総トップページにジャンプ

  三十三観音の研究



はじめに
法華経による三十三観音
 鳩摩羅什の『法華経』該当部分原文
 三十三観音の意味
観音さまがおられる寺院など
西国三十三観世音
坂東三十三観世音
秩父三十四観世音
観音霊場(札所)におられる観音
三十三観音のイメージ(大恩寺)
 楊柳(ようりゅう)観音
 龍頭(りゅうず)観音
 持経(じきょう)観音
 円光観音
 遊戯(ゆげ)観音
 白衣(びゃくい)観音
 蓮臥(れんが)観音
 滝見観音
 施薬観音
 魚籃(ぎょらん)観音
 徳王観音
 水月観音
 一葉観音
 青頸(しょうきょう)観音
 威徳(いとく)観音
 延命観音
 衆宝(しゅうほう)観音
 岩戸(いわど)観音
 能静(のうじょう)観音
 阿耨(あのく)観音
 阿摩堤(あまだい)観音
 葉衣(ようえ)観音
 瑠璃観音
 多羅尊観音
 蛤蜊(こうり)観音
 六時観音
 普悲(ふひ)観音
 馬郎婦(ばろうふ)観音
 合掌観音
 一如(いちにょ)観音
 不二(ふに)観音
 持蓮(じれん)観音
 灑水(しゃすい)観音
三十三観音のイメージ(香林寺)


はじめに

 三十三観音について、自分なりに調べてみましょう。いちおう責任の所在を明確にするために、タイトルに研究などという言葉を使っていますが、厳密な学術的研究ではなく、いわゆる私的研究だと思ってください。
 ここで、三十三とう数字です。いちおう三十三柱の観音が言われていますが、その他の観音や三十三でない別な分類なども考えてみます。
 このページでは、観音経にある三十三身に三十三観音をすべて対応させることは、必ずしもしませんでした。なぜならば、『法華経』の作られたインドではなく、中国起源の観音もあるからです。例えば、魚籃観音のようにです。そのようなことを考えると、後から対応付けを考えたとしか思われないふしがあるのです。
  浪華土佐特曹紀秀信画図『増補諸宗 佛像図彙』東都書肆
の記述にも、はっきりと割り当てられている観音と、そうでないものがあります。


法華経による三十三観音

 鳩摩羅什の『法華経』該当部分原文

 これは、改めて全文を
  観音経・延命十句観音経
で、延命十句観音経とともに示しましょう。
 ここには、『法華経』の巻第八にある「観世音菩薩普門品第二十五)」より鳩摩羅什(くまらじゅう)の訳の該当箇所だけを掲げます。

(2506)
受持観世音菩薩名号。得如是。無量無辺。福徳之利無尽意菩薩。白仏言。世尊。観世音菩薩。云何遊此。娑婆世界。云何而為。衆生説法。方便之力。其事云何。仏告無尽意菩薩。善男子。若有国土衆生。応以仏身。得度者。観世音菩薩。即現仏身。而為説法。応以辟支仏身。得度者。即現辟支仏身。而為説法。応以声聞身。得度者。即現声聞身。而為説法。応以梵王身。得度者。即現梵王身。而為説法。

(2507)
応以帝釈身。得度者。即現帝釈身。而為説法。応以自在天身。得度者。即現自在天身。而為説法。応以大自在天身。得度者。即現大自在天身。而為説法。応以天大将軍身。得度者。即現天大将軍身。而為説法。応以毘沙門身。得度者。即現毘沙門身。而為説法。応以小王身。得度者。即現小王身。而為説法。応以長者身。得度者。即現長者身。而為説法。応以居士身。得度者。即現居士身。而為説法。応以宰官身。得度者。即現宰官身。而為説法。応以婆羅門身。得度者。即現婆羅門身。而為説法。応以比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷身。

(2508)
得度者。即現比丘。比丘尼。優婆塞。優婆夷身。而為説法。応以長者。居士。宰官。婆羅門婦女身。得度者。即現婦女身。而為説法。応以童男。童女身。得度者。即現童男。童女身。而為説法。応以天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩*羅伽。人非人等身。得度者。即皆現之。而為説法。応以執金剛神。得度者。即現執金剛神。而為説法。無尽意。是観世音菩薩。成就如是功徳。以種種形。遊諸国土。度脱衆生。是故汝等。応当一心。供養観世音菩薩。是観世音菩薩摩訶薩。於怖畏急難之中。能施無畏。是故此娑婆世界。

