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この資料に関するコメント

  旧約聖書から抜粋



コヘレットの書(Ecclesiastes・伝道の書)全


第一章

【はじめの言葉】

01 エルサレムの王でダビデの子、コヘレットの言葉。
02 空(くう)の空、空しい(むなしい)ことの空しさ、一切(いっさい)は空。
03 この世でするすべての苦労は、その身に何(なん)の利益があるのだろうか?

【新しいものは何もない】

04 一代が去り、また次の一代が来る。しかし、地は永遠に変らない。
05 日は昇り、日は沈む。そして、また出た所に帰って行く。
06 風は南に吹き、また転じて北に向かい、めぐりめぐって再びもとのところに帰る。
07 川はみな海に流れ入るが、海は満ちることがない。川も、その出てきた所に帰って行く。
08 すべてのことが、物憂い(ものうい)。目は見ることに飽きることがなく、耳は聞くことに満足することがない。などと言う人はあるまい。
09 先にあったことは、また後にもある。先になされた事は、また後にもなされる。太陽の下に、新しいものはない。
10 「見よ、これは新しいものだ。」
と言われるものがあるか?
 それは、私たち(わたしたち)の前にあった世々にも、すでにあったものである。
11 昔の者のことは、忘れられてしまう。
 また、次に来る後の者のことも、さらに後の者はこれを覚えていない。

【学問をすることの空しさ】

12 伝道者である私(わたし)はエルサレムで、イスラエルの王であった。
13 私は心をつくし、知恵を用いて、天下に行われるすべてのことを尋ね、また調べた。それは神が、人間に与えた苦しい仕事である。
14 私はこの世で人が行うすべての技(わざ)を見たが、みな空であって風を捕えるようなものである。
15 曲ったものは、まっすぐにすることができない。欠けたものは、数えることができない。
16 私は、心の中に語って言った。
 「私は、私より先にエルサレムを治めたすべての者に勝って(まさって)、多くの知恵を得た。私の心は知恵と知識を多く得た」。
17 私は心をつくして知恵を知り、また狂気と愚痴とを知ろうとした。しかし、これもまた風を捕えるようなものであると悟った。
18 なぜならば、知恵が多ければ悩みが多く、知識を増す者は憂いを増すからである。


第二章

【快楽の空しさ】

01 私は自分の心に言った。
 「さあ、快楽をもって、おまえを試みよう。おまえは愉快に過ごすがよい。」
 しかし、これもまた空であった。
02 私は笑いについて言った。
 「これは狂気である。」
 また、快楽について言った。
 「これは何をするのか?」
03 私の心は、知恵をもって私を導いている。そこで、私は酒をもって自分の肉体を元気づけようと試みた。また、人間が天下でその短い一生の間、どんな事をしたら良いかを見きわめるまでは、愚かな事をしようと試みた。
04 私は大きな事業をした。私は自分のために家を建て、ぶどう畑を設け、
05 園と庭をつくり、またすべて実のなる木をそこに植え、
06 池を造って(つくって)、木の生い(おい)茂る林に、そこから水を注がせた。
07 私は男女の奴隷を買った。また私の家で生れた奴隷もいた。私は、また私より先にエルサレムにいた誰よりも多くの牛や羊の財産を持っていた。
08 私はまた銀と金を集め、王たちと国々の財宝を集めた。また私は歌うたい、歌うたいの女を得た。また人間の楽しみとするそばめを多く得た。

09 こうして、私は偉大な人間になり、私より先にエルサレムにいたすべての者よりも偉大な人間になった。私の知恵もまた、私は失わなかった。
10 私の目の好むものはすべて満足させ、私の心の喜ぶものは拒まなかった。私の心が自分のすべての労苦によって、快楽を得たからである。それらは、私のすべての労苦によって得た報いであった。
11 そこで、私はわが手のなしたすべてのこと、それをなすに必要だった労苦を振り返って見たとき、どうしたことだ、すべて空しいことで、風を捕えるようなことだった。この世には、何一つ利益になるものはない。

