王国で最も小さな者でも、彼よりは偉大だ」

29 ヨハネの話を聞いた人々は、徴税人たちまでもヨハネの洗礼を受けるて、神の正しさを告げた。
30 しかし、パリサイ人と律法学者たちは、彼から洗礼を受けないことによって、神の計らいを空しくした。

【笛吹けど踊らず】

31 イエスは、言った「私は、この世代の人々を何に喩えようか。彼らは、いったい何に似ているだろうか?
32 彼らは、市場に座って、互いに叫び合っている子供たちに似ている。こう言うからだ『君たちのために笛を吹いたのに、踊ってくれなかった。君たちのために悲しんだのに、泣いてくれなかった』

33 というのは、洗礼者ヨハネがやって来て、パンを食べもせず、ぶどう酒を飲みもしないと、あなたたちは『彼には、悪霊がいる』と言う。
34 人の子がやって来て、食べたり飲んだりすると、あなたたちは『見ろ、大食いの大酒飲み、徴税人たちや罪人たちの友!』と言う。
35 知恵はその実によって、正しいことが証明されるのだ」

【香油を塗る罪の女】

36 パリサイ人の一人が、一緒に食事をするようイエスを招いた。イエスは、そのパリサイ人の家に入り、食卓に着いた。
37 罪人である一人の女がその町にいたが、イエスがパリサイ人の家で横になっていると知ると、香油の入った石膏(せっこう)の壺を持って来た。
38 泣きながら、後ろから彼の足もとに進み寄り、自分の涙で彼の両足を濡(ぬ)らし始め、自分の髪でそれらをぬぐい、その両足に口づけをして香油を塗った。

39 彼を招待したパリサイ人はこれを見て、自分の中で言った「この人がもし預言者なら、自分に触っているこの者が誰で、どんな女なのかが分かるはずだ。罪人だということも」

【パリサイ人シモン】

40 イエスは、彼に答えた「シモン、あなたに言うことがある」 シモンは、言った「先生、おっしゃってください」
41 「ある貸し主に、二人の借り主がいた。一人は五百デナリ、もう一人は五十デナリを借りていた。
42 彼らが返済できないので、彼は彼ら両方の借金を帳消しにしてやった。それでは、彼らのうちどちらが彼を多く愛するだろうか?」
43 シモンは、答えた「多く許されたほうだと思います」 イエスは、彼に言った「あなたは正しく判断した」

44 そして、その女のほうを向き、シモンに言った「あなたは、この女が目に入るか。私があなたの家に入っても、あなたは足を洗う水をくれなかったが、彼女はその涙で、私の両足を濡らし、その髪でぬぐった。
45 あなたは、私に口づけをしてくれなかったが、私が入って来たときから、彼女は私の両足に口づけしてやまなかった。
46 あなたは、私の頭に油を塗ってくれなかったが、彼女は私の両足に香油を塗った。

47 だから、あなたに告げる。彼女の多くある罪は、許されている。彼女が、多く愛したからだ。だが、少ししか許されていない者は、少ししか愛さないのだ」
48 イエスは、女に言った「あなたの罪は、許されている」

49 イエスと共に食卓に着いていた者たちは、自分の中で言い始めた「罪さえ許すこの人は、いったい誰なのだろう?」
50 彼は、その女に言った「あなたの信仰が、あなたを救ったのだ。安心して行きなさい」


第八章


【イエス取り巻きの女たち】

01 イエスは町々や村々を通って行きながら、宣教をした。そして、神の王国の良い便りを伝えた。彼と共にいたのは、十二人。
:02 そして、悪い霊と病弱から癒された何人かの女たちがいた。つまり、七つの悪霊が身体から出て行ったマグダレネと呼ばれるマリア。
:03 ヘロデの管理人クーザスの妻ヨハンナ・スサンナ、そのほか大勢の女たちである。彼女たちは、自分たちの財産をもって、彼らに仕えていた。

【種まきの喩え】

04 大群衆が集まり、人々があらゆる町からイエスのもとに来ていた。彼は、喩えを用いて話した。

05 「ある耕作人が、種をまきに出かけた。種をまいていると、ある種は道ばたに落ちた。空の鳥たちが来て、食べてしまった。
06 別の種は、岩の上に落ちた。すぐに生え出たが、水分がないために枯れてしまった。
07 やはり別の種は、イバラの真ん中に落ちた。しかし、イバラが生え出てふさいでしまった。
08 さらに別の種は、良い土に落ちた。そして、成長をして百倍の実を生み出した」 これらのことを言いながら、彼は叫んだ「誰でも、聞く耳のある者は聞きなさい!」

09 弟子たちは、彼に尋ねた「この喩えは、どんな意味なのですか?」
:10 彼は、言った「あなたたちには、神の王国の秘密を知る奥義(おうぎ)が与えられている。しかし、他の者たちには喩えで与えられる。それは『彼らは、見るには見るが分からず、聞くには聞くが理解しない』からだ。

【種まきの喩えの奥義】

11 この喩えは、こういうことだ。種は、神の言葉。
12 道ばたのものは、み言葉を聞く人たち。しかし、後で悪魔がやって来て、彼らの心から言葉を奪い去るのだ。
13 岩の上のものは、こういう人たちのこと。つまり、言葉を聞くと喜んですぐに受け入れる。だが、根がないのでしばらくは信じても、誘惑のときには離れてしまう。
14 イバラの間に落ちたものは、言葉を聞いた人たち。だが、思い煩いや、富や、人生の快楽でふさがれてしまって、実が熟さない。
15 良い土のものとは、誠実な良い心で言葉を聞き、それを堅く守り、忍耐して実を生み出す人たちのことである。

16 「灯火(ともしび)を灯(とも)してしてから、それを器で覆い隠したり、寝台の下に置く者はいない。入って来る者たちに光が見えるように、それを燭台の上に置く。
17 隠されているもので、明らかにされないものはない。秘密にされているもので、知られず、明るみに出ないものはない。
18 自分が、どのように聞いているかに注意しなさい。持っている者にはさらに与えられ、持っていない者からは、持っているものまでも取り上げられることになる」

【イエスの家族に対する言葉】

19 イエスの母と兄弟たちが、やって来た。しかし、群衆のせいで、傍(そば)に行けなかった。
20 イエスには「あなたのお母さんと兄弟たちが外に立っていて、あなたに会うことを望んでいます」という知らせがあった。

21 しかし、彼は答えた「私の母、また私の兄弟たちとは、神の言葉を聞いて、それを行なうこれらの人たちのことだ」

【舟で嵐に遭う】

22 イエスは、弟子たちと共に舟に乗り込み、彼らに言った「湖の向こう岸に渡ろう」 そこで、彼らは出航した。
23 彼らが漕(こ)いでいる間に、イエスは眠りに落ちた。風が吹き、嵐が湖に吹き下ろしたので、彼らは水びたしになった。危険な状態である。
24 弟子らは、イエスもとに来て起こして言った「先生、先生、私たちは死んでしまいます!」 イエスは起き上がり、吹き下ろす風と荒れ狂う水とを叱りつけた。すると、それらは止(や)んで、凪(な)ぎになった。
25 イエスは、言った「あなたたちの信仰は、いったいどこにあるのか?」 彼らは恐れ驚いて、互いに言い合った「いったい、この方はどなただろう。命じると、風や水さえも従うとは!」

【ゲラサの悪魔憑き】

26 彼らは、ガリラヤの向こう岸にあるゲラサ人たちの地方に着いた。

27 イエスが岸に降り立つと、ずっと悪霊に取りつかれていた一人の男が、町から出て来た。男は服も着ておらず、家にも住まず、墓場にいた。
28 イエスを見ると、叫び声を上げて彼の前にひれ伏し、大声で言った「いと高き神の子イエスよ、私は、あなたと何のかかわりがあるのか? あなたに、お願いする。私を苦しめないでくれ!」
29 イエスが、汚れた霊にその人から出て行くように命じたからである。汚れた霊は、たびたび彼に取りついていた。彼は監視の下に置かれ、足枷(あしかせ)や鎖で縛られていた。だが、枷(かせ)はばらばらに壊されて、悪霊によって寂しい所に追いやられるのであった。

30 イエスは、尋ねた「あなたの名前は、何か?」 彼は、言った「レギオンだ」 多くの悪霊たちが、彼の中に入っていたからである。
31 彼らは、イエスに「自分たちを底なしの深みに行け」とは命じないように懇願した。
32 その山では、たくさんの豚の群れが飼われていた。そこで彼らは、それらの中に入ることを認めてくれるように懇願をした。イエスは、彼らにそのことを許した。
33 汚れた霊は、その人から出て豚たちの中に入った。その群れは、険しい土手を下って湖に突進し、溺れて死んだ。

34 豚飼いたちは、起きたことを見ると逃げ出して、その町とその地方でそのことを知らせた。
35 人々は、出来事を見ようとやって来た。悪霊が出て行った男が、イエスの足もとに座り、服を着て正気でいるのを見たので、彼らは恐れた。
36 見ていた者たちは、悪霊たちに取りつかれていた人が、いったいどのようにして癒されたかを彼らに告げた。
37 周囲のゲラサ地方から来たすべての人々は、自分たちのもとから去ってくれるようにイエスに頼んだ。非常に、イエスを恐れていたからである。
 彼は舟に乗って戻って行った。

38 悪霊が出て行った男は、一緒に行かせて欲しいとイエスに懇願をした。しかし、イエスはこう言って彼を去らせた。
39 「あなたの家に帰り、神があなたのためにどんな大きな事柄をしてくださったかを知らせなさい」 彼は立ち去って、イエスが彼のために何をしたかを町中に広めた。

【ヤイロの娘と出血症の女】

40 イエスが戻ると、群衆は喜んで迎えた。皆が、彼を待っていたからである。
41 ヤイロという会堂長が、やって来た。イエスの足もとにひれ伏して、自分の家に来てくれるよう懇願した。
42 彼には十二歳の一人娘がいたが、その娘が死にかけていたのである。イエスが進んで行くと、群衆が彼に押し迫った。

43 別に、十二年間も出血症を患(わずら)っている女がいた。さまざまな医者のために、全財産を使い果たしたが、誰にも直してもらえなかったのである。
44 この女がイエスの後ろに近づき、その衣の房べりに触った。すると、すぐに彼女の出血は止まった。
45 イエスは、言った「私に触ったのは誰か?」 皆がそれを否定していると、ペトロや彼と共にいた者たちが言った「先生、群衆があなたに迫って押しているのに『誰が触ったか』と言われるのですか?」

46 しかし、イエスは言った「誰かが、私に触ったのだ。力が自分から出て行くので、分かったのだ」
47 女は、隠しきれないのを知ると、おののきながら出て来て、彼の前にひれ伏した。そして、すべての民の面前で彼に触った理由と、自分がどのようにして直ちに癒されたかを知らせた。
48 イエスは、彼女に言った「娘よ、元気を出しなさい。あなたの信仰が、あなたをよくした。平安のうちに行きなさい」

【ヤイロの娘が生き返る】

49 彼がまだ話しているうちに、会堂長の家から使いが来た。そして、会堂長に言った「あなたの娘さんは、亡くなりました。先生を煩わすには及びません」
50 イエスはそれを聞いて、会堂長に答えた「恐れることはない。ただ信じなさい。そうすれば、彼女は癒される」

51 その家にやって来てイエスは、ペトロ・ヨハネ・ヤコブ、そして子供の父と母のほかは、誰も中に入ることを許さなかった。
52 皆が泣いたり、彼女のために嘆いたりしていた。彼は、言った「泣かなくてもよい。彼女は死んだのではなく、眠っているのだ」

53 人々は、彼女が死んでいるのを知っていたので、イエスを嘲笑(あざわら)った。
54 彼は皆を外に出し、彼女の手を取って「子供よ、起きなさい!」と呼びかけた。
55 彼女の霊は戻り、彼女はすぐに起き上がった。彼は、何か食べ物を与えるようにと命じた。
56 彼女の両親は、びっくりした。彼は、ここで起こったことを誰にも告げないようと、彼らに命じた。


第九章


【使徒たちの派遣】

01 イエスは、十二人を呼び集めた。彼らに、悪霊たちに対する力と、さまざまな疾患を治すための力とを与えた。
02 そして、神の王国を告げながら、病気を癒すために彼らを遣わした。
03 彼らに言った「旅のために、何も持って行かないように。杖・袋・パン・お金・二枚の上着も持ってはいけない。
04 どこでも家に入ったなら、そこに止まり、そこから出発しなさい。
05 人々があなたたちを受け入れないなら、その町から出発するときに、彼らに対する証言のため、両足から塵(ちり)を払い落としなさい」

06 彼らは出かけて行き、至る所で福音を告げた。病気を癒しながら、村から村を経巡(へめぐ)って歩いた。

【ヘロデの当惑】

07 領主ヘロデは、イエスが行ったすべてのことを聞いて、ひどく当惑した。なぜならば、ある人々はヨハネが死んだ者たちの中から生き返ったと言っているからである。
08 また別な人々は、エリヤが現れたと言う。さらに別の人々は、昔の預言者たちの一人が生き返ったとも言っている。
09 ヘロデは、言った「ヨハネなら、私が首をはねた。だが、私がこうしたうわさを聞くこの者は、いったい誰なのだろう?」 彼は、一度イエスを見たいと思った。

【五つのパンと二匹の魚との奇跡】

10 使徒たちは、戻って来た。そして、自分たちが行なったことをイエスに報告した。イエスは彼らを連れて、ベツサイダと呼ばれる町の寂しい場所へ、自分たちだけで引きこもった。
11 群衆はそれに気づき、付いてきた。イエスは彼らを喜んで迎え、神の王国について彼らに語った。また、癒しを必要としていた者たちを治した。

12 日が傾き始めたので、十二使徒がやって来て言った「群衆を去らせて、彼らが周りの村や農園に行って宿を取り、食べ物を得るようにさせてください。私たちは、こんな寂しい場所にいるのですから」

13 イエスは、彼らに答えた「あなたたちが、彼らに食べ物を与えなさい」 使徒たちは、言った「私たちには、五つのパンと二匹の魚しかありません。私たちが行って、この人々すべてのために食べ物を買い出しでもしない限りは」
14 というのは、およそ五千人の男たちがいたからである。彼は、弟子たちに言った「彼らを五十人ぐらいずつ組にして、座らせなさい」
15 使徒らは、そのようにして、皆を座らせた。