(2509)
皆号之為。施無畏者。無尽意菩薩。白仏言。世尊。我今当供養。観世音菩薩。即解頚。衆宝珠瓔珞。価直百千両金。而以与之。作是言。仁者。受此法施。珍宝瓔珞。時観世音菩薩。不肯受之。無尽意。復白観世音菩薩言。仁者愍我等故。受此瓔珞。尓時仏告。観世音菩薩。当愍此。無尽意菩薩。及四衆。天龍。夜叉。乾闥婆。阿修羅。迦楼羅。緊那羅。摩*羅伽。人非人等故。受是瓔珞。即時観世音菩薩。愍諸四衆。

(2510)
及於天。龍。人非人等。受其瓔珞。分作二分。一分奉釈迦牟尼仏。一分奉多宝仏塔。無尽意。観世音菩薩。有如是自在神力。遊於娑婆世界。


 三十三観音の意味

 『法華経』の巻第八にある「観世音菩薩普門品第二十五)」より該当箇所の意味を考えてみましょう。ふつう、三十三身は次のように考えられます。

 聖者の三身  仏・辟支仏・声聞
 天界の六種身  梵王・帝釈・自在天・大自在天・天大将軍・毘沙門
 人界の五種身  小王・長者・居士・宰官・婆羅門
 人界の四衆身  比丘・比丘尼・優婆塞・優婆夷
 人界の四種婦女身  長者婦女・居士婦女・宰官婦女・婆羅門婦女
 人界の二幼童身  童男身・童女身
 人非人の八部身  天・竜・夜叉・乾闥婆・阿修羅・迦楼羅・緊那羅・摩睺羅
 その他一身  執金剛

 なお、画像は
  浪華土佐特曹紀秀信画図『増補諸宗 佛像図彙』東都書肆
を使わせていただきました。

 次に一つ一つの「身」について、簡単な説明をいたしましょう。

(1) 仏
(2) 辟支仏
(3) 声聞
(4) 梵王
(5) 帝釈
(6) 自在天
(7) 大自在天
(8) 天大将軍
(9) 毘沙門
(10) 小王
(11) 長者
(12) 居士
(13) 宰官
(14) 婆羅門
(15) 比丘
(16) 比丘尼
(17) 優婆塞
(18) 優婆夷
(19) 長者婦女
(20) 居士婦女
(21) 宰官婦女
(22) 婆羅門婦女
(23) 童男身
(24) 童女身
(25) 天
(26) 竜
(27) 夜叉
(28) 乾闥婆
(29) 阿修羅
(30) 迦楼羅
(31) 緊那羅
(32) 摩睺羅
(33) 執金剛


観音さまがおられる寺院など

 最初は三十三という数字に因んで、三十三観世音ができたらしい。その後、あちこちに三十三観世音が現れたので、最初のグループを西国三十三観世音というようになった。東には、坂東三十三観世音があり、さらに秩父観世音などがある。