【知恵の空しさ】

12 私はまた、身をめぐらして、知恵と、狂気と、愚痴に思いを巡らした。そもそも、王の後継者は何をなし得ようか? すでに以前なしたことをするにすぎない。
13 光が暗さに勝るように、知恵が愚痴に勝るのを私は知った。
14   知者は、自分の前を見る。
    しかし、愚者は手探りで歩く。
 その通りだ。けれども、私は彼らが同じ運命を歩む(あゆむ)ことを知っている。
15 私は、心に言った。
 「愚者に臨む事は私にも臨む。それで、どうして私が賢いのであろうか?」
 私は、また心に言った。
 「これもまた空である。」
16 そもそも、知者も愚者も同様に長く記憶に残らない。ある日、忘れられてしまうのである。知者が愚者と同じように死ぬのは、どうしたことであろうか?
17 そこで、私は生きることがいやになった。この世に行われる技(わざ)は、私に悪く見えたからである。皆空であって、風を捕えるようなものである。

18 私は、この世でしたすべての労苦を憎んだ。私の後継者に、それを残さなければならないからである。
19 そして、その人が知者であるか、または愚者であるかは、だれが知り得ようか? そうであるのに後継者が、この世で私が労したり、かつ知恵を働かしてなしたすべての労苦を司る(つかさどる)ことになる。これもまた、空である。
20 私は、振り返ってみて、この世で私が労したすべての労苦について望みを失った。
21 今ここに人があって、知恵と知識と才能をもって労しても、何も労しない人にすべてを残して、その所有とさせなければならない。これもまた空であって、ばからしい。
22 そもそも、人はこの世で労するすべての労苦と心配によって、なんの得るところがあるか?
23 すべての日は、ただ憂いのみである。その技(わざ)は苦しく、その心は夜も休まることがない。これもまた、空である。
24 人は飲み食いをして、その労苦によって得たもので、心を楽しませるよりよりも良いことはない。これもまた神のなせる技であることを、私は見た。
25 神を離れて、食い、かつ楽しむことのできる者は誰もいないであろう。
26 神は、その心にかなう人に、知恵と知識と喜びとを与える。しかし、罪びとには仕事を与えて集めることと、積むことをさせられる。そして、それは神の心にかなう者にそれを賜わるためである。これもまた空であって、風を捕えるようなものだ。


第三章

【すべてのものに対してタイミングがある】

01 この世のすべての事には時(とき)があり、すべての技(わざ)には時期(じき)がある。
02  生れる時があり、死ぬ時があり。
    植える時があり、抜く時があり。
03  殺す時があり、治す時がある。
    壊す時があり、建てる時がある。
04  泣く時があり、笑う時がある。
    嘆く時があり、踊る時がある。
05  石を投げる時があり、石を拾う時がある。
    抱く時があり、抱くのをやめる時がある。
06  捜す時があり、失う時がある。
    守る時があり、捨てる時がある。
07  裂く時があり、縫う時がある。
    黙る時があり、語る時がある。
08  愛する時があり、憎む時がある。
    戦う時があり、和睦(わぼく)する時がある。

【ケセラセラ】

09 働く者は、その労働によって何の益を得るか?
10 私は神が人間らに与えて、骨を折らせる仕事を見た。
11 神のなされることは、皆その時々にかなって美しい。神はまた、人の心に永遠を考える力を授けた。それでもなお、人は神のなす技(わざ)を初めから終りまで見きわめることはできない。
12 私は、知っている。人はその生きている間、楽しく愉快に過ごすより他に良い事はない。
13 またすべての人が飲み食いして、すべての労苦によって楽しみを得ることは神の賜物である。

14 また私は、知っている。すべて神がなさる事は、永遠に変ることがない。これに加えることも、これから取ることもできない。神がこのようにするのは、人々が神の前に恐れをもつようにするためである。
15 今あるものは、すでにあったものである。後にあるものも、すでにあったものである。
 神は、追われるものを愛する。