16 イエスは、五つのパンと二匹の魚を取り、天を見上げて祝福をしてからパンを裂き、弟子たちに渡して群衆の前に置かせた。
17 皆は食べて、満ち足りた。彼らは、残ったパン切れを十二の籠(かご)に集めた。

【ペトロのイエスに対する「神」宣言】

18 イエスが一人で祈っていたとき、弟子たちが共にいた。イエスは、彼らに尋ねた「群衆は、私を誰だと言っているか?」
19 彼らは、答えた「『洗礼者人ヨハネ』 ほかの者たちは『エリヤ』とも言い、さらにほかの者たちは昔の預言者の一人が生き返ったのだと言っています」

20 彼は、続けて言った「だが、あなたたちは私を誰だと言うのか?」 ペトロが、答えた「神のキリストです」

21 イエスは彼らを戒め、このことを誰にも告げないようにと命じた。
22 そして、こう言った「人の子は多くの苦しみを受け、長老・祭司長・律法学者たちから退けられ、さらに殺され、その三日後には生き返らなければならない」

【弟子の中に死を味わわない者がいる】

23 イエスは、皆に言った「誰でも私に付いて来たいと望むなら、その人は自分を否定し、自分の十字架を背負って、私に従いなさい。
24 自分の命を救いたいと望む者は、それを失うことになる。私のために自分の命を失う者は、それを救うことになるからだ。
::25 人が全世界を手に入れても、それによって自分自身を失ったり、奪われたりするなら、いったい何の益になるだろうか。

26 私自身と私の言葉を恥じる者は、人の子もまた、自分の栄光、また父と聖なる天使たちとの栄光のうちに来るとき、その者を恥じるだろう。
27 まことに、私は告げる。ここに立っている者の中には、神の王国を見るまでは、決して死を味わわない者たちがいる」

【モーセ・エリアと話をしたイエス】

28 これらの話の八日後、彼はペトロ・ヨハネ・ヤコブを伴い、祈るために山に上った。
29 彼が祈っていると、顔の様子が変わって、衣服は目もくらむほど白くなった。
30 見ると、二人の人がイエスと語り合っていたが、何とそれはエリヤとモーセだった。
31 栄光のうちに現われて、彼がエルサレムで遂げることになる死のことについて話していたのである。

32 ペトロたちは、ひどく眠かった。しかし、すっかり目を覚まして、イエスの栄光と共に立っている二人の人を見た。
33 二人がイエスから去って行くとき、ペトロが言った「先生、私たちがここにいるのは、素晴らしいことです。幕屋を三つ作りましょう。一つはあなたのため、一つはモーセのため、一つはエリヤのためにです」 ペトロは、自分が何を言っているのかが分からなかった。

34 これらのことを話しているうちに、雲が起こって、彼らを影で覆った。雲の中に入ったとき、弟子たちは恐れた。
35 その雲から、声がした「これは、私の愛する子。この者に、聞き従いなさい!」
36 声がしたときには、イエスだけがそこにいた。彼らは沈黙を守り、見た事柄をその当時は誰にも告げなかった。

【てんかんを治す】

37 次の日、彼らが山から下りて来ると、大群衆が迎えた。
38 群衆の中から、一人の男が大声で言った「先生、お願いですから、私の息子を見てやってください。私の一人息子なのです。
39 ご覧ください。霊が取りつくと、突然に叫び出すのです。そして、泡を吹かせながら痙攣(けいれん)をさせて、なかなか離れずに、彼をひどく傷つけるのです。
40 私は、あなたの弟子たちに追い出してくれるよう願いましたが、彼らにはできませんでした」

41 イエスは、答えた「信仰のないねじ曲がった世代よ、いつまで私はあなたたちと一緒にいて、あなたたちのことを我慢するのか。息子をここに連れて来なさい」

42 その子がやって来る間、その悪霊は彼を投げ倒し、激しく痙攣させた。イエスは、その汚れた霊を叱りつけ、その少年を癒した。そして、彼をその父親に返した。
43 皆は、イエスの尊厳に驚いた。しかし、皆が行なわれたすべてのことに驚嘆している間に、彼は弟子たちに言った。

【イエス自身の死の予言】

44 「これから話す言葉を、しっかりと耳にしまっておきなさい。すなわち、人の子は人々の手に引き渡されようとしている」
45 しかし、弟子たちにはこの言葉の意味が理解できなかった。彼らがそれを理解することがないように、彼らから隠されていたからである。また、彼らはこの言葉について、イエスに尋ねることを恐れてもいた。

【小さい者に真の偉大さがある】

46 彼らの間で、自分たちの中でいったい誰が一番偉いかという論争が生じた。
47 イエスは、彼らの心の思いに気づき、幼子を連れて来て自分のわきに立たせた。
48 そして、彼らに言った「私の名のゆえに、このような幼子の一人を受け入れる者は、私を受け入れるのだ。私を受け入れる者は、私を遣わした方を受け入れるのだ。あなたたち全員のうちで、最も小さい者こそ偉いのだ」

【悪霊を追い出す味方の人】

49 ヨハネが、言った「先生、私たちは、ある人があなたの名において悪霊たちを追い出しているのを見ました。それで私たちは、彼が私たちに従っていないので、彼にやめるように言いました」

50 イエスは、ヨハネに言った「彼を止めてはいけない。私たちに逆らわない者は、私たちの味方なのだ」

【イエスとサマリア人】

51 イエスは、ご自分の死が近づくのを知ると、エルサレムに行くことを決心した。
52 そして、自分よりも先に使者を遣わした。彼らは出て行き、イエスのために準備をしようと、サマリア人の村に入った。
53 彼らは、イエスを受け入れなかった。彼が、顔をエルサレムに向けて旅行をしていたからである。
54 それを見て、弟子たちのヤコブとヨハネは言った「主よ、エリヤがしたとおり、天から火が下って彼らを滅ぼすよう、私たちが命じることをお望みですか」

55 しかし、彼は振り返って彼らを叱りつけた「あなたたちは、自分たちがどんな性質なのか分かっていない。
56 人の子は、人々の命を滅ぼすために来たのではなく、それらを救うために来たのだ」 彼らは、別の村に向かった。

【イエスに従う人】

57 彼らが進んで行くと、ある人が言った「あなたの行く所なら、どこへでも従って行きたいと思います。主よ」
58 イエスは、彼に言った「キツネたちには穴があり、空の鳥たちには巣がある。だが、人の子には頭を横たえる所もない」

59 イエスは、別の者に言った「私に従いなさい!」 しかし、彼は言った「主よ、まず、行って私の父を葬ることをお許しください」
60 イエスは、言った「死んだ者たちに、自分たちの死者を葬らせなさい。だが、あなたは行って神の王国を知らせなさい」

61 さらに、別の者が言った「私は、あなたに従いたいと思います、主よ。でも、その前に私の家の者たちに別れを告げることをお許しください」
62 しかし、イエスは言った「手を鍬(すき)にかけてから後ろを見る者は、誰でも神の王国にふさわしくない」


第十章


【七十二人の派遣】

01 これらの事の後、イエスは他の七十二人を任命し、自分が行こうとしているすべての町と場所へ、自分の先に彼らを二人ずつ遣わした。
02 彼は弟子たちに言った「収穫は確かに多いが、働き人が少ない。だから、収穫に働き人を遣わしていただくよう、収穫の主人にお願いしなさい。
03 行きなさい。狼の間に子羊を送り込むようにして、私はあなたたちを遣わす。
?04 財布・袋・サンダルも持って行ってはいけない。道中では、誰にも挨拶してはいけない。

05 どこでも家に入ったなら、まず『この家に平安があるように!』と言いなさい。
06 平安の子がそこにいるなら、あなたたちの平安はその者の上に止まる。しかし、いなければ、それはあなたたちのもとに戻って来るだろう。
07 その家に止まり、彼らが出す物を食べたり飲んだりしなさい。働き人は、自分の報酬を受けるに値するからだ。家から家に渡り歩いてはいけない。

08 どこでも町に入って、彼らがあなたたちを受け入れるなら、あなたたちの前に出されるものを食べなさい。
09 そこにいる病気の者たちを癒し、彼らに『神の王国は、あなたたちに近づいた』と告げなさい。
10 だが、町に入って彼らがあなたたちを受け入れないなら、その町の通りに出て、こう言いなさい。
11 『この町から足に付いた塵さえも、私たちはあなたたちに対してぬぐい捨てる。それでも、神の王国があなたたちに近づいたというこのことは知っておきなさい』

【ソドム・コラジン・ベトサイダ】

12 あなたたちに告げるが、その日には、ソドムのほうがその町よりは耐えやすいだろう。

13 「災いだ、コラジンよ! 災いだ、ベトサイダよ! あなたたちの中でなされた強力な業が、テュロスやシドンでなされていたなら、彼らはとっくの昔に、あら布と灰の中に座って悔い改めていただろう。
14 だが、裁きのときには、テュロスとシドンのほうがあなたたちよりは耐えやすいだろう。
15 カペナウム、天まで高くされた者よ、あなたはハデスにまで下ることになる。

16 あなたたちに聞き従う者は、私に聞き従うのであり、あなたたちを拒む者は、私を拒むのだ。私を拒む者は、私を遣わした方を拒むのだ」

【弟子らが戻ってくる】

17 七十二人は喜びながら戻って来て、言った「主よ、悪霊たちでさえ、あなたの名において私たちに服するのです!」

18 イエスは、彼らに言った「私は、サタンが天から稲妻のように落ちたのを見た。
19 私は、あなたたちに蛇や蠍(さそり)を踏みつける権威、また敵のすべての力を支配する権威を与えた。あなたたちを害するものは、何もない。
20 それでも、霊たちがあなたたちに服することを喜ぶのではなく、あなたたちの名が天において書き記されたことを喜びなさい」

【イエスの喜び】

21 まさにそのとき、イエスは聖霊において喜んで言った「ああ、父よ、天地の主よ、私はあなたに感謝します。あなたはこれらの事を賢い者や理解力のある者から隠し、それを幼子たちに明らかにされたからです。そうです、父よ、そのようにして、あなたの前で意にかなうことが生じたのです」

22 イエスは言った「すべての事が、私の父によって私に任されている。子を知っている者は父の他にはおらず、父を知っている者は子と子が明らかにしたいと望む者の他にはいない」

23 そして、とくに弟子たちのほうを振り向いて、彼らだけに言った「あなたたちの見ているものを見るその目は幸いだ。
24 あなたたちに告げるが、多くの預言者たちと王たちは、あなたたちが見ているものを見たいと願ったのにそれを見ず、あなたたちが聞いていることを聞きたいと願ったのに、それを聞かなかったからだ」

【永遠の命】

25 ある律法の専門家が立ち上がり、イエスを試そうとして言った「先生、私はどうすれば永遠の命を受け継げるのでしょうか?」
26 イエスは、言った「律法には、何と書かれているか。あなたは、それをどう読んでいるのか」
27 彼は、答えた「あなたは、心を尽くし、魂を尽くし、力を尽くし、思いを尽くして、あなたの神なる主を愛さなければならない。そして、隣人を自分自身のように愛さなければならない」
28 イエスは、彼に言った「あなたは、正しく答えた。それを行ないなさい。そうすれば、生きるだろう」

29 しかし彼は、自分を正当化したいと思って、イエスに答えた「私の隣人とは、誰ですか?」

【よいサマリア人】

30 イエスは、答えた「ある人がエルサレムからエリコに向かって行く途中、強盗たちの手に落ちた。強盗は彼の衣をはぎ、殴りつけ、半殺しにして去って行った。
31 たまたま、ある祭司がその道をやって来た。そして彼を見ると、反対側を通って行ってしまった。
32 同じように一人のレビ人も、その場所に来て、彼を見ると、反対側を通って行ってしまった。

33 ところが、旅行をしていたあるサマリア人が、彼のところにやって来た。彼を見ると、哀れみに動かされた。
34 彼に近づき、その傷に油とぶどう酒を注いで包帯をしてやった。彼を自分の家畜に乗せて、宿屋に連れて行き、世話をした。
35 次の日、出発するときに二デナリを取り出して、そこの主人に渡して言った『この人の世話をして欲しい。何でもこれ以外の出費があれば、私が戻って来たときに返金するから』

36 さて、あなたは、この三人のうちの誰が、強盗たちの手に落ちた人の隣人になったと思うか」
37 律法の専門家は、言った「その人に、哀れみを示した者です」 するとイエスは、彼に言った「行って、同じようにしなさい」

【マルタとマリア】

38 彼らが進んで行くうちに、ある村に入った。そこで、マルタという名の女がイエスを自分の家に迎えた。
39 彼女にはマリアという姉妹がいたが、イエスの足もとに座って、その言葉を聞いていた。
40 マルタは、多くの給仕で取り乱していた。そこで、彼女はイエスのもとに上がって来て、言った「主よ、私の姉妹が、私だけに給仕をさせているのを何とも思われないのですか? 私を手伝うように、おっしゃってください」

41 イエスは、彼女に答えた「マルタ、マルタ、あなたは多くのことを心配して、動転している。
42 だが、必要なのは一つだけ。マリアは、良いほうを選んだのだ。だからそれが、彼女から取り去られることはないだろう」


第十一章


【祈りの方法】

01 イエスがある場所で祈り終えたとき、弟子の一人が言った「主よ、ヨハネも自分の弟子たちに教えたように、私たちに祈り方を教えてください」

02 イエスは、言った「あなたたちが祈るときには、こう言いなさい。『天におられる私たちの父よ、あなたのお名前が、神聖なものとされますように。あなたの王国が、来ますように。あなたのご意志が、天におけると同じように地上においてもなされますように。
03 日々、私たちの日ごとのパンをお与えください。
04 私たちの罪を、お許しください。私たちも、自分に負い目のある人たちを許しますから。私たちを誘惑に陥らせることなく、悪い者からお救いください』」

【求めれば与えられる】

05 イエスは、彼らに言った「あなたたちのうちの誰かが、真夜中に友人のところに行き、彼にこう言うとする『友よ、パンを三つ貸してくれ。
06 私の友人が、旅の途中で私のところに来たのだが、出してやるものが何もないのだ』
07 すると、彼は中から答えて言うだろう『私を煩わさないでくれ。戸はもう閉めてしまったし、子供たちは私と一緒に寝床に入っているのだ。起きて行って、あなたに物をやることなどできない』」
08 あなたたちに告げる。彼は、その人が自分の友人だということでは、起き上がって物を与えないとしても、その人のしつこさのゆえには、起きて行ってその人が必要とするものを与えるだろう。

09 「あなたたちに告げる。求め続けなさい。そうすれば、与えられるだろう。探し続けなさい、そうすれば見い出すだろう。叩き続けなさい、そうすれば開かれるだろう。
10 誰でも求めている者は受け、探している者は見い出し、叩いている者には開かれるのだ。

【パンの代わりに石、魚の代わりに蛇】

11 「どこの父親が、自分の息子がパンを求めているのに石を与えるだろうか? また、魚を求めているのに蛇を与えるだろうか?
12 また、卵を求めているのに蠍(さそり)を与えるだろうか?