西国三十三観世音

第1番 那智山 青岸渡寺 那智山寺 如意輪観音 和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山8
第2番 紀三井山 金剛宝寺 護国院 十一面観音(紀三井寺観音) 和歌山県和歌山市紀三井寺1201
第3番 風猛山 粉河寺 千手観音 和歌山県紀の川市粉河2787
第4番 槇尾山 施福寺 槇尾寺 千手観音 天台宗 大阪府和泉市槇尾山町136
第5番 紫雲山 葛井寺 藤井寺 千手観音 大阪府藤井寺市藤井寺1-16-21
第6番 壺阪山 南法華寺 壺阪寺 千手観音 奈良県高市郡高取町壺阪3
第7番 東光山 龍蓋寺 岡寺 如意輪観音  奈良県高市郡明日香村岡806
番外 豊山 法起院 徳道上人廟 奈良県桜井市初瀬776
第8番 豊山 長谷寺 初瀬寺 十一面観音 奈良県桜井市初瀬731-1
第9番 興福寺(南円堂) 不空羂索観音 奈良県奈良市登大路町48
第10番 明星山 三室戸寺 御室戸寺 千手観音 京都府宇治市菟道滋賀谷21
第11番 深雪山 上醍醐寺(准胝堂) 准胝観音 京都府京都市伏見区醍醐醍醐山1
第12番 岩間山 正法寺 岩間寺 千手観音 滋賀県大津市石山内畑町82
第13番 石光山 石山寺 如意輪観音 滋賀県大津市石山寺1-1-1
第14番 長等山 園城寺観音堂 三井寺 如意輪観音 滋賀県大津市園城寺町246
番外 華頂山 元慶寺 京都府京都市山科区北花山河原町13
第15番 新那智山 観音寺 今熊野観音寺 十一面観音 京都府京都市東山区泉涌寺山内町32
第16番 音羽山 清水寺 千手観音 京都府京都市東山区清水1丁目294
第17番  補陀洛山 六波羅蜜寺 十一面観音 京都府京都市東山区五条大和大路上ル東入2丁目轆轤町81-1
第18番 紫雲山 頂法寺 六角堂 如意輪観音 京都府京都市中京区六角東洞院西入堂之前町248
第19番 霊麀山 行願寺 革堂 千手観音 京都府京都市中京区寺町通竹屋町上ル行願寺門前町17
第20番 西山 善峯寺 よしみねさん 千手観音 京都府京都市西京区大原野小塩町1372
第21番 菩提山 穴太寺 穴穂寺 菩提寺 聖観音 京都府亀岡市曽我部町穴太東ノ辻46
第22番 補陀洛山 總持寺 千手観音 大阪府茨木市総持寺1-6-1
第23番 応頂山 勝尾寺 弥勒寺 千手観音 毎月18日 高野山真言宗 大阪府箕面市粟生間谷2914-1
第24番 紫雲山 中山寺 中山観音 十一面観音 兵庫県宝塚市中山寺2-11-1
番外 東光山 花山院 菩提寺 尼寺のお寺 兵庫県三田市尼寺352
第25番 御嶽山 清水寺 播州清水寺 千手観音 兵庫県加東市平木1194
第26番 法華山 一乗寺 聖観音 兵庫県加西市坂本町821-17
第27番 書寫山 圓教寺(西の比叡山) 如意輪観音 兵庫県姫路市書写2968
第28番 成相山 成相寺 聖観音 京都府宮津市成相寺339
第29番 青葉山 松尾寺 馬頭観音 京都府舞鶴市松尾532
第30番 厳金山 宝厳寺 竹生島宝厳寺 千手観音 滋賀県長浜市早崎町1664-1
第31番 姨綺耶山 長命寺 千手観音・十一面観音・聖観音 滋賀県近江八幡市長命寺町157
第32番 繖山 観音正寺 仏法興隆寺 千手観音 滋賀県近江八幡市安土町石寺2
第33番 谷汲山 華厳寺 たにぐみさん 十一面観音 岐阜県揖斐郡揖斐川町谷汲徳積23