【社会のアンバランス(第四章03まで)】

16 私はまた、この世を見た。そこには、裁き(さばき)をする所にも不正があり、公義をする所にも不正がある。
17 私は、心に言った。
 「神は正しい者と悪い者とを裁く。神はすべての事と、すべての技に、時を定めたからである。」
18 私はまた、人間たちについて心に言った。
 「神は彼らを試して、彼らに自分たちが獣にすぎないことを悟らせられるのである。」
19 人間の行く末と、獣の行く末は同じである。人間も死に、獣も死ぬ。すべて同様の息をもっていて、人は獣に勝るところがない。すべてのものは、空だからである。
20 みな同じ所に行く。いずれも塵(ちり)から出て、塵に帰る。
21 だれも知らない。人間の霊は上にのぼり、獣の霊は地に下るのかを。
22 それで、私は見た。人はその働きによって、楽しむにこした事はない。これが彼の分だからである。だれが彼に、その後どうなるかを見させることができようか?


第四章

01 私はまた、この世で行われる虐げ(しいたげ)を見た。虐げられる者の涙を見てご覧。彼らを慰める者はいない。虐げる者の手には権力がある。しかし、彼らを慰める者はいない。
02 それで、私はまだ生きている者よりも、すでに死んだ死者を幸いだと思った。
03 しかし、この両者よりも幸いなのは、まだ生れない者で、この世に行われる悪しき技(わざ)を見ない者である。

【何のために働くのか】

04 また、私はすべての労苦と、すべての巧みな技(わざ)を見た。これは人が互に妬み(ねたみ)あってなすものである。これもまた空であって、風を捕えるようである。
05  愚かなる者は手をつかねて、
    自分の肉を食う。
06  片手に物を満たして平穏であるのは、
    両手に物を満たして労苦し、風を捕えるのに勝る(まさる)。

07 私はまた、この世に空なること(事)のあるのを見た。
08 ある人がいる。一人(ひとり)であって、仲間もなく、子もなく、兄弟もいない。それでも、彼の労苦は窮まりなく、その目は富に飽くことがない。また彼は、言わない。
 「私は誰のために労するのか、どうして自分を楽しませないのか?」
 これもまた空であって、苦しい技(わざ)である。

【助け合い】

09 二人は、一人にまさる。彼らは、その労苦によって良い報いを得るからだ。
10 すなわち、彼らが倒れる時には、その一人がその友を助け起す。しかしひとりで倒れる時に、これを助け起す者がいない者は災いである。
11 また二人が一緒に寝れば、暖かい。一人だけでは、どうして暖かになるか?
12 別な人がもしも、その一人を攻め撃ったなら、二人でそれに当るだろう。三つ撚り(みつより)の綱は、たやすくは切れない。

13 貧しくて賢い若者は、老いて愚かで言うことを聞かない王にまさる。
14 その王が獄屋から出て、王位についた者であっても、また自分の国に貧しく生れて王位についた者であっても、そうである。
15 私はこの世に歩むすべての民が、その若者のように王に代って立つのを見た。
16 すべての民は、果てしがない。彼はそのすべての民を導いた。しかし後に来る者は、彼を喜ばない。これもまた空であって、風を捕えるようである。


第五章

【神に対するつとめ】

01 神の宮に行く時には、その足を慎むがよい。近よって聞くのは、愚かな者の犠牲をささげるのに勝る。彼らは、悪を行っていることを知らないからである。
02 神の前で軽々しく口を開き、また言葉を出そうと心に焦って(あせって)はならない。神は天にいて、あなたは地にいるからである。それゆえ、あなたは言葉を少なくせよ。