13 悪い父親でさえ、自分の子供たちには良い贈り物を与えることを知っている。まして、あなたたちの天の父は、ご自分に求める者たちに聖霊を与えてくれないはずはない」

【ベエルゼブルとの関係】

14 イエスは、悪霊を追い出していたが、それは口のきけない悪霊であった。その悪霊が出て行くと、口のきけなかった人は物を言い出した。それで、群衆は驚嘆をした。
15 ある者たちが、言った「彼が悪霊たちを追い出すのは、悪霊たちの首領ベエルゼブルによるのだ」
16 他の者たちは、彼を試そうとして、天からの徴(しるし)を彼から求めていた。
17 イエスは、彼らの考えを知って言った「自らに敵対して分裂した王国は、すべて荒廃してしまう。自らに敵対して分裂した家は、すべて倒れてしまう。
18 もしもサタンが、自らに敵対して分裂するなら、どうしてその王国は存続するだろうか? と言うのは、あなたたちは『私が、ベエルゼブルによって悪霊たちを追い出している』などと言うからである。
19 私が、ベエルゼブルによって悪霊たちを追い出しているのなら、あなたたちの子らは、いったい誰によってそれらを追い出しているのか。それで、彼らがあなたたちを裁く者になるだろう。
20 だが、私が神の指によって悪霊たちを追い出しているのなら、神の王国はすでにあなたたちのところに来ている。

【悪霊に関する譬喩】

21 「強い者が十分に武装して自分の住みかを守っているときは、その家財は安全だ。
22 だが、もっと強い者たちが襲って来て、彼に打ち勝つなら、彼が頼みとしていた全装備を彼から取り去り、その戦利品を分け合うだろう。
23 「私と共にいない者は、私に敵対しているのだ。私と共に集めない者は、散らしているのだ。

24 汚れた霊は人から出ると、休み場を求めて乾いた場所を通るが、何も見つからない。そこで『出て来た自分の家に帰ろう』と言う。
25 戻って来ると、そこが掃き清められており、きちんと片づけられているのを見つける。
26 そこで、自分より悪い他の七つの霊を連れて来る。そして彼らは中に入って、そこに住みつく。その人の最後の状態は、最初よりも悪くなる」

【乳房と神の言葉との幸い】

27 イエスがこれらの話をしていると、ある女が群衆の中から声を上げて言った「あなたを宿した胎と、あなたに乳を飲ませた乳房とは幸いです!」
28 しかし、彼は言った「いや、神の言葉を聞いて、それを守る人たちは幸いだ」

【預言者ヨナの徴】

29 群衆がイエスのもとに集まって来たとき、彼は言い始めた「この世代は、悪い世代だ。徴を求める。この世代には、預言者ヨナの徴のほかには、何の徴も与えられないだろう。
30 ヨナが、ニネベ人に対する徴となったのと同じように、人の子もこの世代に対する徴となるだろう。
31 南の女王は裁きの際に、この世代の人々と共に起き上がり、彼らを罪に定めるだろう。彼女は、ソロモンの知恵を聞くために、地の果てからやって来たからだ。そして、ソロモンよりも偉大な者が、ここにいる。
3
2 ニネベの人々は、裁きの際にこの世代と共に立ち上がり、この世代を罪に定めるだろう。彼らは、ヨナの告げることを聞いて、悔い改めたからだ。そして、見よ、ヨナよりも偉大な者がここにいる。

【灯火と身体の灯火】

:33 「灯火(ともしび)を灯してから、それを穴ぐらの中や、籠の下に置く者はいない。むしろ、入って来る者たちに光が見えるように、それを燭台の上に置く。
34 身体の灯火は、目だ。だから、あなたたちの目が健全なら、あなたたちの全身は光で満ちるだろう。だが、それが邪(よこしま)なら、あなたたちの身体も闇で満ちるだろう。
35 だから、あなたたちの内にある光が、闇ではないかどうかを確かめなさい。
36 あなたたちの全身が光で満ちており、闇の部分が少しもなければ、灯火が明るく輝いてあなたを照らすときのように、全体が光に満たされるだろう」

【パリサイ人を非難する】

37 イエスが話していると、あるパリサイ人が一緒に食事をして欲しいと頼んだ。彼は入って行って、食卓に着いた。
38 パリサイ人はそれを見て、イエスが食事の前に身を洗わないので驚いた。
39 イエスは、言った「あなたたちパリサイ人たちは、杯と皿の外側は清める。しかし、あなたたちの内側は、強奪と不正で満ちている。
40 愚か者たちよ、外側を造った方が内側をも造ったのではないか?

41 内にあるそれらのものを、困窮している人たちに施しをしなさい。そうすれば、あなたたちにとってすべてのものが清められるだろう。
42 あなたたちパリサイ人たちは災いだ! あなたたちはハッカ・ヘンルーダ・野菜の十分の一税は納めていながら、公正と神の愛を無視している。これらこそ、行なわなくてはいけない。もっとも、もう一方のこともなおざりにしてはいけないが。

43 あなたたちパリサイ人たちは災いだ! あなたたちが好むのは、会堂での上席と市場での挨拶なのだ。
44 あなたたちは災いだ。律法学者とパリサイ人たち、偽善者たちよ! あなたたちは、目につかない墓のようなものだ。その上を歩く人々は、それに気づかないのだ」

【律法学者を非難する】

45 律法学者の一人が、イエスに答えた「先生、そのようなことを言うのは、私たちを侮辱することです」
46 イエスは、言った「あなたたち、律法学者たちも災いだ! 運びにくい重荷を人々に負わせるが、自分ではその重荷を運ぶのを助けるために、指一本持ち上げようとしない。
47 あなたたちは、災いだ! あなたたちは預言者たちの墓を建てているが、彼らを殺したのはあなたたちの父祖たちだ。
48 そのようにして、あなたたちは、あなたたちの父祖たちの業を証言し、同意しているのだ。彼らが預言者たちを殺し、あなたたちがその墓を建てている。

49 このゆえに、神の知恵もこう言っている『私は、彼らに預言者と使徒たちを遣わす。彼らは、そのうちのある者たちを殺し、迫害するだろう。
50 こうして、世の基礎が据えられて以来、流されて来たすべての預言者たちの血が、この世代に要求されることになる。
51 すなわち、アベルの血から、祭壇と聖所の間で死んだザカリヤの血に至るまで』 そうだ、あなたたちに告げるが、それはこの世代に要求されるだろう。
52 あなたたち、律法学者たちは災いだ! あなたたちは、知識の鍵を取り去ったからだ。自分たちが入らないばかりか、入ろうとする者たちをも妨げた」

53 イエスが、そこから出ていくと、律法学者とパリサイ人たちは、烈火のように怒って、彼から多くの事を聞き出そうとした。
54 彼を待ち構え、その言葉じりを捕らえようとしたのである。そして、彼を訴えようとした。


第十二章


【パリサイ人のパン種】

01 数えきれないほどの群衆が集まって、互いに足を踏み合うほどになった。イエスは、まず弟子たちに告げ始めた「パリサイ人たちのパン種、つまり偽善に用心しなさい。
02 だが、覆い隠されているもので明らかにされないものはない。隠されているもので、知られないものもない。
03 あなたたちが闇の中で言ったことは、光の中で聞かれるだろう。奥の部屋で耳もとに話されたことは、屋上で告げられるだろう。

04 「友人のあなたたちに告げる。身体を殺したら、その後はもう何もできない人々を恐れてはいけない。
05 誰を恐れるべきかを、あなたたちに知らせよう。殺した後で、ゲヘナに投げ込む力のある方を恐れなさい。そうだ、あなたたちに告げるが、その方を恐れなさい。

【五羽の雀】

06 「五羽の雀(すずめ)は、二アサリオンで売られている。しかし、その一羽といえども、神に忘れられてはいない。
07 あなたたちの髪の毛さえも、みな数えられている。だから、恐れるな。あなたたちは、多くの雀よりも価値があるのだ。

08 「あなたたちに、告げる。人々の前で私のことを味方だと言う者は、私も天使たちの前でも味方と言うだろう。
09 人々の面前で私のことを否認する者は、私も天使たちの面前でその者のことを否認するだろう。

10 誰でも、人の子に逆らう言葉を語っても、許されるだろう。だが、誰でも聖霊に対して冒涜する者は許されない。
11 人々が、あなたたちを会堂・支配者・権力者の前に連れ出すとき、何をどのように答えようか、また何を言おうかなどと思い煩うな。
12 言うべきことは、そのときに聖霊があなたたちに教えるからだ」

【欲深な不正な金持ち】

13 群衆の一人が、言った「先生、私の兄弟に相続財産を私と分けるように言ってください」
;14 だが、イエスは言った「お前さん、誰が私を裁判官や仲裁人として、あなたたちの上に立てたのか?」
15 彼らに言った「用心しなさい! どん欲から身を守りなさい。人の命は、豊かな所有物にあるのではない」

16 イエスは、喩えを語った「ある富んだ人の土地が、豊かに産出した。
17 彼は、独り言をつぶやいた『どうしようか。作物を入れておく場所がない』
18 彼は、言った『こうしよう。今の倉を取り壊して、もっと大きな倉を建てよう。そして、そこに穀物と財産を入れよう。
19 さらに、自分の魂に言い聞かせた「魂よ。お前は、何年分も積み上げた多くの財産を持っている。休んで、食べて、飲んで、楽しめ」』

20 「だが、神は彼に言った『愚か者よ。今夜、お前の魂は抜かれる。お前が用意をした物は、いったい誰のものになるのか?』
21 自分のために宝を積み上げても、神に対して富んでいない者は、こうなるのだ」

【空しい心配をするな】

22 彼は、弟子たちに言った「だから、あなたたちに告げる。何を食べようかと自分の命のことで、また何を着ようかと自分の体のことで思い煩ってはいけない。
23 命は食物より大切で、体は衣服より大切なのだ。

24 烏(からす)のことを考えなさい。種をまいたり、刈り入れたりせず、納屋も倉も持っていない。それでも、神はそれらを養っている。あなたたちは、鳥などよりもどれほど多くの価値があるだろう!
25 あなたたちのうち、誰が思い煩ったからといって、自分の背丈を一キュビトも伸ばせるだろうか?

26 小さな事さえもできないのに、なぜ他の事で思い煩うのか?
27 百合(ゆり)が、どのようにして育つかをよく考えなさい。労したり、紡いだりしない。あなたたちに告げるが、栄光を極めたときのソロモンでさえ、それらの一つほどにも装っていなかった。

【神の王国】

28 神が、今日生えていて明日は竈(かまど)に投げ込まれる野の草にも衣服を与えているのであれば、あなたたちには、なおのこと衣服を与えてくれるであろう。ああ、信仰の少ない者たちよ。
:29 何を食べようか、何を飲もうかなどと求めてはいけない。また、思い煩ってもいけない。
30 こうしたものすべては、世の諸国民が追い求めているものだからだ。むろん、あなたたちの父は、あなたたちがこうしたものを必要としていることをご存じなのだ。
31 神の王国を求めなさい。そうすれば、そうしたものがすべて、あなたたちに加えられるだろう。

32 恐れてはいけない、小さな群れよ。あなたたちの父は、あなたたちに王国を与えることをよしとされた。
33 あなたたちの持ち物を売って、困窮している人たちに施しなさい。自分のために古くならない財布を作り、天に尽きない宝を積み上げなさい。そこは、盗人たちが近づくことも、虫どもが食い散らすこともない。
34 あなたたちの宝のある所、そこにはあなたたちの心もあるからだ。

【警戒しなさい】

35 「あなたたちの腰に帯を締め、灯火(ともしび)を炊(た)いていなさい。
36 自分たちの主人が、いつ婚宴から戻って来るかに注意している召し使いのようになりなさい。主人がやって来て戸を叩くと、すぐに戸を開けられるようにするためです。
37 主人がやって来たときに、目覚めているのを見いだされる召使いは幸いだ。本当にはっきりと、あなたたちに告げる。主人は着替えて、召し使いたちを食卓に座らせ、逆に主人が彼らに給仕をするであろう。
38 主人が夜中や夜明けにやって来ても、彼らがそのようにしているところを見いだされるならば、その者たちは幸いだ。
39 だが、このことを知っておきなさい。家の主人は、どの時刻に盗人が来るかを知っているなら、見張っていて、自分の家に押し入られることはなかっただろう。

40 だから、あなたたちも用意をしていなさい。あなたたちの思いもしない時刻に、人の子は来るからです」

【ペトロの疑問】

41 ペトロは、イエスに言った「主よ、この喩えは私たちに対して話しているのですか、それとも皆に対してですか?」

42 イエスは、言った「主人が、ときに応じて家の者たちに食物を分配させるため、彼らの上に任命した忠実で賢い管理人は、いったい誰か?
43 主人がやって来たとき、そうしているのを見られるその召使いは幸いだ。
44 本当にあなたたちに告げるが、主人は彼を自分のすべての持ち物の責任者として任命するだろう。

45 その召使いが、心の中で『私の主人は、来るのが遅れている』と言い、下男や下女を打ち叩き始め、飲んで酔っぱらい始めたとする。
46 主人は、彼の思いもしない日、彼の知らないときにやって来る。そして、彼を二つに切り裂き、不忠実な者としてあしらうだろう。
47 その召使いが、自分の主人の意志を知りながら、主人の望んでいることを準備しなかったり、行なわなかったりするなら、多く笞(むち)打たれるだろう。
48 しかし、知らないままに笞打ちに値することをした者は、少ししか笞打たれないだろう。誰でも、多くを与えられた者からは多くが要求され、多くを託された者からは多くが求められるからだ。

【さまざまな分裂の教え】

49 「私は、地上に火を投げるために来た。それが、すでに燃やされていればと願う。
50 私には、受けなければならない洗礼がある。それが成し遂げられるまで、どんなに苦悩することか!
51 あなたたちは、私が地上に平和をもたらすために来たと考えているのか? あなたたちに告げるが、私は、むしろ分裂をもたらすために来たのだ。
52 今後、一つの家に五人がいれば、三人が二人に対して、二人が三人に対して分裂させられることになる。
53 彼らは、父が息子に対して、息子が父に対して、母は娘に対して、娘が母に対して、姑(しゅうとめ)が嫁に対して、嫁が姑に対して分裂させられるだろう」

【時の徴】

54 イエスは、群衆にも言った「あなたたちは、雲が西にわき起こるのを見るとすぐに『にわか雨が来るぞ』と言い、そのとおりになる。
55 南風が吹くと『猛烈な暑さになるぞ』と言い、そのとおりになる。
56 偽善者たち! あなたたちは天地の模様の解き明かし方は知っていながら、どうして今の時の徴(しるし)の解き明かし方を知らないのか?
57 なぜあなたたちは、何が正しいかを自分で判断しないのか?