坂東三十三観世音

第1番 大蔵山 杉本寺 十一面観音(杉本観音)  神奈川県鎌倉市二階堂903
第2番 海雲山 岩殿寺 十一面観音(岩殿観音)  神奈川県逗子市久木5-7-11
第3番 祇園山 安養院 田代寺 千手観音(田代観音)  神奈川県鎌倉市大町3-1-22
第4番 海光山 長谷寺 十一面観音(長谷観音) 神奈川県鎌倉市長谷3-11-2
第5番 飯泉山 勝福寺 十一面観音(飯泉観音) 神奈川県小田原市飯泉1161
第6番 飯上山 長谷寺 十一面観音(飯山観音) 神奈川県厚木市飯山5605
第7番 金目山 光明寺 聖観音(金目観音) 神奈川県平塚市南金目896
第8番 妙法山 星谷寺 聖観音(星の谷観音) 神奈川県座間市入谷3-3583-1
第9番 都幾山 慈光寺 千手観音 埼玉県比企郡ときがわ町西平386
第10番 巌殿山 正法寺 千手観音(岩殿観音) 埼玉県東松山市岩殿1229
第11番 岩殿山 安楽寺 聖観音(吉見観音) 埼玉県比企郡吉見町御所374
第12番 華林山 慈恩寺 千手観音(慈恩寺観音) 埼玉県さいたま市岩槻区慈恩寺139
第13番 金龍山 浅草寺 聖観音(浅草観音) 東京都台東区浅草2-3-1
第14番 瑞応山 弘明寺 十一面観音 (弘明寺観音) 横浜市南区弘明寺町267
第15番 白岩山 長谷寺 十一面観音(白岩観音) 群馬県高崎市白岩町448
第16番 五徳山 水澤寺 千手観音(水澤観音) 群馬県渋川市伊香保町水沢214
第17番 出流山 満願寺 千手観音(出流観音) 栃木県栃木市出流町288
第18番 日光山 中禅寺 千手観音(立木観音) 栃木県日光市中善寺歌ヶ浜2578
第19番 天開山 大谷寺 千手観音(大谷観音) 栃木県宇都宮市大谷町1198
第20番 獨鈷山 西明寺 十一面観音(益子観音) 栃木県芳賀郡益子町大字益子4469
第21番 八溝山 日輪寺 十一面観音(八溝観音) 茨城県久慈郡大子町上野宮字真名板倉2134
第22番 妙福山 佐竹寺 十一面観音(北向観音) 茨城県常陸太田市天神林町2404
第23番 佐白山 観世音寺 千手観音(佐白観音) 茨城県笠間市笠間1056-1
第24番 雨引山 楽法寺 十一面観音(雨引観音) 茨城県桜川市本木1
第25番 筑波山 大御堂 千手観音 茨城県つくば市筑波748
第26番 南明山 清瀧寺 聖観音 茨城県土浦市大字小野1151
第27番 飯沼山 円福寺 十一面観音(飯沼観音) 千葉県銚子市馬場町293
第28番 滑河山 龍正院 十一面観音(滑河観音) 千葉県成田市滑川1196
第29番 海上山 千葉寺 十一面観音 千葉市中央区千葉寺町161
第30番 平野山 高蔵寺 聖観音(高倉観音) 千葉県木更津市矢那1245
第31番 大悲山 笠森寺 十一面観音(笠森観音) 千葉県長生郡長南町笠森302
第32番 音羽山 清水寺 千手観音(清水観音) 千葉県いすみ市岬町鴨根1270
第33番 補陀洛山 那古寺 千手観音(那古観音) 千葉県館山市那古1125


秩父三十四観世音



観音霊場(札所)におられる観音

 西国三十三観世音札所・坂東三十三観世音・秩父三十四観世音におられる百柱の観音は、次の七つの観音です。したがって、すべてを回っても三十三種類の観音にお目にかかれるわけではありません。

聖観世音菩薩(しょうかんぜおんぼさつ)
 もっともオーソドックスな観音。除災・滅罪のご利益がある。

千手観世音菩薩(せんじゅかんぜおんぼさつ)
 正しくは、「千手千眼観世音菩薩」という。破地獄・敬愛・滅罪。

十一面観世音菩薩(じゅういちめんかんぜおんぼさつ)
 すべての方向に顔を向けた十一の顔をもつ。除災除疫・聖天調和。
 頭の上にある十一面のうち前後左右の十面は、菩薩修行の階位を表し、最上部の一面は仏果を表わす。これは、衆生が十一の無明煩悩を絶って、仏果を開くという功徳を表わしている。

如意輪観世音菩薩(にょいりんかんぜおんぼさつ)
 如意は「如意宝珠」という珠、輪は「法輪」(仏教の教え)のこと。立て膝をしていることが多い。福徳・破宿曜障・敬愛。
 破宿曜障とは、「如意輪観音の輪(チャクラム)で障を砕き、如意宝珠(チンターマニ)で願いを実現していただくことです。宿曜(すくよう)とはインドの天文暦学で、星の運行と人の運命とを結びつけて、星と生まれた日によって一生の運命を占って、日々の吉凶を知る方法です。インドから中国、そして仏教に伴って日本に伝わり、平安中期から広く行われました。複数の人間が出会うと、「宿曜障」が人間に影響を及ぼすと言います。

馬頭観世音菩薩(ばとうかんぜおんぼさつ)
 怒った姿であるが、衆生の無知や苦悩を断じて、悪を消滅する。畜類救済・調伏・結界。

准胝観世音菩薩(じゅんていかんぜおんぼさつ)
 准胝とは清浄という意味で、心の清らかなこと。一面八臂と一面十八臂がある。子授け・安産・延命。
 なお、臂は「ひじ」のこと。

不空羂索観世音菩薩(ふくうけんさくかんぜおんぼさつ)
 羂索とは、鳥獣や魚を捕らえる網。すべての人をもらさず救うという。一面八臂と三面四臂がある。難事成就・人界守護・美容。