03  夢は仕事の多いことによってきたり、
    愚か者の声は、言葉の多いことによって知られる。
04 あなたは神に誓いをなすとき、それを果すことを延ばしてはならない。神は愚かな者を喜ばれないからである。あなたの誓ったことを必ず果せ。
05 あなたが誓いをして果さないよりは、むしろ誓いをしないほうがよい。
06 あなたの口が、あなたに罪を犯させないようにしなさい。また使者の前で、それは誤りであったと言ってはならない。神があなたの言葉を怒り、あなたの手の技(わざ)を滅ぼしてしまうからである。

【世の中には不正がある】

07  夢が多ければ空なる言葉も多い。
    しかし、あなたは神を恐れよ。
08 あなたは国のうちに貧しい者を虐げ、公道と正義を曲げることのあるのを見ても、それを怪しんではならない。それは位の高い人よりも、さらに高い者があって、その人を窺う(うかがう)からである。そして、さらに高い者もいる。
09 要するに、耕作した田畑をもつ国は、王の利益である。
10:  金銭を好む者は、金銭をもって満足しない。
    富を好む者は富を得て満足しない。
 これもまた空である。
11  財産が増せば、
    寄食者も増す。
 その持ち主は、財産を眺めるだけで、なんの益があるのか?

【無駄な労苦】

12 働く者は、食べることが多くても少なくて快眠する。しかし、飽き足りるほどの富は、眠ることを許さない。
13: 私は、この世に悲しむべき悪のあるのを見た。すなわち、富はこれを貯える持ち主に害を及ぼすことである。
14 また、その富が不幸な出来事によって失せていくことである。それで、その人の子がいても、子の手には何も残らない。
15: 彼は母の胎から出てきたように、すなわち裸で帰って行く。彼はその労苦によって得た何物も、手に携え行くことができない。
16 人は、まったく来たように去って行かなければならない。これもまた悲しむべき悪である。風のために労する者には、何の益があるか?

【神の賜物】

17: 人は一生、暗闇(くらやみ)と、悲しみと、多くの悩みと、病と、憤りの中にある。
18 私が見たよいこと、美なる事は、神から賜わった短い一生の間、食い、飲み、かつこの世で労するすべての労苦によって、楽しみを得ることである。これが、その分だからである。
19 また神はすべての人に富と宝と、それを楽しむ力を与え、またその分を取らせて、その労苦によって楽しみを与える。それが、神の賜物である。
20 このような人は、自分の生きる日のことを多く思わない。神は喜びをもって、彼の心を満たすからである。


第六章

【望みは満たされないまま】

01 私は、この世に一つの悪があるのを見た。これは、人々の上に重い。
02 すなわち、神は富と、財産と、誉(ほまれ)とを人に与えて、その心に慕うものを、一つも欠けることのないようにする。しかし神は、その人に持つことを許されないで、他人がこれを持つようになる。これは、空である。悪しき病である。
03 百人の子をつくり、また命長く、その齢(よわい)の日が多くても、その心が幸福に満足せず、また葬られることがなければ、私は言う、流産の子はその人に勝る(まさる)と。
04 これは、空しくやって来て、暗闇(くらやみ)の中に去って行き、その名は暗闇におおわれる。
05 また、これは日を見ずに物を知らない。けれども、これは彼よりも安らかである。
06 たとい彼は千年に倍するほど生きても幸福を味わえない。みな一つ所に行くのではないか?
07: 人の労苦は皆、その口のためである。しかし、その食欲は満たされない。
08 賢い者は愚かな者に、何の勝るところがあるか? また生ける者の前に歩むことを知る貧しい者も、何の勝るところがあるのか?
09 目に見る事は、欲望のさ迷い歩くに勝る。これもまた空であって、風を捕えるようなものである。

10 今あるものは、すでにその名が付けられた。そして、人はいかなる者であるかは知られた。したがって、人は自分よりも力強い者と争うことはできない。
11: 言葉が多ければ空しいことも多い。人に、何の益があるか?
12 人はその短く、空しい命の日を影のように送るのに、何が人のために善であるかを知ることができるでしょう。だれがその身の後に、この世に何があるであろうかを人に告げることができるのでしょうか?