【訴えるものからの解放】

58 あなたを訴える者と共に判事の前に行くときには、その途上で、彼から解放されるように熱心に試みなさい。彼が、あなたを裁判官のところに引きずって行って、裁判官があなたを役人に引き渡し、役人があなたを牢屋に投げ込んでしまうことのないためだ。
59 あなたたちに告げる。まさしく最後の小銭を払い切るまで、あなたは決してそこから出ることはないだろう」


第十三章


【悔い改めないと滅びる】

01 ちょうどそのとき、ピラトがガリラヤ人たちの血を彼らの生け贄に混ぜたという報告を誰かがした。
02 イエスは、答えた「あなたたちは、彼らがこのような災難に遭ったからといって、これらのガリラヤ人たちが、他のすべてのガリラヤ人たちよりも罪人だったと思うのか?
03 あなたたちに告げるが、そうではない。むしろ、あなたたちも悔い改めなければ、皆が同じように滅びるだろう。
04 あるいは、シロアムの塔が倒れて押し殺されたあの十八人は、エルサレムに住むすべての人たちよりも違反の多い者だったと思うのか?

05 あなたたちに告げるが、そうではない。むしろ、あなたたちも悔い改めなければ、みな同じように滅びるだろう」

【実の付かないイチジク】

06 イエスは、喩え話をした「ある人が、自分のブドウ園に一本のイチジクの木を持っていた。彼は実を探しに来たが、一つも見つからなかった。
07 彼は、栽培人に言った『見ろ。この三年間、このイチジクの木に実を探しに来ているのに、何も見つからない。これを切り倒してしまえ。なぜ、これが土地を無駄にふさいでいるのか?』
08 栽培人は、答えた『ご主人様、それを今年だけ、そのままにしてやってください。この木の周りを掘って、肥料をやりますから。
09 もしも、実を結べば上等ですし、そうでなければ、その後、これを切り倒してしまって構いません』」

【安息日の奇跡】

10 イエスは、安息日に会堂の一つで教えていた。
11 すると、十八年間も病弱の霊に取りつかれた女がいた。彼女は腰が曲がったままで、どうしても伸ばすことができなかった。
12 イエスは女を見ると、呼び寄せて言った「女よ、あなたは自分の病弱さから解き放たれている」
13 そして、女の上に手を置いた。すると、すぐに女はまっすぐになり、神に栄光を捧げた。

14 会堂長は、イエスが安息日に癒したので憤慨した。そして、群衆に言った「人々が働くべき日は六日ある。だからそれらの日にやって来て、癒してもらうがよい。安息日にはいけないのだ!」

15 そこで主は、答えた「偽善者たち! あなたたちはおのおの、安息日に自分の牛やロバを家畜小屋から解いて、水を飲ませに引いて行くではないか。
16 アブラハムの娘で、サタンが十八年間も縛っていたこの女は、安息日にその束縛から解かれるべきではなかったか」

17 イエスがこれらのことを言うと、彼の反対者たちはみな恥じ入った。しかし、群衆はみな、イエスによってなされた栄光ある事柄すべてを喜んだ。

【芥子だねとパン種】

18 イエスは、言った「神の王国は何に似ているだろうか? それを何と比べようか?
19 それは、ある人が自分の庭にまいた一粒の芥子(からし)の種のようなものだ。芥子は成長し、大きな木になり、その枝に空の鳥たちが巣を作った」

20 また、彼は言った「神の王国を何と比べようか?
21 それは、パン種のようだ。ある女がそれを取って、三ますの麦粉の中に隠すと、ついには全体が発酵した」

【狭い門から入れ】

22 イエスは、町々や村々を通って行きながら教え、エルサレムに向けて旅をしていた。
23 ある者が、彼に言った「主よ、救われる者は少ないのですか?」 イエスは、彼らに言った。
24 「狭い戸口を通って入るように、必死に努めなさい。あなたたちに告げるが、入ろうと努めながらも、入れない人が多いからだ。

25 家の主人が起き上がって、いったん戸を閉めてしまうと、あなたたちが外に立ち、戸を叩いて『だんな様、だんな様、開けて私たちを入れてください!』と言い始めても、彼はあなたたちに告げるだろう『私は、あなたたちを知らないし、あなたたちがどこから来たのかも知らない』
26 そのとき、あなたたちは言い始めるだろう『私たちは、あなたの面前で食べたり飲んだりしました。あなたは、私たちの広場で教えてくれました』
27 主人は、繰り返して言うだろう『私は、ほんとうにあなたたちを知らないし、あなたたちがどこから来たのかも知らない。不法を働く者たちよ、皆私から離れ去れ』

28 そこには、嘆きと歯ぎしりとがあるだろう。アブラハム・イサク・ヤコブ、そしてすべての預言者たちが神の王国にいるのに、自分たちが外に投げ出されているのを見るときには。
29 人々は東・西・北・南からやって来て、神の王国で席に着くだろう。
30 見よ、最後であったのに最初になる者たちがおり、最初であったのに最後になる者たちがいる」

【イエスに狐と言われたヘロデ】

31 何人かのパリサイ人たちがやって来て、彼に言った「ここから出て、立ち去りなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています」

32 イエスは、彼らに言った「行って、あの狐に言いなさい『見よ、私は今日も明日も悪霊たちを追い出し、癒しを行なっている。そして三日目に、自分の使命を成し遂げるだろう。
33 それでも、今日も明日もあさっても進んで行かなければならない。預言者が、エルサレムの外で滅びることはあり得ないからだ』

34 「エルサレム、エルサレム、預言者たちを殺し、自分のところに遣わされた者たちを石打ちにするものよ! 雌鳥(めんどり)がその雛(ひな)の群れを翼の下に集めるように、私は幾たびあなたの子らを集めようとしたことか。だが、あなたたちは拒んだ!
35 あなたたちの家は、荒れ果てたままに残される。あなたたちに告げるが、あなたたちは『主の名において、来る者は幸いだ!』と言うときまでは、決して私を見ることはないだろう」


第十四章


【水腫の人の治療をする】

01 安息日に、イエスはあるパリサイ人の支配者の家に入った。彼らは、イエスの様子を窺(うかが)っていた。
02 水腫をわずらっている人が、前にいた。
03 そこで、イエスは律法の専門家やパリサイ人たちに言った「安息日に癒すことは許されているか」

04 彼らは、黙っていた。イエスは、その人の手を取って癒し、去らせた。
05 イエスは、彼らに答えた「あなたたちのうち、息子や牛が井戸の中に落ちた場合、安息日だからといって引き上げない者がいるだろうか?」
06 これらのことについても、彼らはイエスに答えることができなかった。

【謙遜の必要性】

07 招かれた人々が上席を選ぶ様子に気づくと、イエスは喩えで彼らに話した。

:08 「婚宴に招かれたときは、上席に着いてはいけない。あなたより身分の高い人が、招かれているかも知れないからだ。
09 そうすると、あなたを招いた人がやって来て『この人のために、場所を空けてください』と、あなたに告げるであろう。そのとき、あなたは恥をかきながら、最も低い場所に着くことになる。

10 だから、あなたが招かれたときは、最も低い場所に着きなさい。そうすれば、あなたを招いた人がやって来て『友よ、もっと高い方へ移ってください』と、あなたに告げるだろう。そのとき、あなたは共に食卓に着いている全員の前で誉れを受けるだろう。
11 誰でも、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるのだ」

【義人の復活】

12 イエスは、自分を招いた人にも言った「あなたが昼食や夕食を設けるときは、自分の友人たちも、兄弟たちも、親族たちも、富んでいる隣人たちも呼ばないほうがよい。なぜならば、彼らも返礼をして逆にあなたをもてなすことになるかも知れないからだ。
13 したがって、あなたが祝宴を催すときには、貧しい人たち、足の不自由な人たち、また盲人たちを招きなさい。
14 そうすれば、彼らは返礼をすることができないので、あなたは幸いだ。あなたは、義人たちの復活において、報いを受けることになるからだ」

【宴会の喩え】

15 これらのことを聞いて、イエスと共に食卓に着いていた一人が言った「神の王国で、祝宴にあずかる人は幸いです!」

16 すると、イエスは言った「ある人が、盛大な晩さんを設けて、大勢の人々を招いた。
17 晩さんの時刻に、召使いたちを遣わして、招いておいた者たちに言った『おいでください。もうすっかり整いましたから』

18 彼らは、いっせいに言い訳を始めた。最初の者は、言った『畑を買いましたので、見に行かなければなりません。どうぞお許しください』
19 別の者は、言った『五くびきの牛を買いましたので、試しに行かなければなりません。どうぞお許しください』
20 また、さらに別の者は『妻を娶(めと)りましたので、そのために行くことができません』

21 召使いは戻って、主人にこれらのことを報告した。すると、家の主人は腹を立て、召使いに言った『急いで町の通りや小道に出て行き、貧しい人たち、体の不自由な人たち、盲人たち、また足の不自由な人たちを連れて来なさい』

22 召使いは、言った『ご主人様、おおせのとおりにしましたが、まだ場所が余っています』
23 主人は、召使いに言った『大通りや垣根に出て行って、無理にでも人々を連れて来て、私の家がいっぱいになるようにしなさい。
24 お前たちに言うが、あの私が招いた者たちは、この晩さんを味一人も味わわないだろう』」

【イエスに従うには】

25 群衆が、イエスと共に歩いていた。イエスは振り向いて、彼らに言った。
26 「誰でも私のもとに来て、自分の父・母・妻・子供たち・兄弟たち。姉妹たち、さらに自分の命さえも憎まなければ、私の弟子になることはできない。
27 誰でも、自分の十字架を背負って、私の後に付いて来なければ、私の弟子になることはできない」

【塔を建てたり戦をするには】

:;28 「あなたたちのうちの誰かが、塔を建てたいと望んだとしよう。そのような場合、まず腰掛けて費用を計算し、それを完成させるだけのものが自分にあるかどうかを確かめない人がいるだろうか?
29 もしもそうしないと、土台を据えただけで仕上げられなかったときに、見ているすべての人が彼を嘲るだろう。
30 そして、『この人は建て始めたが、仕上げることができなかった』と言うだろう。

31 王が、敵と戦いを交えたいと望んだとする。そのような場合、まず腰掛けて、一万人の味方で二万人を率いて向かって来る敵を迎え撃つことができるかどうかを、よく考えない王がいるだろうか?
32 もしもできないのであれば、敵がまだ遠くにいる間に使者を送り、和平の条件を尋ねるのだ。

:;33 そのようなわけで、誰でもあなたたちのうちで自分の持ち物すべてを捨てない者は、私の弟子になることはできない」

【塩の喩え】

:;34 「塩は良いものだ。だが、塩気が抜けて味がなくなったら、あなたたちは何によって塩の味を付けるのか?
35 それは、土にも堆肥(たいひ)にも適さない。それは、投げ出して捨てられる。聞く耳のある者は、聞きなさい」


第十五章


【失った羊の喩え】

01 徴税人や罪人たちが、イエスの話を聞こうとして近づいて来た。
02 パリサイ人と律法学者たちは、呟いて言った「この人は、罪人たちを歓迎して一緒に食事をしている」

03 イエスは、喩え話をした。
04 「百匹の羊がいて、そのうちの一匹が行方不明になったときにどうするか? いなくなった一匹のために、九十九匹を荒野に残し、探しにいくであろう。失われた一匹を、誰もそのままにしておかないのではないか?
05 そして、それを見つけると、喜びながらその羊を自分の肩に載せる。
06 家に帰ると、自分の友人や隣人たちを呼び寄せて、彼らに『私と一緒に喜んでくれ。いったん失われた私の羊を見つけた!』と言う。

07 あなたたちに、告げる。悔い改める一人の罪人については、悔い改める必要のない九十九人の義人たち以上の喜びが、天にあるだろう」

【失った硬貨の喩え】

08 「女が、十枚のドラクマ硬貨を持っていた。そして、その一枚のドラクマ硬貨を失ったなら、どうするだろうか。 灯火(ともしび)をつけ、家を掃き、それが見つかるまで念入りに探さない女が、はたしているだろうか?
09 それを見つけると、自分の友人たちや隣人たちを呼び集め、こう言う『私と一緒に喜んでください。いったん失ったドラクマを見つけたからです』

10 そんな理由で、あなたたちに告げる。悔い改める一人の罪人については、天使たちの面前で喜びがあるのだ」

:;【放蕩息子の喩え】

11 イエスは、言った「ある人に、二人の息子がいた。
12 年下のほうの息子が、父親に言った『お父さん、財産のうち私の取り分を下さい』 そこで、父親は自分の資産を二人に分け与えた。
13 すると、何日もしないうちに、年下の息子はすべてを取りまとめて遠い地方に旅立った。彼は、そこで羽目を外した生活をして、自分の財産を浪費した。

14 すべてを使い果たしたとき、その地方にひどい飢饉が起こって、彼は困窮をし始めた。
15 その地方の住民の一人のところに行って、身を寄せた。その人は、彼を自分の畑にいる豚の世話をさせた。
16 彼は、豚たちの食べている豆のさやで腹を満たしたいと思った。しかし、彼に何かをくれる者はいなかった。

17 反省をして、彼は言った『父のところでは、あれほど大勢の雇い人たちに、あり余るほどのパンがあるのに、私は飢え死にそうだ!
18 立ち上がって、父のところに行って、言おう。お父さん、私は天に対しても、あなたの前でも罪を犯しました。
19 私は、もはやあなたの息子と呼ばれるには値しません。あなたの雇い人の一人にしてください』と。