三十三観音のイメージ(大恩寺)

 ふつう、次の観音さまを三十三観音と言います。
 つまり、三十三という数字は、『法華経』の巻第八にある「観世音菩薩普門品第二十五)」によっている。その「観世音菩薩普門品第二十五)」を略して「観音経」という。なお巻第八には、他に「陀羅尼品第二十六」「妙荘厳王本事品第二十七」「普賢菩薩勧発品第二十八」が含まれている。

 「観音経」には、民衆の救済のために姿を変えて出現する三十三身が書かれている。したがって、それにちなんで三十三観音を考えたらしい。ここで、三十三という数はかなり「宗教的な数」であることは事実でしょう。
 ちなみに、古代インドの神話『リグ・ヴェーダ』に、「天界」「空界」「地界」に各十一神を置き、全体で三十三神としている。それが、仏教の教義に引き継がれて、須弥山に三十三天があり、そこに帝釈天を初めとして三十三神が住むと考えた。おそらく、三十三観音もそのような数観念の影響があるのに違いない。

 三十三観音を記述した最初の書物は、『仏教図彙』(天明三年(1783年)刊行)と言われる。浅間山が噴火をして、死者がいっぺんに数千人も出たときである。
 三十三観音には、「楊柳」「白衣」「青頸」「阿摩堤」「葉衣」「多羅」などのようにインドに起源を持つものと、その後「水月」「魚籃」「蛤蜊」「馬郎婦」などのように中国における観音信仰から生まれたものがある。

 ここで、このページの記述と図の説明に違いのあることに注意をしてください。また、文字の違いなどもあります。さらに、図には「○○身」とあるも、必ずしもそうでありません。むしろ、三十三の観音さまが、三十三通りに姿を変えて救ってくださると考えたほうがよいでしょう。そしてその中には、決まって○○身になる観音さまもおおられると思ってください。

 ここでは、その『仏教図彙』にある三十三のお姿と、その三十三観音についてイメージを助けるために、赤羽の「大恩寺」さんの素晴らしい石像を利用させていただきました。一度「大恩寺」さんに行って、実物をご覧になるとよいでしょう。JR赤羽駅西口からバスを利用して、「赤羽郷」(あかばねごう)で下車をすると、その交差点横です。(掲載ページは、三十三観音(大恩寺)
 ここにある「大恩寺」さんの観音像は、中国で五指に入る石仏師によって彫刻をされたもので、構図などは信頼できるものです。しかし、下記の説明文と異なっている箇所もあるので、いろいろな考え方のあることがわかります。

 以下に、各観音にまつわるエピソードなどをメモしておきましょう。
 なお、右下に「<l」となっている画像は、クリックをすると大きな別画面の像になります。


 楊柳(ようりゅう)観音

 右手に楊柳の枝を持っている。あるいは、楊柳の枝を水瓶に挿して傍らに置く。病苦から救ってくださる。「薬王観音」「薬王菩薩」とも呼ばれ、憤怒の形相であられることも多い。

  <l


 龍頭(りゅうず)観音

 天龍夜叉身を表わすことが多く、雲中の龍の背中に乗っておられる。鋭い眼光と静かな眼差し(まなざし)の像、そして口髭と顎鬚(あごひげ)のある像もある。

  <l


 持経(じきょう)観音

 ふつう声聞身を表し、岩上に座って、右手に経を持つ。仏の教えを聞いて修行をするものに対応する。

  <l


 円光観音

 岩上に座って、光の中で合掌をなさる。

  <l


 遊戯(ゆげ)観音

 「ゆうげ」「ゆうぎ」と読むこともある。雲上に左膝(ひだりひざ)を立てて座り、右手を雲に付けておられる。

  <l


 白衣(びゃくい)観音

 「びゃくえ」と読んだほうがいいかもしれない。阿弥陀如来の配偶者であり、観音の母でもあると考えられた。白い布をまとって柔和な姿で、息災、除病、安産、子育てなどを実現してくださる。観音の慈悲をもっともよく表しておられるのではないだろうか。