第七章

【よいこともある】

01  名声は、良い香油に勝り、
    死ぬ日は、生まれる日に勝る。
02  喪中の家に入るのは、宴会の家に入るのよりもよい。
    なぜならば、死はすべての人の終りだからである。
    生きている者は、これを心にとめる。
03  悲しみは、笑いにまさる。
    顔に憂いをもつことによって、心は良くなるからである。
04  賢い者の心は喪中の家にあり、
    愚かな者の心は、楽しみの家にある。
05  賢い者の戒めを聞くのは、
    愚かな者の歌を聞くのに勝る。
06  愚かな者の笑いは、竈(かまど)の下に燃える茨(いばら)の音のようである。
    これもまた空である。
07  たしかに、虐げ(しいたげ)は賢い人を愚かにし、贈り物は人の心を迷わせる。
08  事の終りは、その初めよりも良い。
    忍耐は、おごり高ぶる心にまさる。

09 気をせきたてて、怒るな。怒りは、愚かな者の胸に宿るからである。
10:  「昔のほうが、今よりもよかった。」
と言うな。それは、知恵が出す問題ではない。

【知恵と忠告】

11 知恵に財産が伴うのは良い。それは、日を見る者どもに益がある。
12 知恵が身を守るのは、金銭が身を守るようである。しかし、知恵はこれを持つ者に生命を保たせる。これが知識のすぐれた所である。
13 神の技(わざ)を考えみよ。神の曲げたものを誰がまっすぐにできるか?
14 順境の日には楽しめ、逆境の日には考えよ。神は人に将来どういう事があるかを、知らせないために彼とこれとを等しく造られたのである。

15: 私はこの空しい人生において、いろいろなことを見た。そこには義人がその義によって滅びることがあり、悪人がその悪によって長生きすることがある。
16 あなたは、義に過ぎてはならない。また賢きに過ぎてはならない。あなたは、どうして自分を滅ぼしてよかろうか?
17 悪に過ぎてはならない。また愚かであってはならない。あなたはどうして、自分の時がこないのに、死んでよかろうか?
18 あなたが一つを執って、他も手から離さないようにするがよい。神を恐れる人は、その両方を持つことができる。

【知恵について】

19 知恵が知者を強くするのは、十人の司(つかさ)が町にいるのに勝る。
20 善を行って、罪を犯さない正しい人は世にいない。
21 人の語るすべての事に心をとめてはならない。これはあなたが、自分のしもべがあなたを呪う言葉を聞かないためである。
22 あなたもまた、しばしば他人を呪った自分の心に知っているからである。

23 私は知恵をもってこのすべての事を試みて、
 「私は知者となろう。」
と言ったが、遠く及ばなかった。
24 物事の理は遠く、はなはだ深い。だれがこれを見いだすことができよう。
25 私は、心を転じて物を知り、事を探り、知恵と道理を求めようとし、また悪の愚かなこと、愚痴の狂気であることを知ろうとした。

【女性観など】

26 私は、その心が罠(わな)と網のような女、その手が枷(かせ)のような女は、死よりも苦い者であることを見いだした。神を喜ばす者は、彼女からのがれる。しかし、罪びとは彼女に捕えられる。

27 伝道者は言う、見よ、その数を知ろうとして、いちいち数えて、私が得たものはこれである。
28 私はなおこれを求めたけれども、得なかった。私は千人のうちにひとりの男子を得たけれども、そのすべてのうちに、一人の女子をも得なかった。
29 見よ、私が得たことは、ただこれだけである。すなわち、神は人を正しい者に造られたけれども、人は多くの計略を考え出した。