20 彼は歩いて、父親のところに帰って来た。まだ遠くにいる間に、彼の父親は彼を見た。そして、哀れみに動かされ走り寄って、その首を抱き口づけをした。
21 息子は、父親に言った『お父さん、私は天に対しても、あなたの前でも罪を犯しました。私はもはやあなたの息子と呼ばれるには値しません』

22 しかし、父親は召使いたちに言った『最上の衣を持って来て、彼に着せなさい。手に指輪をはめ、足に履物をはかせなさい。
23 肥えた子牛を屠(ほふ)りなさい。それを食べて、お祝いをしよう。
24 この私の息子は、死んでいたのに生き返ったからだ。失われていたのに、見つかったのだ』 彼らは、祝いを始めた。

25 年上の息子は、畑にいた。そして、家のそばまで帰ってくると、音楽や踊りの音が聞こえた。
26 召使いを呼んで、どうしたのかと尋ねた。
27 召使いは、言った『あなたの弟さんが、帰って来たのです。それで、あなたのお父様は、弟さんを無事に健康な姿で迎えたというので、肥えた子牛を屠りました』
28 ところが、年上の息子は腹を立てて、中に入ろうとはしなかった。そのために、父親が出て来て、彼に懇願をした。

29 しかし、息子は父親に答えた『ご覧なさい。私はこれほど長い年月、あなたに仕えてきました。一度もあなたの掟(おきて)に背いたことがありません。それでも、私に対しては友人たちと一緒に祝うために、ヤギ一匹さえ下さったことがありません。
30 それなのに、あなたの財産を売春婦たちと一緒に食いつぶした息子がやって来ると、あなたは彼のために肥えた子牛を屠ったのです』

31 「父親は、言った『息子よ、お前はいつも私と一緒にいるし、私のものは全部お前のものだ。
32 だから、このことは祝って喜ぶのにふさわしい。お前の弟が、死んでいたのに生き返ったからではないか。失われていたのに、見つかったのだ』」


第十六章


【不正な管理人の喩え】

01 イエスは、弟子たちに言った「ある富んだ人がいて、彼には一人の管理人がいた。その管理人が主人の財産を浪費しているという告発があった。
02 主人は、管理人を呼んで言った『私がお前について聞いたことは、いったいどういうことなのか。会計報告を出しなさい。もう管理は任せられない』

03 「その管理人は、独り言を言った『どうしようか。主人は、私から管理職を取り上げるという。私には、土を掘るほどの力はない。物乞いをするのも恥ずかしい。
04 どうすればよいのだろうか? わかったぞ。こうすれば、私が管理職から外されたとき、人々は私を家に迎えてくれるだろう』

05 そこで管理人は、主人が貸している者を一人ずつ呼び出した。最初の者に『私の主人に、どのくらいの借りがあるのか?』と言った。
06 借り主は『油、百バトスです』と言ったので、管理人は『自分の証書を取りなさい。早く座って、五十と書き直しなさい』と言った。

07 それから、別の借り主に言った『どのくらいの借りがあるのか?』 彼は、言った『小麦百コロスです』 管理人は、彼に言った『自分の証書を取って、八十と書き直しなさい』

08 主人は、この不正な管理人が賢く行動したので誉めた。というのは、この世の子らは、自分たちの世代の中では、光の子らよりも賢いからだ。

09 あなたたちに告げる。不義の富で、自分のために友人たちを作りなさい。そうすれば、それが尽きたときにも、彼らはあなたたちを永遠の天幕に迎え入れてくれるだろう。
10 ごく小さなことにも忠実な者は、多くのことにも忠実だ。ごく小さなことにも不正直な者は、多くのことにも不正直だ。
11 だから、あなたたちが不義の富に関して忠実でなかったなら、誰があなたたちに真実の富をゆだねるだろうか?
12 あなたたちが他人のものに関して忠実でなかったなら、誰があなたたちにあなたたち自身のものを与えるだろうか?

:13 どんな召使いも、同時に二人の主人に仕えることはできない。一方を憎んで他方を愛するか、一方を重んじて他方を軽蔑するかのどちらかになるからだ。あなたたちは、神と富との両方に仕えることはできない!」

【パリサイ人の偽善】

14 お金を愛するパリサイ人たちも、これらすべてのことを聞いていた。しかし、彼らはイエスを嘲笑(あざわら)った。
15 イエスは、パリサイ人に言った「あなたたちは、人々の面前では自分を義とする者たちだ。だが、神はあなたたちの心を知っている。人々の間で高くされているものも、神のみ前では嫌悪すべきものになるからだ。

16 律法と預言者たちとは、ヨハネに至るまでだ。そのときから、神の王国の福音が告げられており、すべての人がその中に無理にでも入ろうする。
17 しかし、律法からごく小さな一画が落ちるよりは、天と地が過ぎ行くということのほうがやさしい。

18 自分の妻を離縁して別の女と結婚する者は、姦淫を犯しているのだ。夫から離縁された女と結婚する者は、姦淫を犯すのだ」

【乞食のラザロと金持ち】

19 「ある富んだ人がいた。紫の衣と上等の亜麻布を身に着けて、毎日ぜいたくに暮らしていた。
20 その人の家の門の前には、ラザロという名の乞食が、できものだらけの身で横たわっていた。
21 その乞食は、富んだ人の食卓から落ちるパンくずで腹を満たしたいと思っていた。そればかりか、犬たちまでやって来て、彼のできものをなめていた。

22 やがて、その乞食は死んで、天使たちによってアブラハムの懐に運び去られた。富んだ人も死んで、葬られた。
23 富んだ人は、ハデスで苦しみながら目を上げると、はるか遠くにいるアブラハムとラザロとが見えた。
24 彼は、叫んで言った『父アブラハムよ、私をあわれんでください。そしてラザロをお遣わしになり、その指先を水に浸して、私の舌を冷やしてください! 私は、この炎の中で苦しんでいるからです』

25 アブラハムは、言った『子よ、お前は一生の間に自分の良いものを受けた。しかし、ラザロが悪いものばかりを受けたことを思い出しなさい。だから、ここで彼は慰められ、お前は苦痛のうちにある。
26 それだけではなく、私たちとお前たちとの間には大きな裂け目が設けられている。だから、ここからお前のところに行こうと思う者たちもそれができず、そちらから私たちのところに来る者もいないのだ』

27 彼は、言った『それではお願いです。父よ、私の父の家に彼を遣わしてください。
28 私には兄弟が五人いますので、彼らまで、この苦しみの場所に入ることのないように、証言をさせていただきたいのです』
29 アブラハムは、彼に言った『彼らには、モーセと預言者たちがいる。その者たちに聞き従えばよい』

30 彼は、言った『そうではないのです。父アブラハムよ。死んだ者たちの中から、誰かが行って説明をしたら、彼らは悔い改めるでしょう』
31 アブラハムは、言った『彼らがモーセと預言者たちに聞き従わないのであれば、死んだ者たちの中から誰かが生き返ったとしても、彼らが説得されることはないだろう』」


第十七章


【つまずきと石臼の忠告】

01 イエスは、弟子たちに言った「つまずきの原因が、やって来ないということはあり得ない。しかし、自分を通してそれらがやって来るという人は災いだ!
02 これら小さな者たちの一人をつまずかせるよりは、首に石臼をかけられて海に投げ込まれるほうが、その者にとっては良いだろう。

03 注意をしていなさい。もしも、あなたの兄弟があなたに対して罪を犯したならば、彼を咎(とが)めなさい。そして、悔い改めたならば許しなさい。
04 彼が一日に七回、あなたに対して罪を犯し、七回戻って来て『悔い改めます』と言ったとしたら、彼を許さなければなりません」

【信仰の力と義務】

05 使徒たちが、イエスに言った「私たちの信仰を増やしてください」
06 イエスは、言った「もしあなたたちに一粒のからしの種ほどの信仰があるのなら、このイチジクの木に『根こそぎにされて、海に植えられよ』と言えば、それはあなたたちに従うだろう。

07 ところで、畑を耕すか羊の番をする召使いがいるとして、彼が畑から帰って来たときに、誰が『すぐに来て食卓に着きなさい』と言うだろうか?
08 そうではなく、主人は彼に『私の夕食を整えなさい。着替えて、私が食べたり飲んだりしている間、私の給仕をしなさい。その後で、お前は食べたり飲んだりするがよい』と言うのではないだろうか?

09 その召使いが、命じられたことを行なったからといって、主人は彼に感謝をするだろうか? それは、当然のことだと考えて、そうは思わないだろう。
10 同じように、あなたたちも、自分に命じられたことをすべて行なったときは『私たちは、取るに足りない召使いです。自分の義務を行なったまでです』と言いなさい」

【十人のらい病人】

11 イエスがエルサレムへの途上にあり、サマリアとガリラヤの境界を通り過ぎていたときのことである。
12 ある村に入ったとき、十人のらい病人たちが彼に出会った。そして、彼らは遠くに立っていた。
13 彼らは、声を上げて言った「師イエスよ、私たちをあわれんでください!」

14 イエスはそれを見ると、彼らに言った「行って、自分を祭司たちに見せなさい」 彼らは、出かけて行く途中で清められたのである。
15 彼らのうちの一人は、自分が癒されたのを見て、大声で神に栄光を捧げながら戻って来た。
16 彼は、イエスの足もとにひれ伏して、感謝を捧げた。その人は、サマリア人であった。

17 イエスは、答えた「十人が、清められたのではなかったか。それなら、九人はどこにいるのか。
18 神に栄光をささげるために戻って来たのは、この他国人のほかには一人も見いだせないのか?」

19 それから、イエスは彼に言った「立ち上がって、行きなさい。あなたの信仰があなたを癒した」

【神の国の到来】

20 神の王国はいつ来るのかと、パリサイ人たちに尋ねられた。イエスは言った「神の王国は、人目につくようにして来ることはない。
:;21 人々が『見よ、ここだ!』とか『見よ、あそこだ!』などと言うこともない。というのは、すでに神の王国はあなたたちの中にあるのだ」

22 彼は、弟子たちに言った「あなたたちが人の子の日々をただの一日でも見たいと望みながら、それを見ることのできない日々が来るだろう。
23 人々はあなたたちに『見よ、ここだ!』とか『見よ、あそこだ!』などと言うだろう。しかし出かけて行って、彼らの後に従ってはいけない。

24 稲妻が天の一方の端からひらめき出て、他方の端にまで輝きわたるように、人の子も自分の日にはそのようになる。
25 彼は、まず多くの苦しみを受ける。そして、この世代から退けられなければならない。

26 ノアの日々に起きたとおり、人の子の日々においてもそのようになるだろう。
27 ノアが箱船に入るその日まで、人々は食べたり飲んだり、娶ったり嫁いだりしていたが、洪水が来て、彼らすべてを滅ぼしてしまった。

28 同じように、ロトの日々に起きたとおりになるだろう。人々は食べたり飲んだり、買ったり売ったり、植えたり建てたりしていた。
29 しかし、ロトがソドムから出て行った日に、火と硫黄が天から降ってきて、彼らすべてを滅ぼしてしまった。

30 人の子が現われる日にも、同じようになるだろう。
31 その日には、屋上にいる者が家の中にある自分の家財を取り出そうとして、降りてはいけない。畑にいる者も同じように、後ろを振り向いてはいけない。
32 ロトの妻のことを思い出しなさい!

33 自分の命を救おうと努める者はそれを失い、自分の命を失う者はそれを保つのだ。
34 あなたたちに告げるが、その夜、二人の人が一つの寝床にいるだろう。そして、一方は取り去られ、他方は残される。
35 二人の女が粉をひいているだろう。一人は取り去られ、一人は残る」
36 畑にいる二人の男のうち、一人は取り去られ、一人は残る。

37 弟子たちが、聞いた「主よ、それはどこでですか」 イエスは、答えた「死体のあるところに、ハゲタカが集まって来るだろう」


第十八章


【不正な裁判官】

01 イエスは、いつも祈っていなければならず、諦めてはならないことを、彼らに喩えで話した。

02 「ある町に、神を恐れず、人をも敬わない一人の裁判官がいた。
03 また、その町には一人の寡婦(やもめ)がおり、何度も彼のもとに来ては『私を訴える者から、私を弁護してください!』と言っていた。
04 彼はしばらくの間、そうしようとはしなかった。しかし、後になって自分に言った『私は神を恐れず、人をも敬わない。
05 それでも、この寡婦が私を煩わすので、彼女を弁護してやろう。そうしないと、彼女は絶え間なくやって来て、私を疲れ果てさせるだろう』」

06 イエスは、言った「この不義の裁判官の言うことを聞きなさい。
07 まして神は、昼も夜もご自分に向かって叫んでいる。ご自分の選ばれた者たちの仇(あだ)を討たずに、彼らのことを我慢し続けることがあるだろうか。
08 あなたたちに告げるが、神は速やかに彼らの仇を討つだろう。それでも、人の子が来るとき、地上に信仰を見い出すだろうか」

【パリサイ人と徴税人】

09 自分の義を確信しており、他のすべての人たちを蔑(さげす)んでいたある人々に対して、彼は次の喩えを語った。

10 「二人の人が、祈るために神殿に上った。一人はパリサイ人で、もう一人は徴税人だった。
11 パリサイ人は、祈った『神よ、私が他の者たち、すなわち、奪い取る者たち、不義の者たち、姦淫を犯す者たちのようでなく、さらにはこの徴税人のようでさえないことに感謝します。
12 私は、週に二度断食しています。自分の得るすべてのものの十分の一税を納めています』

13 だが、徴税人は遠くに立ち、目を天に上げようともせず、胸を打ちながら言った『神よ、罪人の私をあわれんでください!』
14 あなたたちに告げるが、この人は最初の人よりも義とされて、自分の家に向かって行った。誰でも、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされるのだ」

【子どもたちと神の国】

15 人々は、イエスに触ってもらおうとして、赤子たちを連れて来ていた。しかし、弟子たちはそれを見て、彼らを叱りつけた。
16 しかし、イエスは彼らを呼び寄せて言った「幼子たちが、私のところに来るままにしておきなさい。彼らを止(とど)めてはいけない。神の王国は、このような者たちのものだからだ。
17 本当に、はっきりとあなたたちに告げる。神の王国を幼子のようにして受け入れない者は、決してその中に入ることはない」

