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花の句


秘書子


 昼顔の 鉄柵きつく 巻きにけり


 白百合や 闇夜の風を 簾(すだれ)ごし

   白百合や 闇夜の風を すだれ越し


 青嵐(あおあらし) 葉裏に白き 風の色

   青嵐 山木(やまぎ)かえれば 涛(なみ)のごと


 右に向き 左に向いてアマリリス

   背(そむ)き咲く 花の二つや アマリリス

   背き咲く 花の大輪(たいりん) アマリリス

   背合わせに 花の大輪 アマリリス


 気散(きさん)じに 夜風を窓に 百合の花

   気散じに 夜風を部屋に 百合の花

   白百合や 夜の窓辺に 香りたつ



 秘書子さんの句は、なかなか難しい内容なので、蛇足ながら以下にメモと解説を付けておきましょう。(Kuroda Kouta)
 なお、原文は縦書きでしたが横書きにさせていただき、上の句・中の句・下の句の間に一文字分の空白を付けて、読みやすくしました。
 また、(かっこ)の中にある振り仮名は、私が勝手に付けたもので、もしかしたら間違っているかもしれません。誤りを指摘されたら、その時点で修正いたしましょう。


 昼顔の 鉄柵きつく 巻きにけり

 力強い句です。新約聖書に、落ちた場所の異なる三つの種の話がありますが、条件さえよければ、植物の生命力はものすごいものですね。大賀ハスなども、数千年の生命力を持ち続けていました。
 昼顔ではなくて雑草ですが、コンクリートや石を打ち割って新芽が出てくるのをご覧になったことがあるでしょう。


 白百合や 闇夜の風を 簾(すだれ)ごし

   白百合や 闇夜の風を すだれ越し

 簾は、貴人が用いれば御簾(みす)になります。白居易そして清少納言の「香炉峰の雪」ではありませんが、ふつう外を見るときは持ち上げます。しかし、百合の香りが簾越しに匂ってくるというのでしょう。暗くても、よい香りが簾を通して吹き抜けてくるのです。


 青嵐(あおあらし) 葉裏に白き 風の色

   青嵐 山木(やまぎ)かえれば 涛(なみ)のごと

 「青嵐」(あおあらし)は、夏の季語で、初夏の青葉を揺すって吹き渡るやや強い風のことです。
 なお、「せいらん」と読んだときは、青々とした山の気。種田山頭火の句「分け入っても分け入っても青い山」などがそうでしょう。また、単に青葉のころに吹きわたる風のことも、「あおあらし」または「せいらん」と言います。
 ウラジロという多年草のシダもありますが、ここでは雑木かもしれません。風が、「どっどど どどうど どどうど どどう」と吹いて押し寄せる怒涛のように、青いくるみや、すっぱいかりんまでも吹きとばしてしまう光景を想像します。
 また、「山木かえれば」は、旧約聖書のコヘレットの書(伝道の書)第1章6にある「風は南に吹き、また転じて北に向かい、めぐりめぐって再びもとのところに帰る。」を思い出します。


 右に向き 左に向いてアマリリス

   背(そむ)き咲く 花の二つや アマリリス

   背き咲く 花の大輪(たいりん) アマリリス

   背合わせに 花の大輪 アマリリス

 アマリリスは、ちょっと不思議な花です。ヒガンバナ科の植物ですが、観賞用に交配をされて、花が何となく艶(あでや)やかです。ふつう、一輪の大きな花を付けますが、数輪に分かれることもあるようです。大きな花なので、互いに背きあっているようだと、秘書子さんは言っておられます。互いに窮屈なので、背合わせになるのでしょう。


 気散(きさん)じに 夜風を窓に 百合の花

   気散じに 夜風を部屋に 百合の花

   白百合や 夜の窓辺に 香りたつ


 「気散じ」(きさんじ)は、心の憂(う)さを紛(まぎ)らすことです。単に、「気ばらし」と言ってもよいでしょう。さらに、気苦労のないのほほんとした状態。つまり、「気楽」とか「のんき」のことです。

 それぞれに花美しく、異なりており。


Kuroda Kouta (2010.07.01/2010.07.09)