第八章

【王に対する対処法】

01  だれが知者のように、
    問題の解決ができようか?
    人の知恵はその人の顔を輝かせ、
    またその粗暴な顔を変える。
02 王の命令を守れ。すでに、神をさして誓ったことゆえ、驚くな。
03 事が悪い時は、王の前を去れ、ためらうな。彼はすべてその好むところをなすからである。
04 王の言葉は決定的である。だれが彼に、
 「あなたは何をするのか?」
と言うことができようか?
05 命令を守る者は災にあわない。知者の心は、時と方法をわきまえている。
06 人の悪が彼の上に重くても、すべての技(わざ)には時と方法がある。

07 後に起る事を知る者はない。どんな事が起るかをだれが彼に告げることができるか?
08 風をとどめる力をもっている人はいない。また死の日を司る(つかさどる)ものはない。
 戦いには、免除はない。また、悪はこれを行う者を救うことができない。

【この世を見て知ったこと】

09 私は、このすべての事を見た。またこの世に行われるもろもろの技(わざ)に心を用いた。時としてはこの人が、かの人を治めて、これに害を与えることがある。
10 また、私は悪人の葬られるのを見た。彼らはいつも聖所に出入りし、その町で誉め(ほめ)られた。これもまた、空である。
11 悪いことをした人に対する判決がすみやかに実施されないために、人間らの心はもっぱら悪を行うことに傾いている。
12 罪びとが百回も悪をなして、なお長生きするものがある。しかし、神をかしこみ恐れをいだく者には幸福があることを、私は知っている。
13 いっぽう、悪人には幸福がない。またその命は影のようであって、長く続かない。彼は神の前に、恐れをいだかないからである。
14 地の上に、空な事が行われている。すなわち、義人であって、悪人に臨むべきことが、その身に臨む者がある。また、悪人であって、義人に臨むべきことが、その身に臨む者がある。
 私は言った、これもまた空であると。

15 そこで、私は歓楽を讃える(たたえる)。それはこの世では、人にとって、飲み、食い、楽しむよりほかに良い事はないからである。
 これこそはこの世で、神から賜わった命の日の間、その勤労によってその身に伴うものである。

【将来のことはわからない(第九章02まで)】

16 私は心をつくして知恵を知ろうとし、また地上に行われる技(わざ)を昼も夜も眠らずに窮めようとしたとき、
17 私は神のもろもろの技を見たが、人はこの世に行われる技を窮めることはできない。人はこれを尋ねようと苦労しても、窮めることはできない。また、例えば知者がこれを知ろうと思っても、窮めることはできないのである。


第九章

01 私は、このすべての事に心を用い、このすべての事を明らかにしようとした。すなわち、正しい者と賢い者、および彼らの技(わざ)が、神の手にあることを明らかにしようとした。愛するか憎むかは、人にはわからない。彼らの前にあるすべてのことは、空である。
02: すべての人に臨むところは、みな同様である。正しい者にも正しくない者にも、善良な者にも悪い者にも、清い者にも汚れた者にも、犠牲をささげる者にも、犠牲をささげない者にも、その臨むところは同様である。善良な人も、罪人も異なることはない。誓いをなす者も、誓いをなすことを恐れる者も、異なることはない。

【生きているものと死んだもの】

03 すべての人に同一に臨むのは、この世に行われるすべての事のうちの悪事である。また人の心は悪に満ち、その生きている間は、狂気がその心のうちにあり、その後は死者のもとに行く。

04 すべて生きた者に連なる者には、望みがある。生きた犬は、死んだ獅子に勝るからである。

05 生きている者は、死ぬべきことを知っている。しかし、死者は何事も知らない、また、もはや報いを受けることもない。その記憶に残る事がらさえも、ついに忘れられる。
06 その愛も、憎しみも、妬み(ねたみ)も、すでに消えうせて、彼らはもはやこの世に行われるすべての事に、永久に関わることがない。
07  あなたは行って、喜びをもってあなたのパンを食べ、
    愉快に酒を飲むがよい。
 神はすでに、あなたの行為を喜んで受けたからである。
08  あなたの衣を常に白くせよ。
    あなたの頭に油を絶やすな。
09: この世で神から賜わったあなたの空なる命の日の間、あなたはその愛する妻と共に楽しく暮すがよい。
 これはあなたが世にあってうける分、あなたがこの世で労する労苦によって得るものだからである。
10 すべてあなたの手のなしうる事は、力をつくしてなせ。あなたの行く黄泉(よみ)には、技(わざ)も、計略も、知識も、知恵もないのだから。