【若い金持ち】

:;18 ある金持ちが、イエスに尋ねて言った「善い先生、永遠の命を受け継ぐためには、何をしたらよいでしょうか?」

19 イエスは、答えた「なぜ、私のことを善いと呼ぶのか。神お一人のほかに、善い者はいない。
20 あなたは、掟を知っている『姦淫を犯してはいけない』『殺してはいけない』『盗んではいけない』『偽りの証言をしてはいけない』『だまし取ってはいけない』『あなたの父と母を敬いなさい』」
21 金持ちは、言った「私はそうした事すべてを、幼いころから守ってきました」

22 イエスは、それを聞いて言った「あなたには、まだ一つのことが足りないことがある。自分の持ち物をすべて売って、貧しい人々に配りなさい。そうすれば、あなたは天に宝を持つことになる。そして、私に付いてきなさい」
23 しかし、彼はこれらの事を聞いてひどく悲しんだ。非常に富んでいたからである。

24 彼がひどく悲しむのを見ながら、イエスは言った「富んだ人たちが神の王国に入るのは、何と難しいことか!
25 富んだ人が神の王国に入るよりは、ラクダが針の穴を通り抜ける方がやさしいのだ」

26 これを聞いた人たちは、言った「それでは、誰が救いを得られるのですか?」
27 しかしイエスは、それに答えずに言った「人には不可能な事柄でも、神には可能なのだ」

【弟子の受ける永遠の命】

28 ペトロが、言った「ご覧ください。私たちは何もかも捨てて、あなたに従いました」

29 イエスは、言った「本当に、はっきりとあなたたちに告げる。神の王国のためには、家・妻・兄弟たち・両親・あるいは子供たちを後にする者であれ。
30 この世で何倍も受け、また来たるべき世では永遠の命を受けない者はいない」

【受難の預言】

31 彼は、弟子の十二人を隅に連れて行った。そして、彼らに言った「私たちは、エルサレムに行く。そして、人の子について、預言者たちを通して書かれたことがすべて成就するであろう。

32 彼は、異邦人たちに引き渡され、嘲られ、ひどい扱いを受け、唾(つば)をかけられる。
33 彼らは、彼を鞭打ち、殺すだろう。しかし、彼は三日目に生き返る」

34 弟子たちは、これらのことを理解できなかった。この言葉が、彼らから隠されていたので、彼らは語られたことの意味が、わからなかったのである。

【エリコの盲人】

35 イエスらがエリコに近づいていたとき、盲人が道ばたに座って物乞いをしていた。
36 彼は、群衆が通り過ぎるのを耳にして、これは何事かと尋ねた。
37 人々は、ナザレのイエスが通って行くのだと彼に告げた。

38 彼は、叫んで言った「ダビデの子イエスよ、私をあわれんでください!」
39 先を行く者たちが彼を叱りつけ、黙らせようとした。しかし、彼はますます大声で「ダビデの子よ、私をあわれんでください!」と叫んだ。

40 イエスは立ち止まり、彼を連れて来るようにと命じた。彼が近づいて来ると、イエスは尋ねた。
41 「何をして欲しいのか?」 盲人は、言った「主よ、また見えるようになりたいのです」

42 イエスは、彼に言った「見えるようになりなさい。あなたの信仰があなたを癒したのだ」
43 すぐに彼は見えるようになり、神に栄光を捧げながらイエスに従った。それを見て、人々はみな神を讃えた。


第十九章


【徴税人ザケオの入信】

01 イエスはエリコに入り、そこを通り過ぎていた。
02 そこには、ザケオという人がいた。徴税人の長で、富んでいた。
03 ザケオは、イエスがいったいどんな人かを見ようとした。しかし、群衆のためにできなかった。彼は、背が低かったからである。
04 そこで、前方に走って行き、イチジクの木に登って、彼を見ようとした。イエスがその道を通っていたからである。

05 イエスはその場所に来ると、彼を見上げて言った「ザケオ、降りて来なさい。私は今日、必ずあなたの家に泊まるからだ」
06 彼は急いで降りて来て、喜んでイエスを迎えた。
07 それを見ると、皆はつぶやいて言った「彼は罪人である男のところに宿を取った」

08 ザケオは、立ち上がって言った「ご覧ください。主よ、私は自分の財産の半分を貧しい人たちに与えます。誰かのものを不正に取り立てていたなら、四倍にして返します」
09 イエスは、言った「今日、救いがこの家に来た。彼もまたアブラハムの子だからだ。
10 人の子は、失われたものを探し出し、それを救うために来たのだ」

【ムナ硬貨の喩え】

11 皆がこれらのことを聞いていると、イエスは続けて一つの喩えを話した。イエスがエルサレムに近づいているので、彼らは神の王国がすぐに現われるものと勘違いをしていたからである。
12 イエスは、言った「ある貴族が、王位を受けるために、遠い国に出かることになった。
13 そこで彼は、自分の十人の召使いたちを呼んだ。彼らにそれぞれ十枚のムナ硬貨を渡して、言った『私が帰って来るまで、商売をしなさい』
14 しかし貴族の市民たちは彼を憎んでいたので、彼の後から使者を遣わして言った『私たちは、彼が王になることを望みません』

15 彼が王国を受けて帰ると、お金を渡した召使いたちを呼んだ。彼らが商売をして、何をもうけたかを知るためである。

16 最初の者が、彼の前に来て言った『主よ、あなたの一ムナはさらに十ムナを作り出しました』
17 主人は、彼に言った『よくやった、善い召使いよ。あなたは、ごく小さなことに忠実だと分かったから、十の都市を支配させよう』

18 二番目の者が、来て言った『主よ、あなたの一ムナは五ムナを作り出しました』
19 そこで、主人は彼に言った『あなたも五つの都市を治めなさい』

20 別の者が、来て言った『主よ、ご覧ください、あなたの一ムナです。手ぬぐいに包んで、しまっておきました。
21 私は、あなたが恐かったのです。あなたは厳格な方ですから。預けなかったところで取り立て、種をまかなかった所で刈り取るのです』
22 主人は、言った『あなたの言葉で、あなたを裁こう。悪い召使いよ! あなたは私が厳しい者で、預けなかったところで取り立て、種をまかなかった所で刈り取ることを知っていたのか。
23 それなら、どうして私のお金を銀行に預けなかったのか。そうすれば、帰って来たとき、それに加えて利息を得られただろうに』
24 そして、そばにいる者たちに言った『その一ムナを彼から取り上げて、十ムナ持っている者に与えなさい』

25 彼らは、主人に言った『主よ、彼はすでに十ムナを持っています!』
26 主人は、答えた『あなたたちに告げるが、誰でも持っている者にはさらに与えられるが、持っていない者からは持っているものまでも取り去られることになるのだ。
27 私が王になることを望まないという使者を遣わした者たちをここに連れ出して、私の前で殺してしまえ』」

【子ロバを用意する】

28 これらのことを言ってから、イエスは先に立って進み、エルサレムに向かって行った。

29 オリーブ山の麓(ふもと)のベツファゲとベタニアに近づいたとき、彼は弟子たちのうちの二人に言った。
30 「向こう側の村に行きなさい。そこに入ると、誰も乗ったことのない子ロバがつないであるのが見つかるだろう。それを解いて、連れて来なさい。
31 もしも誰かが『なぜそれを解いているのか』と尋ねたならば、その者に『主が、これを必要としているのです』と言いなさい」

32 遣わされた者たちは出て行き、自分たちが告げられたとおりのことを見いだした。
33 彼らが子ロバを解いていると、その持ち主たちが言った「なぜ子ロバを解いているのか?」
34 彼らは、言った「主がこれを必要とするのです」
35 そして、それをイエスのもとに連れて来た。子ロバの上に自分たちの外衣を投げかけると、イエスはそれに乗った。

【ロバに乗ってエルサレムに入る】

36 イエスが進んで行くと、人々は自分たちの外衣を道に敷いた。
37 オリーブ山の下り坂に近づくと、弟子たちから成る群衆は、自分たちが見たすべての強力な業のことで喜び、大声で神を賛美し始めた。
38 「主の名において来る王は幸いだ! 平和が天に、栄光がいと高き所に!」

39 数人のパリサイ人たちが、群衆の中から彼に言った「先生、あなたの弟子たちを叱ってください!」
40 イエスは、彼らに答えた「あなたたちに告げるが、これらの者が黙っているならば、石が叫ぶだろう」

41 都に近づくと、イエスは都を見て涙を流した。
42 そして、こう言った「もしもあなたが、まさにあなたが、この日に自分の平和にかかわる事柄を知っていたなら! だが、それらは今あなたたちの目から隠されている。
43 あなたには、次のような日々が来るからだ。すなわち、あなたの敵たちはあなたに対してバリケードを築き、あなたを包囲して四方から取り巻く。
44 あなたと中にいる子らを地面に打ち倒すだろう。彼らはあなたの中で、石を他の石の上に残しておくこともないだろう。それは、あなたが神の恵みを受けたことを知らなかったからだ」

【イエスの宮清め】

45 イエスは神殿に入り、そこで買ったり売ったりしていた者たちを追い出し始めた。
46 彼らに言った「『私の家は祈りの家だ』と書かれているのに、あなたたちはそれを『強盗の巣』にしてしまった!」

47 イエスは神殿で毎日教えていたが、祭司長と律法学者、民の指導者たちは、彼を殺そうとしていた。
48 しかし、どうすればよいかが分からなかった。民はみな、彼の語るすべての言葉に聞き入っていたからである。


第二十章


【洗礼者ヨハネは天か人か?】

01 ある日のこと、イエスが神殿で民を教え、福音を告げていた。すると、祭司と律法学者たちが、長老たちと共に彼のもとにやって来た。
02 彼らは、イエスに尋ねた「私たちに告げなさい。あなたは何の権威によってこうした事をするのか。また、誰がその権威をあなたに与えたのか?」

03 イエスは、答えた「私も、あなたたちに一つのことを尋ねよう。私に告げなさい。
04 ヨハネの洗礼は天からのものだったか、それとも人からのものだったか?」

05 彼らは、互いに論じ合って言った「我々が『天から』と言えば、彼は『あなたたちが彼を信じなかったのはなぜか』と言うだろう。
06 また、我々が『人から』と言えば、民は我々を石打ちにするだろう。彼らは、ヨハネを預言者だと信じ込んでいるからだ」
07 仕方なく彼らは、自分たちは「それが、どこからのものか知らない」と答えた。

08 イエスは、彼らに言った「私も、何の権威によってこうした事をするのかをあなたたちに告げない」

【悪いブドウ作りの喩え】

09 イエスは、次の喩えを告げ始めた「ある人がブドウ園を造り、それを何人かの耕作人たちに貸して、長い間外国に出かけた。
10 収穫の季節に、召使いを耕作人たちのところに送って、ブドウ園の産物の分け前を集めようとした。しかし、彼らはその召使いを打ち叩いて、何も持たせずに送り返した。
11 彼は、さらに別の召使いを送ったが、彼らはその召使いをも打ち叩いて、ひどい扱いをしたが、何も持たせずに送り返した。
12 さらに三人目の者を送ったが、彼らはその召使いにも傷を負わせ、外に投げ出した。

13 ブドウ園の主人は、言った『どうしようか。私の愛する息子を送ろう。息子を見れば、彼らも敬うだろう』
14 ところが、耕作人たちは息子を見て、論じ合って言った『これは相続人だ。さあ、こいつを殺そう。そうすれば、相続財産は我々の物になる』
15 彼らは、息子をブドウ園の外に投げ出して殺した。それで、ブドウ園の主人は彼らをどうするだろうか?

16 やって来てそれらの耕作人たちを殺し、そのブドウ園をほかの者たちに与えるだろう」 人々は、それを聞くと「そんなことがあってはならない!」と言った。

17 しかしイエスは、彼らを見つめて言った「では、こう書かれているのはどういうことか? 『建てる者たちが退けた石、それが主要な隅石となった』
18 この石の上に落ちる者はすべて、粉々に砕かれ、その石が誰かの上に落ちれば、それはその者を微塵(みじん)にするだろう」

19 祭司長とパリサイ人たちは、まさにそのとき、彼に手をかけようとした。しかし、民を恐れた。イエスがこの喩えを自分たちに当てつけて話したことを知っていたからである。

【カエサルへの税金】

20 彼らは、イエスの様子を窺(うかが)って、義人のふりをしたスパイたちを遣わした。彼の言葉じりを捕らえて、総督の支配力と権威のもとに、イエスを引き渡すためであった。
21 彼らは、イエスに言った「先生、私たちはあなたが正しいことを話したり教えたりされること、誰をも依怙贔屓(えこひいき)することなく、神の道を正しく教えられることを知っています。
22 そこで、カエサルに税金を払うことは許されているでしょうか、許されていないでしょうか?」

23 しかしイエスは、彼らのずる賢さに気づいて、彼らに言った「なぜ、あなたたちは私を試すのか?
24 一デナリオス硬貨を私に見せなさい。そこにあるのは、誰の像と銘なのか?」 彼らは「カエサルのです」と言った。

25 そこで、イエスは答えた「カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい」
26 彼らは、民の前で彼の言葉じりを捕らえることができなかった。彼の答えに驚嘆し、黙ってしまった。

【サドカイ人と復活】

27 サドカイ人のある者たちが、彼のもとにやって来た。復活を信じない者たちである。

28 イエスに尋ねて言った「先生、モーセは私たちに『もしある人の兄に妻がいて、子供を残さずに死んだ場合、彼の弟がその妻をめとり、自分の兄のために子孫を起こさなければならない』と書きました。
29 ところで、七人の兄弟がいました。最初の者が妻をめとりましたが、子供を残さずに死にました。
30 二番目の者が彼女を娶(めと)りましたが、やはり子供を残さずに死にました。
31 三番目の者が彼女を娶りました。そして、同じように七人全員が子供を残さずに死にました。
32 その後、その女も死にました。

33 それでは、復活において彼女は彼らのうち誰の妻になるのですか? 七人全員が彼女を妻にしたのですから」

34 イエスは、彼らに答えた「この世の子らは、娶ったり、嫁いだりしている。
:35 だが、来生を受けて、死んだ者たちの中からの復活できる者たちは、娶ることも、嫁ぐこともない。
:36 彼らは、もはや死ぬことはあり得ないからだ。天使のようでもあり、また復活の子らとして、神の子らであるからだ。
37 だが、死んだ者たちが起こされることについては、モーセも『茨の篇』で、主を『アブラハムの神・イサクの神・ヤコブの神』と呼んで、そのことを示している。
38 この方は死んだ者たちの神ではなく、生きている者たちの神なのだ。その方にとっては、すべての人が生きているのだ」