  <l


 蓮臥(れんが)観音

 ふつう子王身を表し、池中の蓮華に座って合掌なさっている。

  <l


 滝見観音

 断崖に座って、滝をご覧になっている。観音が眺めている滝の飛瀑が、煩悩の炎を消し去るのであろう。

  <l


 施薬観音

 水際の岩上に座って、右手を頬にあて、左手を膝に置いて蓮華を見ておられる。

  <l


 魚籃(ぎょらん)観音

 手に魚籃(魚篭)、つまり魚の入ったかごを持つ。あるいは、大きな魚に乗っておられる。除毒や魚供養の意味があるという。中国・唐代の説話(陝右(せんゆう)の人たち)にもとづいて考えられたようだ。

  <l


 徳王観音

 梵身王を表わすことが多い。岩上に座って、右手に葉緑の枝を持っておられる。すべての徳をそなえ持っている観音さま。

  <l


 水月観音

 ふつう辟支身を表し、水上の蓮華の上に立って月をご覧になっている。水面(みなも)に映(うつ)る月のように、観音の救いがすぐ近くにあるという。

  <l


 一葉観音

 宰官身を表すことが多く、水上の蓮華の上で、左膝を立てて座っておられる。
 一葉観音は、中国から帰朝するときに道元禅師の乗った舟を海上の嵐から救ったと伝えられている。永平寺の池に、そのイメージ像が浮かんでおられる。

  <l


 青頸(しょうきょう)観音

 青い頸(くび)と云う意味。ふつう仏身を表し、岩上に座って、右手を立てた膝上に置き、左手は岩に置かれている。シバ神が海の毒を飲んで、頸が青くなったというインド神話にもとづく。

  <l


 威徳(いとく)観音

 ふつう天大将軍を表し、右手に蓮華を持って岩上から水面をご覧になる。

  <l


 延命観音

 岩上に肘をついておられる。

  <l


 衆宝(しゅうほう)観音

 ふつう長者身を表し、右手を地につけて、左手は立てた膝上に置かれる。

  <l


 岩戸(いわど)観音

 「いわと」でもよいでしょう。毒蛇の住んでいる岩戸に座っておられる。

  <l


 能静(のうじょう)観音

 海辺の岩に座って、手を岩に当てておられる。

  <l


 阿耨(あのく)観音

 岩上に座って、滝をご覧になっている。

  <l


 阿摩堤(あまだい)観音

 白獅子に乗って、手に摩羯魚と吉祥果を持っておられる。サンスクリット語で「アベトゥリー」。すべての恐れを取り除くという意味。

  <l


 葉衣(ようえ)観音

 帝釈身を表し、勇敢なお姿で岩上に座っておられる。あらゆる悪魔を避けるといわれる。

  <l


 瑠璃観音

 自在天身を表し、瑠璃の香炉を持って、水上の蓮華に乗っておられる。

  <l


 多羅尊観音

 多羅は梵語ターラで眼の意味。雲の上に立っておられる。観音の眼から出る光明から生まれたという。

  <l


 蛤蜊(こうり)観音

 「はまぐりかんのん」ということも多い。ふつうは、蛤蜊(はまぐり)を前にして座っておられる。開かない蛤に香を焚いて祈ったら、それが観音になったという説話から考えられたようだ。

  <l


 六時観音

 六時は一日を意味して、居士身を表す。梵篋(ぼんきょう)つまり経典を持っておられる。

  <l


 普悲(ふひ)観音

 大自在天身を表し、両手を法衣で見えないように隠し、山上に立っておられる。あらゆるものを救うという大きな慈悲をあらわす。

  <l


 馬郎婦(ばろうふ)観音

 「めろうふ」と読むことが多い。とくに婦女身を表し、『法華経』と頭蓋骨を持っておられる。

  <l


 合掌観音

 婆羅門身を表し、合掌して蓮華の上に立っておられる。悟りの境地を象徴する。

  <l


 一如(いちにょ)観音

 雲に乗って、雷を征服される。

  <l


 不二(ふに)観音

 執金剛身を表し、水上の蓮華の上の立っておられる。

  <l


 持蓮(じれん)観音

 童男童女身を表し、蓮葉上に立って、蓮華の茎を持っておられる。

  <l


 灑水(しゃすい)観音

 右手に杖、左手に灑水器を持っておられる。

  <l


三十三観音のイメージ(香林寺)

 小田急線百合ヶ丘駅周辺の香林寺にも、三十三観音すべてがありました。
 詳細は、百合ヶ丘駅周辺でご覧ください。


   

Kuroda Kouta (2010.05.03/2014.03.30)