【この世のこともわからない】

11 私は、またこの世を見たが、必ずしも速い者が競走に勝つのではなく、強い者が戦いに勝つのでもない。
 また、賢い者がパンを得るのでもなく、聡き(さとき)者が富を得るのでもない。また知識ある者が恵みを得るのでもない。しかし時と災難はすべての人に臨む。

12 人は、その時を知らない。魚が災い(わざわい)の網にかかり、鳥がわなにかかるように、人間にも災いの時が突然臨む時に、それにかかるのである。
13 また、私はこの世にこのような知恵の例を見た。これは、私にとって大きな事である。
14 一つの小さい町があって、そこに住む人は少なかった。ある日、大王が攻めて来て、町を包囲した。そして、大陣地を築いた。
15 しかし、町に一人の貧しい知恵のある人がいて、その知恵をもって町を救った。ところがだれひとり、その貧しい人を記憶する者がなかった。
16 そこで、私は言う。
 「知恵は力にまさる。しかしかの貧しい人の知恵は軽んぜられ、その言葉は聞かれなかった。」

【知恵のある人(第十章04まで)】

17 静かに聞かれる知者の言葉は、愚かな者の中の司(つかさ)たる者の叫びに勝る。
18 知恵は戦いの武器に勝る。しかし、ひとりの罪人は多くの良き技(わざ)を滅ぼす。


第十章

01 死んだ蝿(はえ)は、香料を造る者の油を臭くし、少しの愚痴は知恵と誉よりも重い。
02  知者の心は、彼を右に向けさせ、
    愚者の心は、左に向けさせる。
03 愚者は道を行く時、思慮が足りない。自分の愚かなことをすべての人に告げる。
04 司(つかさ)があなたに向かって立腹しても、あなたの所を離れてはならない。落ち着きは、大いなる過失を避けるからである。

【不公平な世間と政治】

05 私はこの世に一つの悪のあるのを見た。それは司から出る過ちに似ている。
06 すなわち愚かなる者が高い地位に置かれ、富める者が卑しい所に座している。
07 私は、僕(しもべ)が馬に乗り、君たる者が奴隷のように徒歩であるくのを見た。

08  穴を掘る者は、みずからこれに陥り、
    石がきをこわす者は、へびにかまれる。
09  石を切り出す者は、それがために傷をうけ、
    木を割る者は、それがために危険にさらされる。

10 鉄が鈍くなったとき、人がその刃をみがかなければ、力を多くこれに用いなければならない。しかし、知恵は人を助けてなし遂げさせる。
11 へびがもし呪文をかけられる前に、かみつけば、へび使いには益がない。
12  知者の口の言葉は、恵みがある、
    しかし愚者の唇(くちびる)は、その身を滅ぼす。
13 愚者の口から出る言葉の初めは愚痴であり、その言葉の終りは悪い狂気である。
14 愚者は言葉を多くする、しかし人はだれも後に起ることを知らない。だれがその身の後に起る事を告げることができようか?
15  愚者の労苦は、その身を疲れさせる、
    彼は、町に入る(はいる)道をさえ知らない。

【賢くあって控え目に(第十一章06まで)】

16 あなたの王が子どもならば、その高官たちが朝から宴会を始める。そんな国は、災難だ。
17 あなたの王が貴族の出であって、その高官たちが酔うためでなく、力を得るために、適当な時にごちそうを食べる国、そんな国は幸せだ。
18  怠惰によって屋根は落ち、
    無精によって家は漏る。
19  食事は笑いのためになされ、
    酒は命を楽しませる。
    金銭はすべての事に応じる。
20  あなたは心のうちでも、王をのろってはならない。
    また寝室でも、富める者をのろってはならない。
    空の鳥はあなたの声を伝え、翼のあるものは事を告げるからである。