39 律法学者たちのある者たちが、言った「先生、立派なお答えです」
40 彼らは、彼にこれ以上あえて何かを尋ねることはなかった。

【キリストはダビデの子か】

41 イエスは、彼らに言った「どうして彼らは、キリストがダビデの子だと言うのか。
42 ダビデ自身、詩編の書の中で言っている『主は、私の主に言った。私の右に座っていなさい。
43 私が、あなたの敵たちをあなたの足台とするまで』と。

44 それで、ダビデが彼を主と呼んでいるのなら、どうして彼はダビデの子なのか」

【律法学者の偽善】

45 すべての民が聞いているところで、彼は弟子たちに言った。
46 「律法学者たちに用心しなさい。彼らが好むのは、長い衣をまとって歩き回ることである。彼らが愛しているのは、市場で挨拶されること。会堂での上席や祝宴での上座。
47 彼らは、寡婦(やもめ)たちの家々を食い物にし、見せかけのために長い祈りをする者たちだ。こうした者たちは、最も厳しい裁きを受けるだろう」


第二十一章


【寡婦の寄付】

01 イエスは目を上げて、金持ちが宝物庫に彼らの供え物を入れているのを見ていた。
02 また、ある貧しい寡婦(やもめ)が小さな真ちゅうの硬貨二つを投げ入れているのも見た。

03 イエスは、言った「本当に、あなたたちに言う。この貧しい寡婦は、誰よりも多くを入れた。
04 それらの者は、みな自分のあり余る中から神への供え物を入れたが、彼女は乏しい中から生活のために持っていたものすべてを差し出したからだ」

【エルサレムの滅亡予告】

05 誰かが、神殿について美しい石や供え物で飾り立てられていることを話していた。イエスは言った。
06 「あなたたちが見ているものは、石が崩されずにほかの石の上に残ることのない日々が来る」

07 彼らは、言った「先生、それでは、それらのことはいつ起きるのですか。それらのことが起きるときの徴(しるし)は、何ですか?」
08 イエスは、言った「あなたたちは、惑わされないように注意をしなさい。多くの者が私の名を用いてやって来て『私はある』『そのときが近づいた』などと言うだろう。だから、彼らに従ってはいけません。
09 また、戦争や動乱のことを聞いて恐れてはいけない。それらのことは、まず起こるに違いないが、終わりはなかなか来ないからだ」

10 それから、彼は言った「民族は民族に、王国は王国に敵対して、立ち上がるだろう。
11 あちこちで、大地震や飢饉や伝染病がある。さまざまな恐ろしいこと、天からの大いなる徴がある」

【イエスの弟子たちにおよぶ迫害】

12 「だが、すべてのことの前に、人々はあなたたちに手をかけ、迫害し、会堂や牢屋に引き渡し、私の名のゆえに王たちや総督たちの前に引き出すだろう。

13 それは、あなたたちにとって、証言の機会ともなるであろう。
14 しかし、どのように答えようかと、前もって考える必要はありません。
15 私があなたたちに、あなたたちの反対者たち全員が反論も否定もできないような口と知恵を与えるからです。
16 あなたたちは、両親・兄弟・親族・友人たちからさえ裏切られるだろう。彼らは、あなたたちのうち何人かを死に至らせるだろう。
17 あなたたちは、私の名のゆえにすべての者たちから憎まれる。
18 でも、あなたたちの髪の毛一本さえ滅びることはない。

19 あなたたちは我慢をして、自分の命を勝ち取りなさい」

【エルサレムに対する報復の日】

20 「だが、エルサレムが軍隊に包囲されているのを見たら、荒廃が近づいたことを知りなさい。
21 ユダヤにいる者たちは、山に逃げなさい。都の中にいる者たちは、立ち去りなさい。田舎にいる者たちは、都に入ってはいけない。
22 書かれているすべてのことが、果たされる報復の日々だからです。

23 そのときに、妊娠している者たちと幼子に乳を飲ませている女は災いだ! この地には大きな苦しみがあり、この民に対しては憤りがあるからだ。
24 彼らは剣の刃に倒れ、捕虜として他の民族のもとへ引かれて行く。エルサレムは、異邦人たちの支配が終わるまで、異邦人たちによって踏みつけられるだろう。

25 太陽と月と星々に徴(しるし)があり、地上では、海と波が轟いて当惑する諸国民の不安がある。
26 人々は恐れおののき、世界に臨もうとしている事柄について想像をして気を失うだろう。天にあるもろもろの力が、揺り動かされるからだ」

【人の子の降臨】

27 「そのときに人々は、人の子が力と大いなる栄光を伴って、雲のうちから来るのを見るだろう。
28 それが起こり始めたなら、身を起こして頭を上げなさい。あなたたちの救いが近づいているからだ」

【イチジクの喩えによる王国】

29 イエスは、彼らに一つの喩えを話した「イチジクの木や、すべての木を見なさい。
30 すでに芽を出していると、あなたたちはそれを見て、もう夏が近いことを自分で知る。

31 それと同じように、あなたたちもことが起こるのを見たなら、神の王国が近いことを知りなさい。
32 本当に、はっきりとあなたたちに告げる。これらのすべてのことが実現するまでは、この世代は過ぎ去らない。
33 天と地は、過ぎ去るだろう。それでも、私の言葉は決して過ぎ去ることがないのだ」

【警戒と祈りの必要性】

:;34 「警戒をしなさい。そうでないと、暴飲暴食や泥酔、生活の思い煩いなどであなたたちの心が鈍くなり、その日が突然にあなたたちに臨むことになるであろう。
35 それはあたかも全地の表に住むすべての者たちに、罠の網のように臨むからだ。
36 だから、祈りながらいつも見張っていなさい。あなたたちが、起ころうとしているこれらすべてのことを逃れて、人の子の前に立つにふさわしいとみなされるためだ」

【日々の習慣について】

37 イエスは毎日、昼は神殿で教えた。そして、夜は出て行って、オリーブ山で過ごした。
38 民たちはすべて、彼の言うことを聞くために、朝早くから神殿にいる彼のもとにやって来た。


第二十二章


【律法学者たちの謀略とユダの呼応】

01 過ぎ越しと呼ばれる種なしパンの祭りが近づいていた。
02 祭司長と律法学者たちは、どうしたらイエスを殺すことができるかを探り求めていた。彼らは、群衆を恐れていたのである。

03 サタンが、またの名をイスカリオトという十二人の使徒に数えられていたユダに入った。
04 ユダは出て行って、祭司長や指揮官たちと、どうしたら彼がイエスを彼らに引き渡せるかについて話し合った。
05 彼らは喜んで、ユダにお金を与えることに決めた。
06 ユダは承諾し、群衆のいないときにイエスを引き渡す機会を探り求めた。

【最後の晩餐の準備】

07 種なしパンの祭りがやって来た。過ぎ越しの犠牲が捧げられなければならない日である。
08 イエスは、ペトロとヨハネに言った「行って、私たちのために過ぎ越しの食事を用意しなさい」
09 彼らは、言った「どこに用意をしたらよいのでようか?」

10 イエスは、言った「あなたたちが市内に入ると、水がめを運んでいる男に出会う。その人に付いて行き、彼の入る家に行きなさい。
11 そして、その家の主人に言いなさい。先生が『弟子たちと共に過ぎ越しの食事をする客室はどこか』そう言っていますと。
12 主人は、席の整えられた大きな階上の部屋を見せてくれるだろう。その場所で、準備をしなさい」

13 彼らは出て行き、イエスが自分たちに告げたとおりのことを見いだした。それで、彼らは過ぎ越しの用意をした。

【最後の晩餐】

14 その時刻になると、彼は十二人の使徒たちと共に席に着いた。
15 イエスは、彼らに言った「私は、自分が苦しみを受ける前に、あなたたちと一緒にこの過ぎ越しの食事をしたいと熱烈に願っていた。
16 あなたたちに告げるが、神の王国でこれが満たされるまで、私はもはやこの食事をすることはない」
17 杯を受け取り、感謝をささげてから、彼らに言った「これを取って、互いに分け合いなさい。
18 あなたたちに告げるが、神の王国が来るまで、私はもはやブドウの木からできた物を飲むことはない」

【聖体の意味と裏切り者】

19 パンを取り、感謝を捧げてからそれを裂き、彼らに与えて言った「これは、あなたたちのために与えられる私の体だ。私の思い出として、これを行ないなさい」
20 同じように、晩さんの後で杯を取ってこう言った「この杯は、あなたたちのために流される私の血による新しい契約だ。

21 しかし見よ。私を売り渡す者の手が、私と共に食卓にある。
22 確かに、人の子は定められたとおりに去って行く。だが、人の子を売り渡すその人は災いだ!」

23 使徒たちは、彼らの中で誰がそんなことをしようとしているのか、互いに尋ね始めた。

【弟子たちへの戒め】

24 さらに使徒たちの間で、誰が一番偉いと思うかに関する口論も生じた。

25 イエスは、弟子らに言った「異邦人の王たちは、人々に対して威張り散らす。そして、人々の上に権力のある者たちは『恩人』と呼ばれる。
26 だが、あなた達はそうでない。むしろ、あなた達の間で一番偉い者は一番若い者のように、支配する者は仕える者のようになりなさい。
27 なぜならば、食卓に着いている者と仕える者では、どちらが偉いのかを考えよ。偉いのは、食卓に着いている者ではないか? それでも、私は仕える者としてあなた達の中にいる。

28 あなたたちは、私に対する数々の試練のときに、ずっと私と共にいてくれた者たちだ。
29 私の父が、私に王国を授けてくださったように、私はあなたたちにそれを授ける。
30 あなたたちが私の王国で、私の食卓に着いて食べたり飲んだりするためである。あなたたちは座に着き、イスラエルの十二部族を裁くだろう」

31 イエスは言った「シモン、シモン、見よ。サタンは、あなたたちを小麦のように篩(ふる)いにかけるために、あなたたちを手に入れることを求めた。
32 私は、あなたの信仰が尽きないように、あなたのために祈った。あなたは、いったん立ち返ったなら、あなたの兄弟たちを強めなさい」

【ペトロの否定を予告した】

33 ペトロは、イエスに言った「主よ、私は牢屋にも、死に至るまでも、あなたと一緒に行く用意ができています!」
34 イエスは、言った「ペトロよ、あなたに告げる。今日雄鶏(おんどり)が鳴くまでに三度、あなたは私を知らないと言うであろう」

【不足なものがあるか】

35 イエスは、彼らに言った「私があなたたちを、財布・袋・履物も持たせずに遣わしたとき、何かに不足したか?」 彼らは、言った「何も不足しませんでした」

36 すると、イエスは彼らに言った「だが今は、財布のある者はそれを取り、袋も同じようにしなさい。何も持っていない者は、自分の外衣を売って、剣を買いなさい。
37 あなたたちに告げるが『彼は、不法な者たちと共に数えられた』と書かれているこのことは、私において果たされなければならない。私に関することは、終わりを迎えるからだ」

38 彼らは、言った「主よ、ご覧ください。ここに剣が二振りあります」
 イエスは、彼らに言った「それで十分だ」

【ゲッセマニでの祈り】

39 イエスは、ご自分の習慣どおりに、オリーブ山に行った。弟子たちも、イエスに従った。
40 その場所に来ると、イエスは彼らに言った「あなたたちは誘惑に陥らないよう、祈っていなさい」

41 そして、彼らから石を投げて届くほどの所に行って、ひざまずいて祈り始めた。
42 「父よ、もしそう望まれるなら、この杯を私から取り除いてください。それでも、私の意志ではなく、あなたのご意志がなされますように」

43 天から一人の天使が彼に現われて、イエスを励ました。
44 イエスは苦しみもだえ、ますます熱烈に祈った。彼の汗は、大粒の血の滴りのようになって地面に落ちた。

45 祈りから起き上がり、弟子たちのところに来ると、彼らが悲しみのために眠り込んでいるのを見い出した。
46 それで、彼らに言った「なぜあなたたちは眠っているのか。誘惑に陥らないよう、起きて祈っていなさい」

【イエスの捕縛】

47 イエスがまだ話しているうちに、群衆が現われた。十二人の一人でユダと呼ばれる者が、彼らの先頭に立っていた。そして、口づけをしようとしてイエスに近づいたのである。
48 イエスは、言った「ユダ。あなたは口づけで人の子を売り渡すのか?」

49 彼の周りにいた者たちは、事の次第を見て、イエスに言った「主よ、剣で撃ちましょうか?」
50 弟子のうちのある者が、大祭司の召使いに撃ちかかり、その右耳を切り落とした。

51 しかし、イエスは答えた「そこまでにしなさい」 そして、彼の耳を触って、彼を癒した。
52 イエスは、自分に向かって来た祭司長・神殿の指揮官・長老たちに言った「あなたたちは強盗に対するかのように、剣とこん棒を持って出て来たのか?
53 私は、毎日あなたたちと一緒に神殿にいて教えていたのに、あなたたちは私に向かって手を出さなかった。だが、今はあなたたちのとき、闇の支配だ」

【ペトロが三度イエスを否定する】

54 彼らはイエスを捕まえ、引いて大祭司の家に連れて来た。ペトロは、遠くから付いて行った。
55 人々は、中庭の真ん中に火を焚いて一緒に座った。ペトロも、彼らの中で腰を下ろした。
56 召使いの女が、彼が明るいところに座っているのを見た。そして、彼をじっと見つめて言った「この男も、イエスと一緒にいました」
57 ペトロは、イエスを否認して言った「女よ、私は彼を知らない」

58 しばらくして、他の者が彼を見て言った「あなたも、彼らの一人だ!」 しかし、ペトロは答えた「いや、私は違う!」

59 一時間ほどすると、別の者が自信満々に断言した「確かに、この男も彼と一緒にいた。ガリラヤ人だからだ!」
60 ペトロは、言った「私は、あなたたちの話していることを知らないのだ!」 彼がまだ話している間に、雄鶏が鳴いた。
61 イエスは振り返って、ペトロを見つめた。そこでペトロは「今日雄鶏(おんどり)が鳴くまでに三度、あなたは私を知らないと言うであろう」と、イエスが自分に言った言葉を思い出した。
62 ペトロは、外に出て激しく泣いた。

【イエスに対する嘲り】

63 イエスを拘留していた者たちは、彼をなぶりものにし、殴りつけた。
64 彼に目隠しをして顔を打ち、彼に言った「預言しろ! お前を打ったのは誰か?」
65 彼らは、イエスを侮辱しながら、多くの嘲りを話しかけた。

【最高法院での問答】

66 朝になると、民の長老たちの会は、祭司長も律法学者も共に集まり、彼を最高法院に引いて行き、こう言った。
67 「もしもお前がキリストなら、我々に告げよ」 しかし、イエスは彼らに言った「あなたたちに告げたとしても、あなたたちは信じないだろう。
68 尋ねたとしても、あなたたちは私に答えたり、私を解放したりはしないだろう。
69 今後、人の子は神の力の右に座ることになる」

70 皆は言った「それなら、お前は神の子か?」 イエスは、彼らに答えた「そのとおり、私はそれだ」

71 彼らは、言った「これ以上証人がなぜ必要だろうか。我々自身が、本人の口から聞いたのだ!」


第二十三章


【ピラトの尋問】

01 彼らの全員は立ち上がって、イエスをピラトの前に連れて行った。
02 彼らは、イエスを訴えて言った「私たちは、この男が国民を惑わし、カエサルに税を払うのを禁じ、自分が王なるキリストだと言っているのを見い出しました」

03 ピラトは、彼に尋ねた「お前は、ユダヤ人の王なのか」 イエスは、ピラトに答えた「そのとおり」

04 ピラトは、祭司長たちと群衆に言った「私は、この男に対して訴える根拠を何も見い出さない」
05 しかし、彼らは言い張った「彼は、ユダヤのあちこちで教えながら、民を扇動しているのです。しかもガリラヤから始めて、この場所にまで至ったのです」

06 ガリラヤと聞いて、ピラトはこの男がガリラヤ人かどうかを尋ねた。
07 そして、彼がヘロデの管轄内にあることを知ると、ピラトは彼をヘロデのもとに送った。ヘロデも、そのころエルサレムにいたのである。

【ヘロデの尋問】

08 ヘロデは、イエスを見ると非常に喜んだ。彼について、多くのことを耳にしていたため、以前から彼を見てみたいと思っていたからだ。彼が、何かの奇跡を行なうのを見たいとも望んでいた。
09 ヘロデは、多くの言葉で質問をしたが、イエスは何も答えなかった。

10 祭司長と律法学者たちが立っており、激しく彼を訴えていた。
11 ヘロデも自分の兵士たちと一緒になって彼を辱め、彼をなぶりものにした。そして、自分の豪華な衣を着せて、彼をピラトのところに送り返した。

12 まさにその日、このことでヘロデとピラトは互いに友人になった。それまでは、互いに敵対していたのである。

【再び戻ってピラトの前で】

13 ピラトは、祭司長・支配者・民を呼んだ。
14 そして、彼らに言った「お前たちは、民を惑わす者としてこの男を私のところに連れて来た。私は尋問をしたが、この男に対してお前たちが訴えている事柄について、その根拠を何も見いだせなかった。

15 ヘロデも、まったく同じだ。だから、この男を送り返してきた。彼は、死に値することを何もしていない。
16 彼を鞭打ってから、釈放することにする」

【イエスとバラバ】

17 ピラトは祭りの際に、囚人を一人釈放する慣例になっていた。
18 彼らは、叫んで言った「その男を取り除け。バラバを釈放しろ!」
19 このバラバとは、都で暴動を起こし、人殺しをして牢屋に入れられていた者である。

20 ピラトは、イエスを解放したいと思い、再び彼らに語りかけた。
21 しかし、彼らは叫んで言った「十字架だ。彼を十字架にしろ!」

22 ピラトは、三度目に彼らに言った「なぜだ。この男がどんな悪事をしたというのか。私は、死刑に値する犯罪を何も見い出さなかった。だから、私は彼をむち打ってから、彼を釈放することにする」
23 彼らは、彼を十字架にするように求めて、執拗に大声で迫った。彼らの声と祭司長たちの声が、優勢になった。

24 そこで、とうとうピラトは彼らの要求どおりにする布告を出した。
25 暴動と殺人のかどで牢屋に入れられていた者、彼らが求めていたバラバを釈放し、イエスを彼らの思いのままにさせた。

【苦しみの道】

26 イエスを引いて行くとき、彼らは田舎から出てきたキュレネ人のシモンを捕まえた。そして、彼に十字架を負わせ、イエスの後ろから運ばせた。
27 大群衆と、彼のために嘆き悲しむ女たちが、彼に従った。

28 イエスは、彼女たちのほうに振り向いて言った「エルサレムの娘たちよ、私のために泣いてはいけない。むしろ、自分と自分の子供たちのために泣きなさい。
29 人々が『不妊の女と、生まなかった胎と、乳を飲ませなかった乳房とは幸いだ』と言う日々が、来ようとしているからだ。
30 そのとき、人々は山々に向かって『我々の上に倒れてくれ!』と言い、丘に向かって『我々を覆ってくれ!』と言い始めるだろう。
31 というのも、青々とした木において彼らがこれらのことをするのであれば、枯れ木においてはいったい何がなされるだろうか?」

32 彼らは、他の二人の犯罪者も、イエスと共にいっしょに殺すために引いて行った。

【イエスが十字架にかかる】

33 「どくろ(=されこうべ)」と呼ばれている場所にやって来ると、イエスを他の二人の犯罪者たちと共に十字架につけた。一人はその右に、もう一人はその左に置いた。

34 イエスは、言った「父よ、彼らを許してください。自分たちが、何をしているか知らないのです」 兵士たちは、互いにイエスの外衣を分けようとして籤(くじ)を引いた。
35 民は、立って見ていた。支配者たちも、彼をあざ笑って言った「多くの他人を救ったのだ。もしも神のキリスト、その選ばれた者なら、自分を救うがよい!」

36 兵士たちも、彼をなぶりものにした。彼のもとに来て、酢を差し出した。
37 そして、言った「もしも、お前がユダヤ人の王なら、自分を救え!」

38 彼の上には「これはユダヤ人の王」と、ギリシャ語・ラテン語・ヘブライ語で書かれた板があった。

【二人の罪人】

39 十字架に掛けられた犯罪者の一人が、イエスを侮辱して言った「もしも、お前がキリストならば、自分自身と我々を救え!」

40 しかし、もう一人の者が答えて、彼を叱りつけた「お前は、同じ刑罰を受けているのに、神を恐れないのか。
41 確かに、我々には当然のことだ。自分の行ないに応じて、その報いを受けているのだから。だが、この人は何も不正なことをしていないのだ」
42 彼は、イエスに言った「主よ。あなたがご自分の王国に入られるときには、私のことを思い出してください」

43 イエスは、彼に言った「確かに、あなたに告げる。今日、あなたは私と共にパラダイスにいるだろう」

【イエスの死】

44 昼の十二時ごろになっていたが、闇が全土を覆い、三時にまで及んだ。
45 太陽が暗くなり、神殿の幕が二つに裂けた。
46 イエスは、大声で叫んだ「父よ。あなたのみ手に、私の霊をゆだねます!」 こう言ってから、息を引き取った。

47 百人隊長は、起きたことを見ると、神に栄光を捧げて「確かに、この人は義人だった」と言った。
48 見物に集まっていた群衆は、一部始終を見ると、胸を打ちながら帰って行った。
49 彼のすべての知人たちと、ガリラヤから彼に従ってきた女たちとは、遠くに立ってこれらのことを見届けていた。

【イエスの埋葬】

50 ヨセフという人がいた。最高法院の議員であり、善良な正しい人であった。
51 彼は、この一連の企てや行動には同意していなかった。ユダヤ人の町アリマタヤの出身で、やはり神の王国を待ち望んでいた。
52 この人が、ピラトのところへ行って、イエスの体を渡してくれるようにと願い出た。
53 彼は、イエスを取り降ろして亜麻布に包んだ。そして、岩に切り掘った誰も横たえられたことのない墓に横たえた。

54 その日は準備日であり、安息日が近づいていた。
55 イエスと共にガリラヤから来ていた女たちは、後に付いて行って、その墓と彼の体が横たえられる様子とを見ていた。
56 彼女たちは帰って行き、香料と香油を準備した。安息日には、掟に従って休息をした。


第二十四章


【イエスの復活】

01 週の初めの日の明け方早く、彼女たちと他の幾人かは、準備した香料を持って墓にやって来た。
02 すると、墓から石が転がしてあるのを見つけた。
03 中に入ると、イエスの体が見つからない。

04 それで、途方に暮れていた。そこに、まばゆい衣を着た二人の天使が現われた。
05 彼女たちは恐くなって、地に顔を伏せた。彼らは言った「あなたたちはなぜ、生きている者を死んだ者たちの間に探し求めるのか?
06 彼は、ここにはいない。起こされたのだ。彼がガリラヤにいたときに、あなたたちに告げたことを思い出しなさい。
07 人の子は、罪深い者たちの手に引き渡され、十字架にかかり、三日目に生き返らなければならない、と言ったではないか」

08 彼女たちは。イエスの言葉を思い出した。

09 墓から戻って、十一人の弟子と残りの全員に、これらのすべてのことを告げた。
10 ところで、その女たちはマリア=マグダレネ・ヨハンナ・ヤコブの母マリアであった。彼女たちと一緒にいたほかの女たちも、使徒たちにこれらのことを告げた。

11 その話は、彼らには馬鹿げたことのように思われたので、彼女たちの言ったことは信じてもらえなかった。
12 しかし、ペトロは立ち上がって、墓に走って行った。そして、身をかがめて中を覗くと、亜麻布だけが置かれていた。起きたことを不思議に思いながら、家に帰った。

【エマオに向かった弟子たち】

13 まさにその日、彼らのうちの二人がエルサレムから六十スタディアのところにあるエマオ村へ向かっていた。
14 歩きながら、起きたすべての事柄について、互いに語り合っていた。
15 彼らが語り、論じ合っていると、イエス自身が近づいて来て、彼らと一緒に歩んだ。
16 しかし、彼らの目には彼を見分けられないままでいた。
17 イエスは、彼らに言った「あなたたちが歩きながら語り合って、悲しんでいることはいったい何ですか」

18 彼らの一人でクレオパという者が、答えた「あなたはエルサレムにいたのに、このごろそこで起こったことを知らないのですか?」
19 彼は、彼らに言った「どんなことですか?」 「ナザレ人イエスに関することです。彼は、神と民すべての前で、業と言葉において強力な預言者でした。
20 祭司長と私たちの支配者は、彼を死の裁きに引き渡し、十字架にかけたのです。
21 私たちは、彼こそイスラエルを救ってくださる方だと期待していました。そればかりでなく、これらのことが起こってからもう三日になるのです。

22 その上、仲間の女たちが私たちを驚かせました。彼女たちは、朝早く墓に着きました。
23 しかし、彼の体が見つからずに戻って来て、天使たちが彼は生きていると告げる幻まで見たと言うのです。
24 私たちのうちの何人かが墓に行ってみると、まさに女たちが言ったとおりだと知りました。そして、彼は見当たりませんでした」

【イエスに気づかない二人の弟子】

25 イエスは、彼らに言った「預言者たちが語ったすべてのことを信じるのに、愚かで、心の鈍い者たちよ!
26 キリストはこれらの苦しみを受けて、自分の栄光に入って行くはずではなかったのか?」

27 そして、イエスはモーセとすべての預言者たちから始めて、聖書全体から、自分自身に関する事柄を彼らに説明した。
28 彼らは向かっていた村に近づいたが、イエスはさらに進んで行く様子である。

29 彼らは、イエスを促して言った「私たちと一緒にお泊まりください。夕方になりかけていますし、日も傾きかけていますから」 そこで、イエスは彼らと一緒に泊まるために入って行った。
30 彼らと共に食卓に着いたとき、彼はパンを取って感謝をささげた。それを裂いて彼らに与えた。

【二人の弟子に再来したことを報告する】

31 彼らの目が開かれて、それがイエスだと分かった。すると、イエスは彼らの面前から見えなくなった。
32 彼らは、互いに言った「あの方が、道を行きながら私たちに語っていいたとき、また私たちに聖書を解き明かしていたとき、私たちの心は私たちの内で燃えていなかっただろうか?」
33 すぐに立ち上がって、エルサレムに戻った。十一人の弟子および彼らと共にいる者たちが集まっていた。
34 「主は確かに甦って、シモンに現われたのだ!」と言っているのを見いだした。
35 二人は、道の途中で起こったことや、パンを裂いているときにイエスだと分かった様子などについて詳しく報告をした。

【使徒たちへの再来】

36 彼らが、これらのことを話していると、イエス自身が彼らの間に立ち、彼らに言った「あなたたちに、平安があるように」
37 しかし、彼らはおびえて恐れに満たされ、霊を見ているものとばかり思った。

38 イエスは、言った「なぜあなたたちは、動転をしているのか。あなたたちの心に、疑いが生じるのはなぜか。
:39 私の両手と両足を見なさい。まさしく私だ。私に触り、また見なさい。霊には、あなたたちが私に見るような肉や骨はないのだ」
40 こう言ってから、自分の両手と両足を彼らに見せた。
41 彼らが、喜びのあまり信じられずに不思議に思っていると、イエスは彼らに言った「あなたたちは、何か食べる物を持っているか?」

:42 彼らはイエスに、一切れの焼き魚と、幾つかのハチの巣を出した。
43 イエスはそれらを取って、彼らの前で食べた。

【最後の教え】

44 彼らに言った「これは、私がまだあなたたちと一緒にいたとき、あなたたちに告げたことなのだ。つまり、私について、モーセの律法と預言者たちと詩編の中で書かれているすべての事柄は、必ず果たされるということだ」

45 それから、イエスは彼らの知力を開き、彼らが聖書を理解できるようにした。
46 彼らに言った「このように書いてあり、このようなことがキリストに要求されている。つまり、苦しみを受け、三日目に死んだ者たちの中から生き返る。
47 悔い改めと罪の許しが、エルサレムから始まって、彼の名においてあらゆる民族に告げられることだ。

48 あなたたちは、それらのことの証人だ。
49 私はあなたたちの上に、私の父が約束されたものを送り出す。だが、高い所からの力に包まれるまでは、エルサレムの都に待機していなさい」

【イエスの昇天】

50 それからイエスは、彼らをベタニアまで連れて行き、両手を上げて彼らを祝福した。
51 彼らを祝福している間に、彼らから離れて行き、天に運び上げられた。
52 彼らはイエスを拝み、大きな喜びをもってエルサレムに戻って行った。
53 そして、絶えず神殿にいて、神を賛美したのである。


Kuroda Kouta (2005.11.11/2007.02.13)