第十一章

01 あなたのパンを水の上に投げよ、多くの日の後、あなたはそれを得るからである。
02 あなたは一つの分を七つまた八つに分けよ、あなたは、どんな災が地に起るかを知らないからだ。
03 雲がもし雨で満ちるならば、地にそれを注ぐ。また、木がもし南か北に倒れるならば、その木は倒れた所に横たわる。
04  風を警戒する者は、種をまかない。
    雲を観測する者は、刈ることをしない。
05 あなたは、身ごもった女の胎の中で、どうして霊が骨にはいるかを知らない。そのようにあなたは、すべての事をなされる神の技(わざ)を知らない。
06  朝のうちに種をまけ。
    夕まで手を休めてはならない。
 なぜならば、実るのはこれであるか、あれであるか、あるいは二つともに良いのであるか、あなたは知らないからである。

【賢い生活方法】

07 光は快いものである。目に太陽を見るのは、楽しいことである。
08 人が多くの年、生きながらえ、そのすべてにおいて自分を楽しませても、暗い日の多くあるべきことを忘れてはならない。すべて、来たらんとする事は皆空である。
09  若い者よ、あなたの若い時に楽しめ。
    あなたの若い日にあなたの心を喜ばせよ。
    あなたの心の道に歩み、
    あなたの目の見るところに歩め。
 ただし、そのすべての事のために、神はあなたをさばかれることを知れ。
10  あなたの心から悩みを去り、
    あなたの身体(からだ)から痛みを除け。
 若い時と盛んな時は、ともに空だからである。


第十二章

【老いる前に】

01 あなたは若い間(あいだ)に、あなたの造り主を覚えよ。悪しき日がきたり、年が寄って、
 「私には、何の楽しみもない。」
と言うようにならない前に。
02 また日や光や、月や星の暗くならない前に、雨の後にまた雲が帰らないうちに、そのようにせよ。
03  その日になると、家を守る者は震え、
    力ある人はかがみ、
    臼挽き女は仕事を休み、
    窓からのぞく者の目はかすみ、
04  町の門は閉ざされる。
    その時に粉つき場の音は低くなり、
    人は鳥の声によって起きあがり、
    歌の娘たちは皆、低くされる。
05  彼らは、また高いものを恐れる。
    恐ろしいものが道にあり、
    あめんどうは花咲き、
    いなごは飽きるほど食べ、
    その欲望は衰える。
 人が永遠の家に行こうとするので、泣き女は歩きまわる。
06  その後、銀のひもは切れ、
    金の皿は砕け、
    水がめは泉のかたわらで破れ、
    滑車は井戸のかたわらで砕ける。
07 ちりは、もとのように土に帰り、霊はこれを授けた神に帰る。
08 伝道者は言う。
 「空の空、いっさいは空である。」

【伝道者のあとがき】

09 さらに伝道者は知恵があるゆえに、知識を民に教えた。彼はよく考え、尋ねきわめ、あまたの箴言をまとめた。
10 伝道者は麗しい言葉を得ようとつとめた。また彼は真実の言葉を正しく書きしるした。
11 知者の言葉は突き棒のようであり、またよく打った釘のようなものであって、ひとりの牧者から出た言葉が集められたものである。
12: わが子よ、これら以外の事にも心を用いよ。多くの書を作れば際限がない。多く学べばからだが疲れる。
13 事の帰する所は、すべて言われた。すなわち、神を恐れ、その命令を守れ。これはすべての人の本分である。
14 神はすべての技(わざ)、ならびにすべての隠れたことを善悪ともに裁く(さばく)からである。


Kuroda Kouta (2005.11.24/2011.12.30)